第2話 小学生編2~コイルに泣いた日

 前回と同じく、小学4年生の頃。

 

 当時も今も変わらないが、私は恐ろしく理数系の科目が苦手である。そのため、文系か理系かで悩むことも全くなく、文系・オブ・ザ・文系、完全な文系として過ごしている。


 さて、苦手な理科の時間がやってきた。確か3時間目であったと記憶している。

 その日の授業は芯にエナメル線を巻いて電磁石を作ろう!というものだった。できた人から提出して、授業終了というやつだ。

 たった10センチくらいの芯に、ひたすら巻くだけでいいのさ、なあ、簡単だろ?


 そんな通販のナイスガイみたいな余裕は、当時の私にはこれっぽっちもなかった。

何せ、巻いた所が二重になっちゃいけないし、偏りがあってもだめというのだから。

不器用にとってはもはや拷問に近い。


 ちょっと巻いては絡まって、綺麗に均等にいかない。

さすがに今回は切れたりしなかったものの、焦りまくった。


はやくしなきゃ、きれいにしなきゃ。

はやくしなきゃ、ちゃんとしなきゃ。


そのプレッシャーは私を確実に追い詰めていく。


 器用な子はさっさと終わらせていた。だのに私は。

4時間目が過ぎ、給食の時間になった。まだ巻き終わらない。


 みんなごはんを食べている。食べ終わった。外に遊びに行こうとしている。

私はまだぐるぐるとエナメル線を巻いている。


トゥリャトゥリャトゥリャトゥリャトゥリャリャ。

いーとーまきまき、いーとーまきまき……

 哀しく童謡を思い出す。泣けてくる。

永遠のような時間が流れ、そして燃え尽きた。


 あの後、人生でコイルを再び手にしたことなんかない。

そんなものと関わらなくたって、生きていけるんだ――


 不器用で悩める若者に、そう伝えたい。

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