裏切りもの!

第22話

 今日のわたしは気分がいい。

 来週は人生初のパーティだし、毎日おいしい紅茶は飲めるし、「便利屋」にいれば本は読み放題……とはいえ勉強はするけど。

 学生の本分を全うしていることだけは誇れる。


 放課後いつも通り校門まで行くと、いつも通り女子が遠巻きに見ている。

「確かに、何も知らなかったらただの不審車だよ。」

 と、気づいた。

 むしろなんで気づかなかったのか。

 車が2台あることに。1台は真っ赤でかっこいい……。

 わたしそんなに誘拐犯藤堂さんが嫌いか。

 しかもその誘拐犯、今まで見てるだけだった女子高生と楽しそうにお喋りしてやがる。

 そのうち犯罪者になるんじゃなかろうか。

 まあこっちは無視でいい。

 楽しい時間をわざわざ邪魔する気は一切ない。

「あ、今日はクゼさんなんです「おいこら、俺を無視するな。」

 向こうから絡んできたぁ……。

 クゼさん助けてぇ。

「ほら、やっぱ言ったじゃねぇか。お前んとこには行かねぇってよ。」

 この2人わたしで賭けでもしてたのかっ。

「とはいえ、あいつに頼まれてるからな。こいつを来週の日曜日までに仕上げてくれってな。」

 あいつ?しあげる?

 この人が言うと大体のことは怪しく聞こえる。

「ふーん……。じゃ、しょーがないか。」

 へ?え、うそ––。

 クゼさんは、沙希ちゃんじゃあなー。と行ってしまった。

 こ、紅茶が……。

「安心しろ。俺様が全てプロデュースしてやろう。」

 ふふん。って威張んな!

 返せ!わたしの午後のティータイム!!

「沙希ちゃんの知り合いだったんだ!すっごいカッコイイじゃん!」

 あぅ。わたしのこと知ってる子がいるのか。

 うん。たまに送り迎えしてもらってるの。とニコニコしながら車に乗る。

 車が走り出してから、藤堂さんに詰め寄る。

「わたし何にも聞いてないんですけど、どういうことですか?」

「クルスから電話があったぞ。コンゴウグループのパーティに出るんだろ?俺も出席するからな、手伝ってやろう。」

 なんで?事務所で準備するって……。

「あいつに一杯食わせたんだろ。いやに楽しそうに電話してきたからな。」

 こ、これはクルスさんなりの嫌がらせと。

 でもきっちりわたしの希望は叶っているところがらしい。

「でもなんで藤堂さんも出席するんですか?というかお仕事って何してるんですか。」

 コンサルティングとかやってそう。色々お洒落だし。

「信用会社とか調査会社とかだな。」

 そんな疑問符がさらに増えるような答え方しないでください。

「情報屋みたいなもんだ。」

 情報屋……。だから怪しいのかな?

 良い人はイイ人、なんだけど。

「よし、これから丸1週間使ってお前を磨き上げるぞ。」

 ん?なんか聞いたことのあるぞこのセリフ。

「この間は体験コースだけだったからな。今回は全身をみっちりできるぞ。あれから肌の手入れも普通にしかしてないだろ。」

「い、いやだぁー!」

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