悪夢は続く

「…なんだろ…変な夢…」

 寝汗が酷い。頭も痛い。結構リアルな夢だった。

 何故か身体が震える。汗を掻いたからか?なら洗い流そう。

 私はシャワーを浴びる為にお風呂場に出向いた。

 コックを捻ると、温かいお湯が出てくる。

「っはぁ…」

 スッキリしない頭。お湯で洗い流したい気分だ。尤も、既にシャワーを浴びている最中なんだけど。

 あ、そう言えば、今日は千鶴子と舞とどこに行くか話するんだった。

 お金があまり無い上に、急遽決まった旅行なので、近場くらいしか行けないが、温泉がいいなぁ。桜も見たいかな。

 そんな事を考えていると、私の背後から何かをかじる音がした。


 カリカリカリカリ…カリカリカリカリ…


 ネズミ!?驚き直ぐ後ろを振り向く。

 何もいない。まだ頭がボーっとしているから幻聴でも聞えたのか?

 頭を軽く振りシャワーのコックを止める。

 お風呂場から出ようとしたその時…


 コン


 足の爪先に何かが振れた感触がした。

「?」

 足元を見る…白い…丸い物体…先から紐みたいな物が出ている。

 その反対側には…黒い…?

「ひ!?」

 そこで初めて理解した。

 爪先に当たった物が眼球だった事を。

「きゃあああ!!」

 滑ってお尻を打ってしまった。

「わぁっ!きゃあああ!きゃああああああ!!」

 座った形になりながら目を瞑って足をバタバタと蹴る。

「きゃああああああ!!あああ……あ、あれ?」

 うっすら目を開けた私の視線には、先程の眼球は無かった。

「え、え?あれ?」

 見たくも無かった筈だが、眼球を探した。

「無い……?」

 安堵した途端、打ったお尻が痛み出す。

「いてて…疲れているのかなぁ…やっぱり温泉にしよう」

 幻覚を見たばかりじゃなく、お尻まで打ったので、やはり温泉にしようと思い、千鶴子と舞をどうやって説得しようかと考えていた。

 

 着替えて喫茶店に出向く。

 この喫茶店は私のお気に入りで、千鶴子と舞との待ち合わせに良く使う場所だ。 今日も待ち合わせに使用している。

「少し早かったかな」

 時間までまだ30分以上ある。

 お気に入りのダージリンをオーダーし、雑誌を読みながら待つ事にした。

「あなた、死相が出ているわね」

 雑誌に没頭していた私に不意に話し掛けて来た女性…いや、女の子。

「は?いきなり何言うの?」

 見ず知らずの女の子に死相が出ていると言われていい気はしない。

 女の子を睨み付けるが、我関せずと言った体で、私の前の席に黙って座った。

「な、なんで相席?空席いっぱいあるでしょ?」

 女の子は何も語らず、セイロンをオーダーした。

 何なんだこの人?

 透き通るような白い肌…軽く赤みが差している頬…長い髪を両方に縛っている。ツインテールだ。黒いゴスロリみたいな服装。厚底のブーツを履いているから、背が高く見えるけど、150cmくらい?ちっちゃくて痩せている。なんと言うか、物凄い可愛い。

「ジロジロ観察される方は気分が良くないものですよ?」

 女の子は軽く微笑みながら、私に注意する。

「あ、アンタに言われる筋合いは無いわよ!!」

 少し大きな声で言った。紅茶を運んで来たウェイトレスさんがビクッとしてしまった。

「あ、ご、ごめんなさい」

 ウェイトレスさんに頭を下げる。

 ウェイトレスさんは軽く引きつりながら笑い、伝票をテーブルに置いた。

「私は宝条、宝条ほうじょう 可憐かれん。あなたの死相を断ち切る者…そして光を取り戻す者。それが私を逃がした家族の願い。そして家族を滅ぼす女…」

 いきなり訳の解らない自己紹介されても…

 困惑しかない。一体どう反応すればいのか?

「時田さん。残念だけど、お友達は来ないわ。私の責任です。本当にごめんなさい…」

 宝条と名乗った女の子は、いきなり謝る。大粒の涙をポタポタと流しながら。これもやはり困惑したが、それよりもだ。

「な、なんで私の名前を?なんで待ち合わせしてるのが解ったの?」

 意味不明な行動に困惑しながら、私は自分の情報を知っている彼女にかなり驚き、恐れすら感じた。

「な、何なアンタ!?正直言って気持ち悪いよ!!」

 席を立った。不気味なこの女との同席なんて、冗談じゃない。

 携帯に手を伸ばし、千鶴子に連絡を入れる。待ち合わせ場所を変えて貰う為だ。


 プルルルル…プルルルル…プルルルル…プルルルル…プルルルル…


 出ないな。寝ているのだろうか?

「だから、あなたのお友達は、もうこの世には居ないのよ。洞鳴の死者によって」

 洞鳴?洞鳴村の事?携帯から顔を逸らして女を見た。

 先程の涙の後が、まだ残っている。

「…座って…あなたには全て話したい…」

 何かの宗教の勧誘か。はたまた教材の販売か。頭ではそう思いながらも、私は再び席に着いた。

 洞鳴…この単語が、私の心臓の鼓動を早めていた。

 何かとんでもない事が起こっているような…

 身体が小刻みに震えているのが解った。

 席に着いた私を確認したように、宝条さんはゆっくりと口を開く。

「全ては11年前に始まった。いや、始まりはそれより遥か昔。だけど時田さんに関係があるのは11年前からの話…」

 女は、いや、宝条さんは目を瞑りながら、淡々と語り出す…


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「来た!!宝条の家に『目無し』が来たぞ!!」

 村人達は、宝条の家の玄関の扉を、恐れながらも遠巻きに見ていた。

 扉には無数の引っ掻き傷があった。

『目無し』は宝条家に『光』を要求したのだ。

 宝条の家主、宝条ほうじょう 清武きよたけは嘆きながらも覚悟を決めていた。

「『目無し』が家に来たようだ…『光』を差し出さなくてはならない…可憐はもう10歳だったな…せめて物心付く前なら良かったのに………」

 清武は深い溜め息をついた。諦めと悲しみと怒りが混じった溜息を。

 清武の連れ合い、清子きよこもまた、深い溜め息をつく。

「せめて『光』を献上するのが自由なら、私が行くのですが…」

 昔から『目無し』に献上する『光』は、その家の一番の幼子と決まっていた。

 宝条の家で一番若い可憐が『光』を献上する事になる。

 可憐は宝条家三男、清満きよみち朋子ともことの間に産まれた一番新しい孫だった。

 なかなか子供が出来なかった清満の待望の子供。宝条家は大いに祝福した。

 その可憐が……

 長男の清章きよあきが口を挟む。

「可憐の『目』を差し出すのを躊躇っているのか?」

「そんな…兄貴!!可憐に盲目になれと言うのか!?」

 清章に掴み掛かる清満。次男、清嗣きよつぐは項垂れていた顔を上げて清満を直視した。

「『目無し』の要求に応えなかった場合………どうなる?」

「そ、それは…」

 清満は想像しながらゾッとした。

 村中の人々の身体が引き千切られ、目玉を抜かれる様を想像して…

「『目無し』に素直に目玉を献上すれば、可憐は全盲になるだけで済む。命だけは助かるんだ」

 実際この村には、全盲の村人が多数いる。

 その全てが、『目無し』に『光』を献上したからだった。

 清章の嫁、郁子いくこの叔母も『目無し』に『光』を献上した。

 清嗣の嫁、珠子たまこの祖父もだ。

 盲目になっただけで、今でも普通に生活してはいる。

「私達はこの村に産まれ、育ったのだから、まだ解りますが…」

 郁子が不憫だと漏らす。相槌を打ったのは珠子だった。

「ですね…朋子さんは外部の女…先程から気が狂ったように泣き喚いていますよ…」

 村の外から嫁いできた朋子には全く理解しがたい事だろう。

 自分の愛娘が訳の解らぬ理由によって全盲となるのだから。

 清満を慕って、都会から嫁いで来た朋子だが、村中がこの結婚に反対した。

 村のしきたりが外部の人間に理解出来ないだろうとの意見で。

 そして嫁いできた朋子に村人は辛く当たった。この小さな集落で、言葉すら交わして居ない人間もいる。

 幸いに宝条家が温かく迎えてくれたので、朋子は孤独にはならなかったが、それでも最初は反対されたようだ。

 そして別室にて号泣する朋子。

 可憐は清章の息子、武則たけのりや清嗣の子供の剛志つよし千尋ちひろにあやされながらも時折聞こえくる母の嗚咽が気になって気になって仕方がなかった。

「なんでお母さんは泣いているの?」

 可憐は武則に訊ねた。

 武則はもう二十歳になるのだが、一番小さな可憐を実に良く可愛いがっていた。

 可憐も兄弟の中で一番懐いていた。

 その武則は黙って答えてくれなかった。武兄ぃなら絶対に答えてくれると信じていた可憐は裏切られた思いだっただろう。

「可憐、武兄は今疲れているんだよ。そんな顔はするな」

 剛志の言葉通り、答えてくれない武則に、可憐は半ベソをかいていた。

「そうだ!ゲームしよっか?可憐パズルゲーム好きでしょ?」

 千尋はテレビゲームを繋いだ。

 剛志も千尋も可憐と遊ぶ時はパズルゲームと決めている程、可憐はパズルゲームが大好きだった。

「…やらない」

 武則の膝に乗り、泣きたいのを我慢している可憐を見て、剛志と千尋は胸が苦しくなった。

「…なんでしきたりなんてあるんだろうな…」

 やるせない思いからつい呟いた博志。同じくやるせない思いで呟く千尋。

「…最後は確か10年前だったよね。私のお友達だった……」

「…今はそれを言うな」

 武則の押し殺した声に兄弟は全員俯き、黙った。

「…痛い」

 暫く黙ったままの兄弟達が、一斉に顔を上げた。

「可憐?どうした?」

 心配そうに顔を覗き込む武則。可憐は顔を歪めて辛そうな表情だった。

「お腹が痛いのか?」

 剛志の指摘通り、可憐はお腹を押さえている。

「大変!!」

 千尋は大人達を呼びに行く。

「痛い…痛いよ!痛い!!」

 油汗を流し苦しむ可憐。

「可憐!!」

 先程まで泣いていた母の朋子が血相を変えてやって来た。

「盲腸か?村には病院なんかない!!」

 清満は可憐を抱いて車に乗り込んだ。

「街に降りる!!後で電話する!!」

 清満は朋子と共に、可憐を街の病院に連れて行った。


 やがて車が視界からいなくなると、清武が気の毒そうに呟いた。

「……あの子も可哀想な…にえに選ばれた矢先に病院に運ばれるとは…」

 その呟きに光明が見えた。

 小さな村には、誰かが病院に行く事は、直ぐに広まる。

 清子は何か考え込んでいた。

「どうした?お袋?」

「命に関わる病気じゃないから、心配いらないさ」

 命に関わるとの言葉に清子の頭に一つの閃きが出た。

「可憐は死んだ事にすれば?病院に運んだけど間に合わなかったと!!」

『目無し』に『光』を奪われず、かつ、村人も納得する結果になるのでは?

「し、しかしそれでは災いが…」

 当然ながら躊躇する清武。村人が身体を引き千切られ、死ぬ様は伝承で確認している。

『光』を与えないと、『目無し』は自分で『光』を捜し、彷徨うのだ。

「そ、それに『目無し』は増えるじゃないか?」

 清章の言葉に否定の首を振る清子。

「伝承はあくまで伝承。不安なら、犬や猫の『光』をくれてやればいい。それに、『呪い』は『目無し』に依頼するもの。誰かが依頼しないと『目無し』は増えない」

「な、成程…犬や猫の光を代用にする訳か…」

 清嗣は目から鱗の思いだったが、郁子は不安気に訊ねる。

「義母様、果たして上手くいくのですか?」

 珠子も青い顔色に変わる。

「そ、そうですよ。村人に知れたら私達の命も…」

 しかし清子は凛と座り、家族を見据えた。

「可愛い家族の『光』と!怯え、怖れる村人と!どちらが大事か!!」

 清子の迫力に、家族はただ黙ったままだった。

 静寂が支配する部屋だが、武則が立ち上がった事でそれが崩れた

「武則?どこへ行く?」

「可憐を預かってくれる所を探すんだよ。早い方がいい」

 武則の行動に家族全員が頷いた。覚悟が決まったのだ。

「お前等は、全く誰が長か解らんな…武則、預け先はワシに任せぇ。知人に頼んでみる。清章、清嗣。可憐の葬儀の準備だ。清子、清満と朋子さんに連絡せぇ。可憐は死んだ事にするとなぁ…」

 清武の指示で慌ただしくなる宝条家。

「じっちゃん、村人を葬儀に呼ばなくていいのか?」

 小さな村なので、葬儀は村人が参列するのが習わしだった。遺体が無いのは無理がある。だから剛志の懸念は理解できた。

「遺骨なら先祖の墓から出してくる。既に火葬はした事にすりゃええ」

 多少強引だが、やるしかなかった。

 家族みんなが可憐を守りたかった。家族みんなが可憐を愛していたからだ。

 だから敢えて誰も口を開かなかった。

 宝条家の人間は、いずれ皆村人に殺されるだろうと言う事を…


 清武は夜遅くなのにも関わらず、どこかに電話をした。

 いや、夜遅いなどは関係無い。宝条家は可憐を助けるべく、病院に運ばれた矢先から慌ただしく動いていたのだから。

 病院に連絡した清子は、朋子に一連の流れを説明した。朋子は電話の向こうで泣き伏せたらしい。

 自分の娘の『光』の為に、小さな集落とは言え、村中の人間を騙す、までは良しとしても、自分達の命すら危うくなる可能性があるのだから。


「あ、夜分遅くに申し訳無い。宝条です」

 清武の相談相手にどうやら電話が繋がったようだ。

『宝条…?洞鳴村の宝条さんかな?』

 電話の向こうの声の主は半分眠っているような声で応答した。

「ご無沙汰です。以前のお話の続きをさせて貰う為にお電話した次第です」

 電話の向こうが明らかに緊張したような雰囲気となった。

『…呪いを解くのは、私では力不足とお断りした筈ですが』

 どうやら以前に清武は『目無し』の呪いを解く為に動いたようだ。

「ええ。しかし先生は仰った。私より霊力が高い人間ならばあるいは、と」

『ほう?そんな人間が見付かったのですか?』

 電話の向こうから、安堵したような気配を感じた清武は直ぐに訂正をした。

「いえ、実は『目無し』が私の孫に向いて来てしまって…あの娘をどうしても助けたい…先生、孫を先生にお預け致したいと思いまして…」

 いきなり何の面識もない娘を預かれと言われた電話の向こうの声の主は、流石に断ろうかと思った。

 だが、洞鳴村の目無しの存在は、やはり捨て置けない。

『…少し霊視させて戴く。その娘の生年月日と名前を…』

 清武はそれに従った。

 可憐に霊力があるかなど清武には知るよしも無い。

 しかし自分が、いや、宝条家全員が『目無し』の手足になる可能性があるならばその時は可憐に葬って欲しい。

 ただそれだけの願いの為に。

 少しの沈黙の後電話の向こうの声の主が多少興奮気味で清武に話かけて来た。

『宝条さん!あなたの孫はとんでもない霊力の持ち主です!彼女ならば『目無し』の呪いを断ち切れるやもしれません!!』

 清武は心から安堵した。可憐が霊力の持ち主…しかも因果を断ち切れるやもしれない程の力を持っている事実に。そうと解ったら、やはりお願いするしか無い。

「先生、孫を、可憐をお願い出来ますか?」

『無論です!私が責任を持って立派に育てましょう!』

 まるで宝物を貰ったような気分だったようだ。だが、次の清武の願いで、『目無し』と言う現実に戻される事になった。

「もう一つ、宝条はいずれ村人に殺される事になるでしょう。『目無し』の手足になるやもしれません。ただ殺されるだけかもしれませんが。もし、宝条が『目無し』の手足になった場合…可憐に宝条を滅ぼさせて下さい…」

 宝条が手足となって他人の身体を毟り取り、殺し目を奪う。清武はこれを絶対に良しとはしなかったのだ。

『そ、それはまだ決まった訳では…』

 戸惑いながらも可能性は充分考えられた。

 人を殺す行為は普通考えられないだろうが、洞鳴村の『目無し』に縛られている村人には、その行為は人殺しではない。あくまでも村を救う手段なのだ。

「一応は『目無し』の機嫌は損なわないよう、考えはあります。が、上手く行ったとしても、いつまで騙せるか…宝条が罪を犯したならば、宝条が責任を取りたい。お願い致します…」

 清武は声こそ上げていなかったが泣いていた。

 最愛の孫に一族抹消の命を依頼したようなものだ。心が痛くない訳が無かった。

『…解りました…私はこれより宝条家を常に霊視し、観察致します。万が一、宝条が手足となった場合…可憐にあなた達を葬りに行かせます』

 霊視による監視も引き受けた電話の向こうの声の主。

 長い、長い戦いになるだろう事をこの時に初めて覚悟した。


 可憐の腹痛の原因は、盲腸だった。

 運ばれた晩に手術し、今は眠っている。

「もう朝か」

「そうですね」

 清満も朋子も、瞼が腫れ上がっている。

 昨晩清子から入った電話の内容、可憐を死んだ事にする旨。宝条家一丸となり、可憐の『光』を守る事にしたのを聞いて、涙を流さない訳にはいかなかったからだ。

「今日、兄貴達が村中に通達するらしいな」

「お兄様達や御義母様…御義父様には感謝の言葉もごさいません…」

 朋子はスヤスヤと眠る可憐の頭を撫でながら目頭を押さえた。


 カラカラカラ


 誰かが病室に入って来た。

 看護士?それとも…清満と朋子は一瞬身構える。もし村人ならばと緊張が走った。

「宝条可憐さんの病室で間違い無いですね?」

 入室してきたのは看護士では無かった。かと言って村人でも無かった。病室に入室してきたのは、初老の紳士。コートを羽織って、杖を突いている。

「あの、どちら様でしょうか?」

 清満は緊張で汗を掻きながらも、訊ねる。

「これは名乗り遅れました。私は霊能者の石橋いしばし 早雲そううんと申す者。今日から可憐さんをお預かりする者です」

 石橋 早雲…以前に清武が村に招いた霊能者だ。清満もその顔に覚えがあった。

「石橋さん…お久しぶりですが…」

 可憐を預かる話は聞いていなかった清満は、やはり多少警戒はする。

「清武さんから依頼されたのですよ。死んだ事になれば、宝条家や奥様の実家には住めなくなりますからね」

「そ、そう言えば、御義母様がそんな事を仰っていました」

 石橋は清武の依頼を清満や朋子に伝えた。死んだ事にする為に預かる事を。『目無し』を滅ぼす為に修行させる事を。

 そして宝条家が手足となった場合に可憐に宝条家を滅ぼさせる事を。

 薄々感づいていた清満は、やはりか、と言う感じで項垂れる。

 朋子も今は可憐の光が優先とし、渋々ながら同意した。

 だが、石橋から、清満と朋子に、ある条件を提示されてから、顔色が悪くなった。

「私が預かる事になったら可憐さんには二度と会えなくなります。それでも構いませんか?」

 清満と朋子は絶句する。愛する娘に二度と会えないと言われたのなら当然だろう。

「な、なぜそうなる?」

「そ、そうですよ!訳が解りません!」

 石橋は答えを予測していたのか、直ぐに対応する。

「可憐さんは死んだのです。こちらもそのつもりで対処します。『光』を守る為にあなた達が選んだ答です。私はこれより洞鳴村を監視します。自分の娘が死んだのに、悲しまない家族はおかしいと気が付く村人が出てくるでしょう。そのリスクを軽減する為、そして、長い間村人を欺いている隙に可憐さんを『目無し』に対抗出来る霊能者に育て上げる。それが嫌ならば、私は依頼を断ります」

 石橋は覚悟を見せろと言っているのだ。

 娘を本当に守りたいのか、覚悟が欲しい。石橋は、ここは譲る気は無かった。

 そして、清満も朋子も、石橋の覚悟をひしひしと感じた。

「石橋さん、あなたの覚悟は何と無く解りました…が、可憐を預かる…それに『目無し』との対峙…依頼されただけじゃ無いでしょう?」

 清満は石橋の覚悟の中に、何か自身の好機があったと読んだ。

 でなければ、洞鳴村の監視など、膨大な時間が必要な事をわざわざ受けるだろうか?

 無論、可憐の養育費は宝条が出費するとは言え、それだけでは経費が足りないのでは無いか?

 石橋はあっさり頷く。

「『目無し』とは今回で3度目でしてね。可憐さんがあなた達の大切な娘なのと同時に、私の希望でもある。これが引き受けた理由です」

 これ以上は語らぬと言う雰囲気を出して、牽制しているようにも取れる石橋だが、本気で可憐を守ろう、鍛えようと言う覚悟も感じる。

 清満はその場で辞儀をした。

「可憐をよろしくお願いします」

 朋子は何とか思い直して欲しいと思い、清満に寄り添ったが、やはり最後は朋子も共に辞儀をする。

 清満の目から大粒の涙がポタポタと落ちているのを確認したからだ。

「可憐をどうか…どうかお願いします…」

 朋子も同じく、大粒の涙を零しながら…


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「…そして私は家族と離れて修行に明け暮れた。師は言った。『目無し』を滅ぼして家族と再び一緒に暮らしなさい、と…」

 宝条さんはそこまで話した後、肩を落とした。

 私も聞いていて、切なくなった。

 家族を守る為に家族から離した。家族を守る為に自分達は命を落とす覚悟をした。そして家族と再び暮らす為、孤独に耐え修行した。

 宝条さんも、宝条さんの家族も、みんな覚悟があった。じゃぁ、私はどうすれば…

「宝条さん、なんて言っていいか解らないけど…とにかく私の命も危ないって事ですよね?その…洞鳴村にいるお化けのせいで」

 まだ全部を信じる事は出来ないけど、宝条さんの涙は信じようと思う。

 今も嗚咽混じりの声を上げて泣いているのだから。

 私は宝条さんに、ハンカチをそっと差し出した。

 洞鳴村の悪夢は千鶴子や舞で終わりじゃない。まだ続いているのだ…

 私は宝条さんをアパートに呼んだ。

 宝条さん曰わく、家族は今日にでも現れるとの事。

 千鶴子や舞は、やはり身体中引き千切られ、目をくり抜かれて死んでいたそうだ。警察から連絡があったので間違い無い。

 不思議と恐怖が無かったのは、やはり宝条さんの存在が大きかった。

「で、でも、なんで私達が殺されなきゃならないんですか?」

 そこの事情はさっぱり解らない。

 私達はアルバイトで洞鳴村へと行った。特におかしな事は感じなかったのだが…

「あなたのお友達が見たようね」

 見た?何を?

「切り刻んだ死体よ」

 切り刻んだ死体!?そんな物……!!

「田んぼに入れていた麻袋?」

 千鶴子と舞がやっていた仕事だ。

 じゃあ、どっちか、両方が、あの麻袋の中身を見た?

「も、もしかして、その死体って…」

 悪い思いが頭をよぎる。

 宝条さんの表情が険しくなっていた。

「私の家族よ」

 やっぱりそうなんだ……

 宝条さんになんて声を掛けていいか解らなくなり、俯く。

「気にする事は無いわ。私はその為に来たのだから」

 宝条さんは、私の寝室やリビング、お風呂場、部屋と言う部屋に御札を貼っていく。

「これで、あなたの匂いは解らなくなった。後はあなたが声さえ出さなければ、私の家族はあなたには近寄る事は無い」

 どうやら御札は私の匂いを察知されない為の護符らしい。

 宝条さんの話だと、目が無い彼等は香りや音で、対象者を捜すらしい。

 対象者の身体を毟り取るのは、目が無いから適当に触った箇所を強引に持っていく為だ。

 しかし私には近寄る事は無い。

 つまり、共にこのアパートで家族を待つ宝条さんは…?

「家族は私に向かって来る。そこを叩く」

 やはり宝条さんは囮になるつもり…?

「き、危険過ぎるんじゃないですか?」

 宝条さんの命を心配したのは勿論だが、失敗した場合、宝条さんの遺体が私のアパートにある事になる方が恐ろしかった。

「大丈夫よ。『手足』はそれ程強くは無いから。あなたの心配が現実になる事は無いわ」

 顔を伏せた。自分の心を見透かされたような気がしたからだ。


 深夜2時。

 睡魔の限界を感じ、ベッドに横になったまま眠りについたようだ。

 何故2時に目が覚めたのか。バン!バン!と何かを叩く音が聞こえたからだ。

「起きたの?寝ていて貰っていた方が良かったんだけど…」

 宝条さんを捜すように寝室の扉に目をやった。

「……!!」

 息を飲んだ。

 扉には磨り硝子がはめられているのだが、その磨り硝子に、無数の人影が居たのを確認したのだ。

「声を出しちゃダメよ…」

 私は両手の手のひらで、口を押さえながら何度も頷いた。

「まぁ、私の声が出ているから、家族はここに人間が居る事は知っているだろうけど、ね」

 そう言って、宝条さんは寝室の扉を開ける

「~~~~~~~!!!」

 口を押さえていなかったら間違いなく声が出ていただろう。

 11人の目玉をくり抜かれたような人間が、ゆっくりと、ゆっくりと無気力に寝室に入って来たのだから…

 その11人全てが目玉があったであろう場所から血を滴り落としている。


 ウワアアアアアアアア…


 ウワアアアアアアアア…


 あの洞窟で聞いた『鳴き声』を発しながら、寝室に入って来た。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「お母さん、お父さん、お兄ぃ、お姉ぇ、おじさん、おばさん、おじいちゃん、おばあちゃん……」

 私の家族。大好きだった家族…

 姿は変わっても覚えているよ?

 目頭が熱くなる。しかしふけっている暇はない。お兄ぃの腕が、私に伸びて来たから。

 私をいつも抱き締めてくれたお兄ぃの手…今は私の身体を引き千切ろうとしているんだよね。

 お姉ぇの手も伸びて来る。

 私は家族の愛によって『光』を失わずに済みました。

 私の代わりに『光』を失い理性も失った可哀想な私の大事な家族…

 私は今こそあなた達の愛に報います……

 私は腰に差している刀を抜く。

 刃は無い。人を斬るのが目的ではないからだ。

 これで斬るのは人に非ざる者。

 私の一振りで武兄ぃの腕が斬れ、床にボタリと落ちる。武兄ぃはそれでも私に向かって残った左手を伸ばして来た。

 私は左手をも叩き斬った。


 ボタッ


 左手が落ちる。同時に、武兄ぃから鳴き声が出る。


 ウワアアアアアア………


 両手を失った武兄ぃ。私に向かって噛み付いて来ようとした。

「武兄ぃ…そんなになってまで私の目が欲しいんだ…」

 私は武兄ぃの脳天から刀を振り下ろした。

 武兄ぃの身体が真っ二つになる。


 ウワアアアアアア…

 ウワアアアアアア…


 武兄ぃは失った目玉から血…いや、涙を流していた…

 武兄ぃの顔が微笑んでいる…

 私をあやしてくれた優しい微笑みを向けて、武兄ぃは霧が晴れるように消えて行く…

 武兄ぃ…全員天国に送ってあげるから…ちょっと…ちょっとだけ待ってて?

 私は刀を千尋姉ぇに向ける。

 千尋姉ぇは、武兄ぃが消えた事など気付きもせず、私に両手を伸ばして向かって来た。

 千尋姉ぇの隣の剛志兄ぃも、私に襲い掛かって来る。

「みんな…みんな私が背負って生きて行きます」

 刀を千尋姉ぇに突き刺すと同時に、真横に薙ぎながら剛志兄ぃの喉元に突き入れる。


 ウワアアアアアア…

 ウワアアアアアア…


 千尋姉ぇと剛志兄ぃは、やはり霧散する瞬間、私をあの懐かしい優しい目で私を見ていた…

「…っはぁ…」

 懐かしい優しい目…

 私はつい涙を流してしまった。

 視界がぼやける。泣くのは終わってからと袖で涙を拭う。

「はっ!?」

 その一瞬の隙をついて珠子おばさんが私の刀を握った。

「く!!」

 咄嗟に刀を引くと珠子おばさんの指が飛んだ。その反対の手で構わず私に腕を伸ばして来る。

 私は刀の柄で珠子おばさんの腕を払った。

 体勢が崩れた珠子おばさんに刀を突き刺す。

 清嗣おじさんが私のすぐ斜め前まで来ている。


 ウワアアアアアア…


 清嗣おじさんの腕が私の肩に触れた。

「く!!」

 蹴りを放ち、清嗣おじさんをふっ飛ばすと、ビリリと肩の衣服が引き千切られた。

 珠子おばさんは私の脚に抱き付いてくる。

「浅かった!?」

 突き刺した刀を深く再び突き入れる。同時に霧散する珠子おばさん。

 やはり優しい目を私に向けて消えた。

 倒れていた清嗣おじさんは立ち上がった。

「おばさんを滅ぼして…ごめんなさい…」

 清嗣おじさんに詰め寄り一気に斬り下ろす。清嗣おじさんも霧と化した。

 残る家族は6人…

 私が家族を在るべき所へ還す。今はそれに集中しよう。

 懐かしい…優しい目を…今は忘れよう…

 清嗣おじさんに引き千切られた肩の衣服を一瞥し、私は再び刀を向けた。

 目玉を失った家族が霧となる刹那、私に見せる優しい目…

 私の脳が作り出した幻覚か?それとも呪縛から解き放たれたら戻るのか?

 それを今は考えないようにしよう…再び集中力を呼び戻す。

 清章おじさんと郁子おばさんが私の左に接近してきた。

 真正面にはお祖父さん。右にはお祖母さん。囲まれる寸前だ。

 私は懐から札を出し、清章おじさんに向かって札を投げる。


 ドン!!


 札が爆発し、清章おじさんのお腹には穴が開き、郁子おばさんの右肩半分が吹っ飛んだ。

 致命的にはならないが、足止めくらいにはなる。

 刀を真正面のお祖父さんに振り下ろし、札を右のお祖母さんに投げる。


 ドン!!


 お祖母さんの腰から下が、やはり吹っ飛ぶ。

 お祖父さんは霧と化したが、清章おじさんと郁子おばさん…それにお祖母さんは、動かない身体で床に這いつくばりながらも私の身体に接近してくる。


 ウワアアアアアア…


 ウワアアアアアア…


 ウワアアアアアア…


 あの村の洞穴で聞こえる鳴き声を発しながら私の目を求めて…

 三人が私に接近し、重なる刹那、刀を真横に薙ぎる。

 手応えはあった。三人は霧となる。やはり優しい目で私を見ている。

 その瞬間やはり心が痛くなり、目頭が熱くなるのだ。

 霧となり消えるおじさん、おばさん達を眺めていると、霧の中から手が伸びて来た。

 後ろに退く。しかし胸元の衣服を掴まれる。

 破られた服。露わになる胸。

「お母さん」

 私の服を掴んだのは一番優しかった母…

 霧が晴れるとお母さんが私にジリジリと近付いて来るのがハッキリと解る。

「今助けてあげるから…」

 刀を構える私の耳に悲鳴が聞こえた。

 部屋の隅を見る。

「お父さん…」

 お父さんが時田さんに気が付き時田さんに接近している。

「時田さん!」

 札をお父さんに投げる。お父さんは爆発音と共に崩れ落ちた。

 だが、それはただ爆風で身体が押されただけだった。

 一瞬止まった程度だが、時田さんに駆け寄るには充分な時間が稼げた。

筈だった。

 私のスカートがお母さんに捕まれていて動けなかった。

「うわあああああああ!!」

 渾身の力でお母さんに蹴りを放つ。

 お母さんは後ろに仰け反ったが、私のスカートは離さなかった。

 私は下着姿になっていた。しかし、そんな事に構っている暇は無い。

 時田さんからお父さんを引き離さなければ…

「!!」

 振り向いた私の視線のすぐ先に、お父さんが手を伸ばして私に詰め寄っていた。

「はああ!!」

 刀を振り回すにしても間合いが近過ぎる。

 お父さんの身体には確かに刀が触れたのだが、掠った程度だった。そして札はもう無い。

 お父さんの手が私に接近する。下がろうにも、お母さんが後ろから手を伸ばして来る。

 不完全ながらも、半歩以下だが下がり、同時にお母さんの脳天に刀を突き刺した。

「あああああ!!」

 私はそのまま下段からお父さんの身体に斬り付けた。

 お母さんは脳天から顔を斬り裂かれ、霧となって行く。お父さんは脇腹から肩にかけて斬り付けた傷口から霧となって行った。


 ウワアアアアアア…


 ウワアアアアアア…


 真正面にあるお父さんの顔が一瞬歪んだ。

 だが直ぐに和らいだ表情となった。

 立派になったなぁ…

 そう聞こえた。

「お父さん…ゴメン…」

 咄嗟に出た言葉…謝罪の言葉…

 嫌な役目をさせてゴメンね…

 背後から聞こえた声はお母さんだ。

 私は振り向く。

「お母さん…ううん…私こそゴメン…」

 やはり出て来る言葉は謝罪の言葉…

 二人はお祖父さん達がそうだったように、失った筈の優しい目を私に向け…霧となり…消えた…

 二人の失った筈の目には…流れる筈が無い涙が見えた…

 それが最後に見た二人の姿だった…


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 消え…た?

 あんなに沢山いた化け物が宝条さんの刀に斬られて全て消えた。

 固くなった身体から緊張が解ける。

「ふぅぅぅああ…」

 何とも言えない声を出した。

 安堵と共に、自分の周りを気にする余裕が出てくる。

 頬が熱くなった。

 私の股が湿って…いや、汚れているのに気が付いたのだ。

 私はあの時、私に化け物が近付いて来た時、失禁してしまったのだ。

 慌ててタオルを探す。


 …宝条さん!!

 そうだ!宝条さんにバレてないかしら!?

 ハッとして、宝条さんを見る。

 宝条さんは服を破られ、下着はパンツだけとなりながら、ただ泣いていた。

 あの化け物は宝条さんの家族だった。忘れていた…下着を気にして宝条さんを慮っていなかったのが恥ずかしい。

「ほうじ…」

 声をかけようとしたが、やめた。

 宝条さんは身体中擦り傷だらけとなりながら、ただ泣いていた。

 声を押し殺して泣いていた…


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 いっぱい泣いた。


 声は出さなかったが、いっぱい、いっぱい…

 家族と離れてから涙は封印した。

 今日、家族と離れた時を埋めるよう、いっぱい、いっぱい、いっぱい泣いた…

 修行が苦しくて、泣きたくなってもガマンした。

 寂しくて家に帰りたくても、帰れない時もガマンした。

 もうガマンしなくていいんだ…

 お母さん、お父さん、お祖父さん、お祖母さん、おじさん、おばさん、武兄ぃ、剛兄ぃ、千尋姉ぇ…

 いっぱいいっぱいゴメン…そして、いっぱいいっぱい有難う…

 悲しみと懐かしさと嬉しさが入り混じった涙…


 沢山泣いた後、時田さんにお別れの挨拶をする。

「時田さん、もう目無しの手足は来ない。私の役目は終わった。じゃあ元気で…色々迷惑かけたわね」

 帰ろうとした私を時田さんが引き止める。

「宝条さん!?そ、そのまま帰るつもり!?」

 一瞬考えたが我に返る。

「…すごく申し訳無いんだけど…服…貸して貰えますか?」

 私は下着一枚しか身に付けていなかった事をすっかり忘れていた…


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 私は服を宝条さんに渡した。ついでに私も着替えた。下着が尿で汚れてしまったからだ。

「ありがとう」

 擦り傷だらけの華奢な身体に私の貸したワンピースを纏う。

 私のワンピースがゆったり見える。私には結構キツキツだったよーな…

 軽い屈辱感を覚える私だが、そこはまぁ、置いといて貰いたい。

「あの、宝条さん…」

 何か言いたいが、言葉が出て来ない。

 宝条さんは首を傾げ、私を見る。

「…何?」

 少し疲労感を見せる笑顔。

「お、お腹空きません?」


 私は激しく後悔した。

 なんでこんな事を言ってしまったんだろうか…先程まで化け物、しかも身内と戦っていた人に…

「そうね。ファミレスでも行きましょうか?」

 恥ずかしくなって顔を伏せていると少し微笑んで応えてくれた。

 私は思わず頷いた。

 こんな凄い人も、やはりお腹は減るんだと変な関心をしながら頷いた。

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