第12話 兄弟×金魚
夏祭り
期待のまなざし
その夜はきらきらと、たくさんの灯りが世界を彩りました。赤い提灯がゆらゆらと揺れ、がやがやわいわいと人々が賑わっております。
今晩は夏祭りでした。長い長い準備をして、今日の日がやってきたのです。人の心を鷲掴みにしようと、で店は声を上げ通りすがる人を引きとめようと必死でした。
その中のひとつに、金魚屋がありました。赤いおべべの金魚たちは所狭しと動き回り、ひらひらと揺蕩う着物を見せつけました。
「お兄ちゃんどうだい、一匹二百円で買えるよ」
で店の店主が通りすがる男に声を掛けました。その声に大きな反応を示したのは、男が手を繋いでいた男の子でした。
男の子は灯りに照らされ、きらきらとした期待のまなざしで兄を見つめました。
「お兄ちゃん、金魚買うの?」
「うーん、でもむつかしそうだなあ」
兄が唸ると、店主は気前のいい顔で言いました。
「よし、じゃあ弟の分も含めて、二匹で二百円にしてやろう。それならどうだい」
「わあ、欲しいお兄ちゃん」
男の子があまりにもはしゃぐので、兄は仕方ないなあ、と小銭入れから百円玉を二枚ばかり、店主に手渡しました。
「さあさ、どれにするかね」
店主が言いました。兄はそうだなあ、と顎に手を当ててゆっくりと悩みます。
「ぼくはこれがいいよ」
男の子は、元気にはしゃぐ黒い着物の金魚を指さしました。
「おお、いいね。こいつはべっぴんさんだよ」
店主は素早く黒い金魚をすくうと、男の子に渡しました。
「じゃあ僕はこいつにしようかな」
兄が指差したのは、水槽の隅で弱りっている赤い着物の金魚でした。男の子も店主も訝しげな目をしました。
「こいつはすぐに死んでしまうよ」
店主が言うと、男の子は心配そうに兄を見上げました。
「ええ、こいつでいいのですよ」
兄は変える気がなさそうだったので、店主は仕方なく、弱っている赤い金魚を兄に渡しました。
「すぐ死んでも、変えはしないから」
「大丈夫ですよ」
兄と男の子は満足げな顔で家路につきました。赤い金魚はぐったりとしています。黒い金魚は元気に飛び跳ねるようでした。
「さあ、広いところに出してあげようね」
兄はそう言うと、弱っている赤い金魚を自分のベッドに寝かせました。赤い金魚は兄を見上げました。
「ああ、やはり、赤い着物の金魚は綺麗だね」
兄は金魚の頬を撫でました。目を伏せた赤い金魚は血の気が引いて、虫の息のような呼吸を辛うじてしています。
「すくってくれて、ありがとうございます」
赤い金魚はか細い声で言いました。そして続けました。
「けれども、私の命はそう長くはありません」
赤い金魚は悲しげにほろほろと泣き出しました。兄は赤い金魚の頬を指で拭い、そこに唇を寄せました。
「心配しなくても大丈夫だよ。ゆっくりと、君の身体を癒してあげるからね」
兄はそう言うと、赤い金魚の頬に、首に、鎖骨に口付けていきました。赤い金魚はあまりなにも感じないのか、無反応でした。
「喉が渇いているだろう。今、飲ませるから」
兄はそう言うと、ベッドサイドに置いてある水差しの水を口に含みました。そして赤い金魚に口付けました。
心なしか甘いその水を、赤い金魚はコクコクと飲み干します。赤い金魚は不思議なことに、それまで喉の渇きを忘れるほどに飢えていました。それが兄により与えられた水で、喉の渇きを強く感じました。
「もっと欲しいかい?」
兄が聞くと、赤い金魚はコクコクと頷きます。兄は優しく微笑むと、また一口、赤い金魚に飲ませてやりました。
そうして何度も、兄は赤い金魚に水を飲ませてやりました。
やがて赤い金魚は水差しの水を飲み干しました。赤い金魚はその着物に負けないくらい、艶やかに頬を赤に染めていました。
「少しは気分が良くなったかしら」
「あ……」
兄が赤い金魚の唇を指でなぞると、赤い金魚は小さく声をあげました。すっかり気分が良くなった赤い金魚は、兄に触れられるたびに嬉しそうな声をあげました。
兄は赤い金魚を座らせ、その後ろから優しく抱きました。兄の手が赤い金魚の着物の裾を割りました。そっと、ぽこんと膨れたお腹に触れました。
「あ、あ、触ったら、」
兄の手が赤い金魚の腹を撫でると、赤い金魚は切ない声を上げました。赤い金魚が立てた足の間に、兄は手を差し込みました。小さなその突起に触れると、赤い金魚はひあっ、と小さく声を上げました。
しょろしょろと勢い良く吹き出した水は、兄のベッドを濡らしました。
「いっぱい飲んだからね」
「ひあ、あ、」
赤い金魚の粗相が終わると、赤い金魚の腹はぺこんと凹みました。兄はそれを撫でながら、突起の先に指を這わせました。赤い金魚は身体をビクビクと跳ねさせながら、声を上げました。
「ああ、すっかり元気になったようだね」
赤い金魚の突起は固く尖り、先はぬるぬると汁を零しました。
「気持ちいいかい?」
「はあっ……あっ、んっ、」
兄が聞くと、赤い金魚は鼻にかかった声を零しました。兄の手に手を重ねて、もっと、とねだります。
「ああ、なんて美しい金魚だろう。あの店で一目見たときから、僕は君を欲しかったんだよ」
兄が囁くと、金魚は嬉しそうに微笑んで果てました。
その頃、男の子も黒い着物の金魚を自分のベッドに寝かせました。男の子のベッドは兄のものより少し小さく、また黒い金魚も身体が大きく育っていたので、手足がベッドから出てしまいました。
「元気な金魚さんだね」
男の子は黒い金魚の口を塞いでいたガムテープを剥がしました。黒い金魚だけは何故か、口をガムテープで塞がれ、腕は後手に帯で縛られていました。
「ああっんあっあっあっ、はあ、はあっ、はあっあっ」
男の子がガムテープを外すと、黒い金魚は声を上げました。パクパクと口をさせて、苦しそうでした。
「黒い金魚さん、苦しそうだね」
男の子は心配そうに黒い金魚の頬を撫でました。黒い金魚は目を細めて、どこか嬉しそうでした。
「どこか痛いのかな?」
男の子は黒い金魚の身体を撫でて確かめました。すると、着物で隠れて見えませんが、黒い金魚のお腹はぽっこりと膨れていました。
男の子が黒い金魚のお腹に触れると、黒い金魚は一際大きな声を上げました。
「お腹が苦しいのかな?」
「ふううう……んんんっあーー……」
黒い金魚はお腹を撫でられると、腰を振って悶えました。黒い金魚の着物がひらひらと揺れました。
「わからないよ、どこが痛いの?ぼくに見せて」
男の子が言うと、黒い金魚は着物がはだけるのも気にせず、大きく足を開きました。男の子はその足の間に入りました。
着物がはだけて、黒い金魚のお腹からお尻にかけてがよく見えました。黒い金魚は突起を固く尖らせ、その下の穴には蓋がしてありました。
男の子からは、棒が突き刺さっているように見えました。
「ああ、こんな棒が刺さっていたら、痛いよね」
男の子は黒い金魚の穴に突き刺さる棒を握りました。なんとか抜けないかとぐりぐりゆっくりと動かしましたが、黒い金魚が声を上げるばかりでなかなか抜けません。
「ううん、どうしよう」
男の子は首を傾げました。穴の縁は真っ赤に染まり、棒をきつく締め付けています。
「ちょっと痛いかもしれないけれど、我慢してね」
男の子は黒い金魚に突き刺さる棒をゆっくりと押し込みました。
「うっくおっひおっおっおっ」
黒い金魚は身体を仰け反らせ、ビチビチと身体を跳ねさせました。男の子は棒を奥まで押し込むと、ぐりぐりと回してみました。
「んああっんあっああああっ」
黒い金魚は泣いているような声を上げると、突起から真白の液体を噴き出させました。黒い着物に降りかかり、まるで雪が降ったようでした。
「あー……あー……」
黒い金魚は涙を滲ませながら、虚空を見つめて時々ビチビチと跳ねました。穴は弛緩して、今なら簡単に棒が引き抜けそうでした。
ずぬぬぬぬっ。
「ふがあああっっっ」
男の子が棒を躊躇なく引き抜くと、黒い金魚は奇妙な声を上げました。棒が引き抜かれると、追ってジェル状のピンクの液体が噴き出されました。黒い金魚は腰を突き上げ、それからベッドに沈んで、ビクンビクンと時折身体を跳ねさせます。
男の子は今しがた引き抜いた棒を眺めました。持ち手の棒から、黒い金魚に突き刺さっていた部分はまるでトウモロコシのように丸みを帯でぶつぶつと細かい突起がついていました。ピンクのジェルがぬらぬらと鈍く光っています。
「黒い金魚さん、もう痛くないね」
黒い金魚はよだれをたらして、気の抜けたような笑みを零しました。
それから兄と男の子は、赤と黒の金魚と、末長く幸せに暮らしました。
終わり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます