第34話 士郎の過去5

うたた寝


 安いアパートを借りた。既に就職している士郎(シロウ)の名義で、必要経費も全て士郎が払っている。

 鍵は合鍵にせず、士郎に持たせた。

 その家に二人で暮らすわけではない。必要な時に呼び出し、一夜の享楽にふける。

 同棲しないのも、鍵を士郎に渡したのも、防衛線だった。これは遊びだから。必ず終わりがくるから。抜け出せないほど、溺れないように。


 土曜日の夜、士郎を呼び出して俺は後からアパートに着いた。士郎は大抵俺より先にアパートに着いていて、テレビもラジオもない部屋で俺を待っていた。

 そんな士郎をわざと待たせていた節がある。士郎から呼び出しがかかる事が殆どない代わりに、呼び出した時には延々待たせて、焦らして、焦らして。

 カチャン、木製の扉は無用心に開く。壁も床も薄いが、他に住人は一部屋空いた隣の部屋にいるのみだった。ここに暮らしているわけでもないから、周りを気にせず嬌声を上げられた。士郎は声を出すと興奮をました。

 静かな六畳一間の部屋に入ると、士郎は机に突っ伏してうたた寝していた。土曜だが会社があったらしい。

 仕事で疲れているのだろうか、俺が家に入っても起きる様子はない。

 俺は静かに上着を脱ぎ、士郎の横に座る。まつげはそんなに長くないし、唇は薄く小さい。きっと会社でも学生時代と変わらず人付き合いが下手でやっているのだろう。

 普通のどこにでもいる、冴えないこの男から、快楽に震える顔と声は想像もつかない。俺だけが知っている秘密のようで、なんとなく嬉しくなった。


「んん……んふ……ん……」

 寝ている隙にさっくりと縄で縛った。いわゆる亀甲縛りというやつで、両手は背中に、股間を締め上げるよう縄が伝う。服の上からだが、士郎の全身を縄が締め付けた。

 目には目隠しを、口には猿轡を噛ませた。最後にヘッドホンを装着させ、「美しいクラシックベスト」の音楽を大きめの音量で流す。

 視覚・聴覚を奪い、喋ることも動くこともできない。

 芋虫みたいにモゾモゾ動く士郎を足で押して仰向けにさせる。足首は揃えて縛っており、自由の効く膝を割って、股間を踏みつける。

 縛っただけなのに既に熱を持ったそこは、足を振動させると硬さを増していった。

「んんんぅんぶううううっうううっ」

 足が疲れたら反対の足に変えて、休みなく股間を刺激する。左足だと上手くできず、玉を強く踏みつぶすと股間の部分が濡れて大きなシミを作った。

「ほんとだらしないちんこだな」

 士郎には聞こえていないのをわかっていながら言う。足を一旦外し、ズボンのチャックを降ろす。濡れて蒸れた下着の穴から勃起したそれが顔を出す。期待するようにヒクヒクと動くのを指で弾くと、士郎はピクンと跳ねた。

「俺じゃないとか考えないのかな。それとも、知らない奴に犯されると思っていつもより興奮してる?」

 しごいてやると甘い声を零した。俺はそんなはしたない士郎の性器を、根元とカリの下にそれぞれ紐で締め上げた。

 そしてそれをまた下着の中、ズボンの中に戻してやる。期待と不安で士郎が押し黙った。そんな様子に俺は興奮する。

「ぶっ飛んじゃってよ」

 再び足を乗せる。足の裏の熱がさっきよりも熱く、硬くなった。ほんと、変態。

「ふぐおおおおおっんんんんっおっっっ」

 足を小刻みに動かし、士郎の性器を踏みつける。すぐに士郎の身体がビクビク跳ねて、弛緩して、また硬直させる。

 やらしい士郎、可愛い士郎、快楽に従順な変態士郎。

「まだだ。まだだ、士郎」

 一回二回で終わらせるわけはない。だんだん雑になりながら、なおも踏みつける。

 最初は気持ちよさそうに声を上げていた士郎も、次第に腰を引こうともがいて、目隠しから滴り落ちるほど泣き始めていた。

 まだだよ士郎、まだだ。


「おあええっごほっぐっおおあっごおっごほっごほっ」

 執拗な責めに士郎が声を上げた。大きく噎せたのは、唾液が気管にでも入ったのだろう。ビクッビクッと身体が痙攣して、こひゅーこひゅーと言う呼吸音になる。

 ああ、これはやばいと、大して焦りもせずに士郎の猿轡を外してやった。

「ごほっごほっひゅー……ひゅー……ごほっ……あ……あ……」

 目隠しもついでに外してやると、士郎は眩しそうに目を瞬いた。涙で濡れた瞳がうるうると揺れて、俺を見つめた。

 随分と、可愛い表情をしたものだ。

「楽しかった?士郎」

 涙を舐めとると、士郎は大きく息を吐いて目を瞑った。疲れ果てたのだろう、士郎は眠ってしまった。

 俺も足が疲れて、その場に座り込む。

 汗と唾液と涙でくしゃくしゃの士郎は、それでもなんとなく心地好さそうに眠っていた。

 おやすみ、士郎。

 機嫌の良い俺は、士郎の瞼にキスを落とした。


終わり

 

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一夜限りの夢の話 @68_

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