第1話 姫がペットを拾った日

いつからだろう、自分を意識したのは。

いつからだろう、時間を意識したのは。


「きて。・・・お、きて。・・・起きて」


いつからだろう、俺を起こそうとする声が聞こえるのは。


「おはよう、やっと起きたのね」

「おはよう、君は誰だ?」

「私は姫、あなたは?」

「俺は、分からない」


目の前にいる少女は『姫』と名乗った。

俺は、自分の名前が分からない。


「そうなんだ、自分の名前が分からないのね。じゃあ、私が名前つけてあげる」


そう言って、姫と名乗った少女は、腕を組んで首を傾げながら、何度か唸った後、何か閃いたのか一拍して、こちらに振り向いて、可愛らしい笑顔で、こう言った。


「ぽち」


こうして、俺の名前は『ぽち』になった。

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