第14話

「そんな感じで、何回かそういうところを見かけるようになりまして。みんな知らんぷりだし……どうしたもんかな、と思ってたんです。」

 まぁ、とどのつまり。わたしは気分が悪い。

 "いじめられてるのはお前のせいだ"と言われて非常に気分が悪い。

「話はわかった。」

 こんな身勝手じゃ依頼は受けてくれないでしょ。お金ないし。

「依頼は受ける。」

 え。

 受けるの?まじで??

「ただ……問題がある。」

 うん。まぁそうだよね。

 結局のところ、この問題に戻ってくる。


『どうやっていじめをやめさせようか?』


 たぶん、今やめてもターゲットが次に移るだけ。今ここでやめさせるのが一番なのだが……やはり難しいらしい。

 学校という空間は、思った以上に排他的である。

 クルスさんが悩んでいると、誘拐犯が気障ったらしく指を鳴らして

「じい。連絡してくれ。」

 と言った。執事さん「じい」って呼ばれてるんだ……。

「おい、これは僕たちが受けた依頼だぞ。」

「じゃあ問題ないだろ?"俺達"が受けた依頼なんだからさ。それにこれは俺の得意分野だ。お前達と違ってな。」

 さて、とこちらを向く誘拐犯

 ……やっぱなんか苦手。

「雨乃木と言ったな!今からお前を丸裸にしてやろう。」

 丸裸!?

「趣味嗜好成績運動能力……いや、まずはやはり見た目だ。じい!」

「準備できております。」

 執事さんがきれいにお辞儀をする。

「いくぞ。」

 どこに?



 誘拐された車の中で、わたしは窓から暮れかけた空を見ていた。

 お腹すいてきたかも……。

「生徒手帳を見せろ。」

 ちゃんと返してくれるよね?

 前の助手席にいる誘拐犯に鞄からシワシワになった生徒手帳を渡す。

「……なんだこれは。ドブにでも落としたのか?」

 そういえばなんでだっけ?

 記憶を探って、鞄ごと無くなった時のことを思い出した。

「あ、思い出しました。鞄をプールに投げ込まれたことがあったんです。その時に濡れたんですね。」

「きみって結構……。」

 何を言いたかったのかわからないけど隣に座ったクルスさんが呆れていた。

 藤堂だけだと何をするかわからない!

 そう言って付いてきてくれたのは、ちょっと嬉しかった。

 二人っきり(執事さんがいるけど)はやっぱりやだし。

「それで、どこに行くんだ?」

「決まっているだろう。」

 決まっているのか。行き先も聞いていないのに。

「まずは見た目からだ、エステにいく。」

 はい?

 クルスさんもわたしと同じ顔をしている。

「そのあとメシにいこう。好き嫌いはあるか?」

「ないです。あえていうなら魚が好きです。」

 ふふん。と誘拐犯が笑った。

「へえ、そうか。俺のお勧めのお店に連れてってやろう。––さぁ着いたぞ。存分に磨かれてこい。」



 磨かれた……のか正直わからない。

 ただいつもより肌がもちもちツヤツヤで無駄毛が一本残らずなくなった。

 ついでに眉も整えてもらったり、肌の手入れの仕方を教えてもらったから、ルンルン気分だったり。

 化粧水とか乳液なんて初めて使ったわ。

「よしよし。さっきとは別人だな!」

 見えついたお世辞なのは隣にいるクルスさんが首を傾げているからわかりきってますよ。

「まあまあ!詳しいことは寿司でも食いながら話そうじゃないか!」

 そうか、そこでいじめをやめさせる方法を話すんだな。と1人納得していた。

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