第4話 深和さん

 「どうして、私の苗字を......」

「麗ちゃんでしょう? 」

果たして、この女性と面識はあっただろうか。

必死に頭を回転させ、思い出す。

幼い頃、私がこの家に来ると、真っ先に出迎えてくれた人がいたような。

......もしかして。

「深和さん? 」

「そうよ、お久しぶり」

西原深和(にしはらみわ)さん。

私がここへ遊びに来ていた頃からメイド長だった。

しっかりした人だけれど、私は好きだった。

子供が好きなようで、以前は保育士をしていたらしい。

自分では甘やかしてしまうからダメだ、と言っていたが、怒る時もあった。

「懐かしいです」

「でも、どうしてメイドに? てっきり結婚するのかと思ったのに」

「え、えっと? 」

たまに深和さんは大きな爆弾を投下する。

それは以前と変わっていなかった。

”結婚”という言葉に戸惑いながらも、事の経緯を話した。

「あなたが良いなら構わないけど......丁度人手は足りないのよ」

「こんなにたくさんいらっしゃるのに、ですか? 」

この人数はそこそこ多い方だろう。

深和さんはため息を一つ吐いた後、口を開いた。

「千春様のお世話係が......ね」

つまり。

私がその担当になる、ということ。

少し複雑な気持ち。

だが、やるしかないだろう。

「お引き受けします」

「なら、さっそくなんだけど、着替えて千春様の部屋に行ってもらえる? 」

「はい」

千春くんの部屋を教えてもらい、ひとまず着替えることにした。

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