第15話 母性の屋根の下

その親子には、屋根が無かった。

ありていに言えば、野良猫だ。

いつの間にか居なくなってしまったが、一時期、同じところに居たので、おそらくそこが縄張りだったのだろう。


あまり歓迎できない事柄かもしれないが、私は好奇心から、猫に近づき、餌をあげてみた。

子猫が飛びついてきた。

親猫は距離をとりながら、こちらを凝視していた。


距離があったから、親猫にもと思って、餌を放り投げてみた。

子猫が走り寄り、それを食べた。

親猫はぴくりとも動かなかった。


猫でもちゃんとお母さんなのだなぁ。

そう思ったら、何だか泣けてきたのを覚えている。

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