第19話
足首を持ったはいいけど、なんかやりづらい……。
膝の上にのせてじっと見ていくことにした。
「……クゼさん。なんでこんな砂がいっぱい?」
細かい砂が固まっていて、渡された道具を使わなくてもポロポロとこぼれてくる。
「山を走り回ったから?」
それいつの話ですか?本当ですか?
……たぶん本当だよね。
「これ、こんな砂詰まってて動きづらいとかないんですか––「何してんの……?」
扉の方を見るとクルスさんが固まっていた。
ふむ。
わたしの膝の上に、皮を剥いだ機械とチューブの足––。
もしかしなくても見られたくないものだった……?
クルスさんの表情がだんだん、怒りの色に変わってきた。
目がつり上がってきて眉間に皺ができていく。
わたしは明らかに、踏み込んではいけないところまで踏み込んでしまっていた。
「立って。」
震えそうになる足を押さえながら静かに立つ。
「もう遅いし、送るよ。」
ゾッとするほど、その顔は冷たかった。
結局あの後、車の中でも
朝行けばよかったのかもしれないけど、最近髪は自分でセットできるようになったし、なりよりまだ行きづらかった。
あんな事務所だし、偽名使う人もいると思うけどなぁ……。
それよりも、わたしの依頼の方がやばいかもしれない。
もしかしたらもう二度と、あの「便利屋」の事務所に行けなくなるのだから。
「……。」
まぁ、もう決めてるんだけどね。
改めて決心したところで、授業終了のチャイムがなった。
さて、校門まで来たはいいが、止まっている車が問題だ。
どこかで見た赤い、かっこいい車である。
しかもその車に寄りかかるように立っているスーツ姿の男……。
そう、
素通りするわけにもいかない。何より周りからの視線が凄い。
写メ撮ってるやつもいるし。
「……お久しぶりです。どういったご用件でしょうか?」
「おう、久しぶりだな。今日は俺が出迎えだぞ。喜べ。」
むりです。
相変わらず人の話聞かないし。
「今日は歩いて行きます。クゼさんもクルスさんもいないってことは、来るなってことなんでしょ?」
だから、わたしは「便利屋」に行って、居座ってやる。
ずっとは無理だけど。
「お前結構強情だな。昨日あいつの足、見たんだろ。」
普通じゃあない。
小さく聴こえた声に、ギリッと歯を噛む。
「普通じゃないかどうかはあなたが決めることじゃありません。……送ってください。そのために来てくださったんでしょう。執事さん––」
「じい、で構いません。」
「じゃあ『じいや』って呼びます。じいやが淹れてくれた紅茶もおいしかったわぁ……。」
車の中で思い出してしまった。
毎日「便利屋」で美味しい紅茶飲んでるからかな。
「勿体無いお言葉です。わたくしめはどちらかというとコーヒーを淹れる方が得意でございまして。」
むすっとした藤堂さんを横目に見ながら、さてどうやってクルスさんに逆鱗に触れずあの事務所で紅茶を飲めるのか考えていた。
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