第14話 インターハイ決勝戦2
真琴は自分の胸をポンとたたいた。
(俊、私を見てて)
真琴はフィールドに入り、ボールを目で追う。自陣からセンターライン付近の真琴にパスがつながる。真琴はドリブルで運んでいく。
相手陣地のそばでMFにうまくパスを送る。MFはゴールそばのFW
相手チームにファールがあった。スティックが香奈の足にかかったのだった。ペナルティーコーナーが真琴たちに与えられた。
真琴たちのチームは守りを数人残して、ゴールサークルのそばに集まる。これで得点できなければ、試合には勝てないだろう。そんな判断が見える。
相手チームは攻撃陣もハーフラインまで戻っている。ペナルティコーナーが始まったらゴール前に戻る構えである。ここが正念場と相手チームも判断している。
ホイッスルとともにゴールポストから10m離れたところからパッサーがボールをストロークする。サークルの外でストッパーがボールを止めて、真琴がそれを受け取って、果敢にゴールへ向かう。
相手の守備陣2人が止めに来る間隙をついて素早いシュート。30cmほどに浮いたボールがゴールのネットを揺らした。
「ウオー!」
いち高の観客席から歓声が上がった。俊、保、サヤカもお互いを向き合って大喜び。
「真琴、ナイスシュート!」
香奈が真琴の肩をポンと叩く。
「うん、ありがとう」
真琴は自陣に小走りで戻る。
(まだ同点。逆転しなきゃ!)
試合が再開され、相手チームは予想通り、猛攻撃をかけてきた。ストライカーの雀宮を軸にゴールを狙う。市高はFWもMFも戻して防御に徹する。残り2分くらいだろうか、敵のシュートがゴールラインを割り、ようやく攻撃が休止した。今度は真琴たちの反撃だ。
キャプテンの摩耶がMFにうまくパスを送り、激しい走りで敵陣に戻る真琴を狙って、MFがボールをつなぐ。相手チームは真琴の走り追いつけない。真琴の普段からの走り込みがやはり力の差を生み出したのだろう。
真琴はドリブルで白い硬球を前進させる。DFを一人抜き、二人抜き、後はゴールキーパーとDF一人を残すのみ。そのDFが真琴に走り寄る。
真琴はそれさえ交わして低いシュートをゴールポストぎりぎりに打ち込んだ。キーパーは反応できない。
「やったー」
ネットが揺れて、大きな歓声。真琴のそばにチームメイトたちが駆け寄った。
そして、プレー再開の数秒後に主審の終了の笛。
「うわー!」
「やったぞー!」
先ほどの得点よりもさらに大きな歓声が野外の競技場に響き渡った。真琴たちは抱き合って喜びを分かち合った。
(うれしい!やったよ、俊、優勝したよ!)
真琴は歓喜に包まれていた。涙が溢れ出した。他の選手たちも泣いている。真琴たちはインターハイを制したのだ。努力がついに実ったのだ。流した汗が報われたのだ。
両チームの試合終了の挨拶が終わると真琴はベンチに戻ってきたが、真っ先に俊のいるそばにやってきたのだ。
「真琴、おめでとう!がんばったな!」
俊も涙を流していた。
「俊、ありがとう」
そういうと真琴はすぐにベンチに戻った。他の観客は真琴に言葉を言いそびれたが、二人のやり取りを見て、それでよいと納得しているかのようであった。
ちょうどその姿を男子ホッケー部のキャプテン大沢亮が見ていた。数時間後に男子の決勝戦が控えていたが、男子ホッケー部のメンバーたちと観戦していたのだった。
「俺じゃ役不足だべ。俊君、がんばれよ」
と大沢は独り言をつぶやき
「よし、俺らも女子に続いて優勝だ!」
と周りの部員に発破をかけて席を立った。
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