第47話 どう思う?

「はあああああ!?千隼ちはやの事が掲示板に書かれていたですって!?」


 言うかどうかは迷ったんだが、後で知って何で言わなかったのかと責められても嫌なので、里奈には言う事にした。案の定すげえ怒っている。


「誰よ!誰が書いたのよ!」


「おち、落ち着け・・・く、苦しい、はなせええええええっ!」


 俺の言葉を聞くや否や、胸ぐらをつかんで襲い掛かって来た姉貴を無理やり俺から引き離した。こいつ俺を殺す気か!


「大体なんで掲示板にそんな話が書かれてたのよ!?」


「ちょうど、シャイニングナイトの話になってて、その流れでシャイニングマスターの話になったみたいだ。そこに例の書き込みが投稿されてた」


「で、誰が書いたのよ!」


「そんなのわかるか!」


「使えないわねぇ」


 このやろおおおおおおっ!一瞬カチンときたが、興奮絶頂のこいつに今反論すると絶対俺が負けてしまうので、勤めて冷静に振舞う事にした。


「とにかく、千隼さんがシャイニングマスターだって知ってる奴が書き込んだのは間違いない。問題は「何故そんな事をしたのか?」だ」


 もしかしたら理由なんてなくて、知ってたから書き込んだって線もある。けどさ、自由同盟のメンバーなら全員知ってるよって書き込みあったじゃん。という事は、千隼さんが秘密にしている事も知ってるわけで、その上で書き込んだって事になる。これはもう悪意ある書き込みと言って良いだろう。


「で、目星はついてるの?」


「うーん、この事を知ってるのってさ、自由同盟のメンバー以外だと、利香に実明さんに、後はワールドマスターだけだよな。黒乃さんは書き込みで知った口だし」


「ワールドじゃないの!?あいついかにもこんな事やりそうじゃない!」


 こいつどんんだけワールドの事嫌いなんだよ。まあ俺も嫌いだけどな。


「いや、ワールドは無いと思う」


「なんでよ?」


「あいつがこんな事やるとしたら、敵対関係にある奴だけだろう。例えば黒乃さんとかさ」


「要塞戦の敵って事?」


「うん。現状、千隼さんよりワールドの方がレベルは上だし知名度もあるだろ。それに自由同盟はシャイニングナイトの眼中にも無い」


「むう」


 でもそう考えると、掲示板に書き込む理由を持っている奴が居なくなるんだよな・・・。一応考えられるのは、メンバーの誰かがぽろっと第三者に漏らしてしまった・・・そんな所だろうか?


「ねえ、このまえ入ったヒカリって子、あの子どう思う?」


 俺がこの件に関して考えていると、里奈がそんな事を言ってきた。まあ、そりゃあ新参者を最初に疑ってしまうのはあるあるか。俺も一瞬考えたしな。


「あの人はゲーム始めたばかりだし、掲示板の存在知ってるかも怪しいだろ?」


 と言うか、知り合ったばかりの俺達に対して嫌がらせもくそも無いだろ。初心者だし、昔のシャイニングナイトの話しにも付いていけないと思う。


「そっか」


 里奈はそれだけ言うと「じゃあそろそろ部屋に戻る」と言って、俺の部屋を出て行った。なんだあいつ?


 まあそれはともかく、今は千隼さんの事が心配だ。俺みたいに自暴自棄になったりはしないだろうが、やっぱり傷つくだろうしな・・・。


◇◆◇


千隼「しんじくーん!お姉さんシャイニングマスターって事ばらされちゃったー><」


 俺がゲームにINするといきなり千隼さんがこんな事を言ってきた。俺の心配をよそに、千隼さんはいつも通りの通常運転だった。まじかよ、俺の心配を返せ。


ダーク「あ、はい」


千隼「ちょっとお、何その反応。お姉さん悲しい」


ダーク「いえ、さすが千隼さん。俺とは全然違うなって思ってました」


千隼「あはは、ダーク君凄いへこんでたもんね」


 あとで聞いた話だが、例の掲示板事件(俺の時の)俺の様子がおかしかった事には千隼さんは気付いていたらしく、その時にちゃんと話を聞いてやれば良かったと言われてしまった。


千隼「でも一体誰なの?掲示板なんかに書き込んだのは―。私がブラックアース命の人だったら、今頃発狂してる所よ!」


エリナ「ね。千隼はもうレベル100さえも目指してない程のエンジョイ勢なのにね」


千隼「むー!エリナちゃんちょっととげ入ってない?私ストレスまみれになっちゃうよ?」


エリナ「じゃあ、千隼が発狂しない内に狩りに行ってストレス発散させましょうか」


千隼「お、そうしよっか!」


エリナ「ブラッチ、一緒に行く?」


ブラッチ「いや、俺は今ライデンとヒカリと一緒に狩りをしているので遠慮しておく」


エリナ「あらそう?じゃあダークと千隼と私の3人ね」


ダーク「俺にも聞けよ!」


エリナ「あんたに拒否権は無いの」


千隼「あはは」


 俺の権利は一体どうなってるんだ・・・。と言うか、最近あの3人はよくつるんで一緒に狩りに行ってるな。まあ仲が良いのは良い事だ。



 それから1週間ほどが過ぎた頃だった。黒乃さんからちょっと話せないか?とメッセージが届いたので、俺はブラックアウトの本拠地、ローザ要塞へと来ていた。


黒乃「すまないなダーク君。急に呼び出したりして」


ダーク「いえ、所で用件はなんでしょう?」


 つい1週間前に黒乃さんから電話で掲示板での事を聞いたばかりなので、もしかしたら今回もそれなの?と、少し不安を感じているんだが・・・。


黒乃「実は、また千隼君の事が書かれていてな」


ダーク「まじですか・・・。えっと、今度は何と?」


黒乃「気を悪くしないでもらいたいのだが・・・」


 という事は、どっちかと言うとネガティブな話題って事か・・・。


黒乃「千隼君が今はレベル100を諦めた、ただのエンジョイ勢だとか何とかと・・・」


 それを聞いた瞬間、背筋がぞくっとした気がした。だってその発言は、1週間前に里奈がギルでチャットでしたものだ。という事はだよ?あの場に居た誰かの可能性が高いって事じゃねーの?


黒乃「ダーク君大丈夫か!?」


 俺がしばらく考え込んでいたので、黒乃さんが慌てて声を掛けて来た。


ダーク「あ、すみません、大丈夫です。黒乃さん情報ありがとうございます」


黒乃「こちらこそすまない。言うかどうか迷ったのだが、ギルド内で良くない事が起こっているとまずいと思ってな。ダーク君にだけは知らせておこうかと」


ダーク「いえ、いつもすみません。これでかなり絞られてきましたから」


 そう、絞られてしまった。恐らくはあの場に居た誰かが・・・って事になる可能性が高い。という事は、俺はギルドの誰かがあれを書いたって言う事実に直面しようとしているって事だ。一体どうなってるんだよ・・・。

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