第4話 中学生編2~時間に救われることもある
今まで手先が不器用な話をしてきたので、この辺りで人間関係が不器用な話について書いてみよう。
中学生になって、仲の良い友人が2人できた。1人は背が高く切れ味鋭い論客のM、もう1人は小柄で愛嬌のあるR。
同じクラスで、同じ部活に入り、帰りも途中まで一緒だった。本当に仲が良かったと思う。
しかし、3人組というのは時にネックとなる。どう頑張っても2対1になる時が多々あるからだ。
私は1の方になることが多かった。少なくとも私はそう感じていた。MとRは前でおしゃべりしていて、それを後から聞く私ーー。
そんな時、他の人に目を向けて新しい友達を作り、みんなとバランス良く付き合う、ということができれば良かったのだが、そこは不器用だもの、そうはならなかった。
私がとった行動は、できるだけMのように振る舞う、ということだった。主にRに。
大人ぶって、できもしない突っ込み役を気取った。
今となれば、どう見えていたのか、考えるだに恐ろしい。きっとすごく痛い人だったんじゃないか。愚かなり。
狭い視野しか持てなかった自分が、愛想をつかされたのはいつだっだか。
それは突然起こった。
急に2人から無視された。
話しても返事をしてくれず、立ち去ってしまう。自分としては悪いことをしている自覚なんかないから、ただただ呆然とした。
そして、私は人が怖くなった。
MやRを見かけると逃げるクセがついた。そして、周りの他の人もなんとなく恐ろしくなった。いつみんな自分の前で突然豹変して、裏切るのだろうと。
部活も行かなくなり、暗い日々を過ごした。マンガやアニメが唯一の心の支えだった。その頃の学校内でのことは、脳内で消去したのだろう、あまり覚えていない。
他の友達や家族には打ち明けられなかった。恥ずかしくて惨めだったから。しかし、その一方で誰かに思いを訴えたかった私は、その頃読んでいたフリーペーパーに「友人に突然無視されて悩んでます」と投稿した。すると編集部の人が読んでくれたらしく、電話相談をすることになった。
色々語った末、最後に「友人ときちんと話をしたら」と至極まっとうなアドバイスをもらった。
弱い私はその言葉をありがたく受け止め、心の中にしまった。つまり、何もしなかった。情けないが、キャパオーバーだったのだ。
そのまま学年が変わり、運良く別の友達ができた。そして中学を卒業し、MとRのことをすっかり見なくなった。
社会人になりしばらくして、共通の友人の結婚式でRに会った。約10年ぶりの再会だった。
Rは結婚しており、子供もいた。雰囲気はさほど変わっていなかった。
もう逃げることはできなかった。とてもドキドキしてしょうがなかった。
隣を歩く。
何故か昔のような気まずさはなかった。
ぽつぽつとたわいない話をした。
あの時のことの真相を知りたかったが、言い出せなかった。この、今の大事な時間を壊したくなかったから。
Rが最後に言った、
「今日Sに会えて良かった」
私も「Rに会えて良かった」と返した。
中学時代、この間違いをしていなかったら、後になってもっとひどいことになったかもしれない。
まだまだ社交的な人間への道は遠いのだが、それでも目指してはいこうと思う。
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