第三章 茅原桐菜
第61話 それはやめて!
ただ一人、
「千隼、あれから全然ログインして来ないわね」
何故か知らないが俺の部屋で俺のベッドに寝転がって漫画を読んでいる
「私もあれから千隼さんを一度も見ていません」
これまた何故か知らないが、俺の部屋で俺のPCで動画を見ていた
「いやお前ら、なんで俺の部屋で
「何よ、あんた千隼の事心配じゃないの?」
「そうです。先輩はちょっと冷たいです」
「そうじゃねーよ!」
とはいえ、千隼さんが一度も顔を見せないのは俺も気になっている。用事以外でこんなにログインしないのは始めてじゃないか?何度かメッセージを送ってみたんだが、
「私、電話してみたんだけどね」
「え?そうなの?」
「うん。でも千隼、全く電話に出ないのよ」
まじか~。姉貴と二人きりでもダメなのか・・・。
「私も電話に出てくれませんでした」
「むう」
千隼さんお気に入りの燈色の電話にも出ないって、余程だぞ。
「て言うかさ・・・」
「何よ?」
「そもそも千隼さんは、なんで急にログアウトして、その後も俺達を避けてるんだろう?もしかして職場でトラブってるとか?」
「それはないわ。前言った先輩、A先輩ね。あの人に話聞いたけど、ヒカリは千隼を怒らせちゃったってすっごい落ち込んでるらしいから。まあ、自業自得だけど」
あ、そっか。こいつの先輩があの二人と同じ職場だって話だったな。けど、ヒカリさんからの妨害とか嫌がらせというわけでは無いのか・・・。
「まあ、色々あったし千隼もちょっとゲームから離れたいんでしょ。一時期のあんたみたいに」
「うぐっ」
それを言われると弱いぜ・・・。まあ、時間が解決してくれることもあるかもな。俺はそう思って、この件に関してはあまり深く考えないようにした。
とある日のゲーム内某倉庫にて、
「やあダーク君、久しぶりだな」
「黒乃さんこんにちはー」
黒乃さんは要塞戦ギルドの中でもトップギルドの一つである「ブラックアウト」のエースプレイヤーで、サーバー内でも3人しかいないというLV100プレイヤーの一人でもある。
しばらく倉庫近くで世間話をしていた俺達だったが、突然黒乃さんが俺にしか見えないチャットに切り替えてきた。
「ダーク君、最近その、千隼さんはゲームやってるのかな?あまり見かけないような気がするんだが・・・」
さすが黒乃さん。千隼さん・・・要はシャイニングマスターのファンだっただけはあり、いつも彼女の事を気にかけているんだろうな。
「いや、最近はちょっと諸事情によりログイン減っている感じですね」
「む、そうなのか」
「はい」
いくら黒乃さんとは言え、他人のプライバシーに関わるような事をペラペラ話すわけにもいかず、俺は曖昧な返事をしておくことにした。まさかリアルとゲーム内でトラブって、音信不通ですとか言えるわけがねえ。
いやちょっと待て。
黒乃さんは「千隼さんをゲームであまり見かけない」と言っていたが、そもそも黒乃さんと千隼さんに連絡取りあうような接点は無かったはず・・・。なんで黒乃さんは千隼さんがゲームにINしていない事を知っていたんだろう?
「ん?どうかしたかダーク君?」
俺が急に黙ってしまったからか、不思議に思った黒乃さんが声をかけてきた。なので俺は思い切って聞いてしまう事に。
「あの黒乃さん、黒乃さんは千隼さんを見かけないと言っていましたが、最近ログインしていない事がわかるほどに仲良くなっていたなんて、俺、知りませんでした」
俺がそう言うと、黒乃さんはしばらく沈黙した後俺にこう言ってきた。
「違うのよ?別に友達登録して、千隼さんがINしているかどうか確認してたわけじゃないんだからね?」
マジかこの人?そんなことまでしてたんか・・・。
友達登録ってのは、登録すると「友達リスト」に名前が載り、オフラインの場合灰色で、オンラインの場合白く表示されるんだ。それで、オンラインの友達を狩りに誘ったりするためのツールになっていたりする。
実はこの友達登録、裏の使い方がある。それは、要塞戦等のライバルギルドのメンバーを登録しておいて、要塞戦の当日INしてるかどうかをみるという物だ。実はリストには所属ギルドも表示されていて、要塞戦の為に毎回別ギルドにヘルプに入るような人をチェックして、今日要塞に攻めがあるかなどの判断材料にしたりするんだ。
しかし当然千隼さんはブラックアウトのライバルギルドには加入していない。正直自由同盟はブラックアウトの足元にも及ばない。じゃあなんで黒乃さんが千隼さんを登録していたか・・・。
「黒乃さん、もしかしてシャイニングマスターも登録してますか?」
「うっ」
まじかこの人!千隼さんの事好き過ぎだろ!
「あの、ほどほどにしないと「ストーカー」って呼びますから」
「それはやめて!」
めちゃくちゃ早い返事が返ってきたわ・・・。しかも途中から「黒乃さん」じゃなくて中の人の素の話し方になってるし。
しかし周りにも結構心配している人がいるんだなーと再認識した。ちょっと団長にその辺りどうなってるのか聞いてみようか?あの人の事だからこっそり何かやってる可能性もあるしなあ。
そう考えて、俺は団長に電話してみる事にした。
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