第3話 姫が詩う日

『ぽち』と呼ばれる様になってから15日目


どこまでも続く青空を、一筋の雲が流れていく。

姫が、それを眺めている。


「らーららー、ららら、らーらーらー、らー」


柔らかな風が、姫の髪を撫でる様に吹き抜ける。

その髪が、陽の光を反射させキラキラと輝いていた。


「らーらー、ららーらー、らー、らー」


すると、髪を搔き上げながらこちらを振り向き。


「ぽちって、詩うの下手なのね」


笑顔でそう言った。


「俺は、詩ったことなんかないからな」


俺は、少し不機嫌になる。


「ふふっ、じゃあ手本見せてあげる」


そう言って、姫は胸に手を当て詩い始めた。


「らーららららーらーらー、らららららーららー」


透きとおる声が辺りに響き渡る。

どこまでも、どこまでも、遥か遠くまで届く。

姫の声が紡ぎ出す優しい詩が、世界を満たす。


その日、少しだけ世界が笑った様な気がした。

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