第2話 今の屋根の下
今の屋根の下は、居心地がいい。
私と夫、ペットのハムスターしか居ない3LDKは、2人と1匹暮しにはやや広すぎるが、来客が多いので狭いよりはいい。
1つ目の屋根の下の住人とは、距離を取っている。
男の母親とは月1くらいの交流があるが、男には2年前、女にはもっと前に1度会ったきりだ。
そして2年前に男にあったとき、絶縁を申し入れた。
男はしぶしぶ納得していた・・・ようだ。
なぜ渋るのか、今更意味が判らない。
当時、60を過ぎてなお相変わらずニートで、だがそれを頑なに認めない男を、哀れで滑稽だと思った。
それはなけなしの情けで、普段は無関心だ。
ニートであることを隠し続ける息子に、それでも期待して夢を抱いている1世紀前に生まれた母親に対しては、いい加減目を覚ましたほうが良いぞと思いながら、同時に残された時間はそれほど長くないのだから、夢を見ながら生きるのもまたアリなのかなと思った。
女に関しては・・・それなりに生きているのではないだろうか。
話がずれたが、今の屋根の下は安泰だ。
もう10年暮らしているが、私の夫は彼でなくては務まらない。
ここに、もし子供が居れば・・・と思い始めたのは、残念ながら最近で、今更手遅れ感がある。
私が大人になりきれずに結婚したせいで、夫と過ごす時間の中で、徐々に安心して成長をやり直していったから、いざ親になれるかもしれないと思った時には、お互い歳をとりすぎてしまった。
更に、とある病を抱えている私が今から人間を育てるには、別の勇気も必要で、正直そこまでの覚悟はない。
だから、たぶん、今の屋根の下は、いつまでも2人になるのだろう。
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