第5話 愛人の子の屋根の下

彼女とその弟さんは、愛人の子だった。

認知はされていて、他に家庭を持っている男性をお父さんと呼んでいた。


彼女は家族が好きだった。

そして、男性が持つもう1つの家庭をも愛そうとしていた。

勿論、先方には煩わしいと思われていたようだが。


私には、考えられない思考だった。

1つ目の屋根の下さえ愛する努力を止めたのだから、自身の状況を知りつつも他人の家族さえ愛そうとする彼女が判らなかった。


「だってお父さんの家族だから。」


こともなげに言う彼女を、尊敬はできなかった。

真似したいとも思わなかった。

隔意を感じながら、でも、彼女の愛が純粋なもので出来ているのは判って、おそらく届かないであろう想いに、私は歯がゆさを感じた。

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