第44話 黒乃さんといっしょ

 今日も俺達は死者の島へ来ていた。メンバーは、俺、千隼ちはやさん、エリナ、ブラっち、そして何と黒乃水言くろのみことさんが一緒に来ていた。


 実は、この前ギルドに面白い奴が加入したって話を黒乃さんにしたんだけど、そしたら「一度見てみたい」という事になり、一緒に狩りに行こうということになったんだ。


 サーバー屈指の要塞戦ギルドであるブラックアウトメンバーの黒乃さんからしたら、絶対に物足りないと思いますけど、って話をしたら、そんなの関係ないって言われたんで、死者の島でも一番安全な場所で狩りをしていた。


 それにしても、黒乃さんとブラっちの初対面は非常に面白かった。最初はね。でも段々と雲行きが怪しくなっていった。


ブラック「な、何故レベル100オーバーの人間がこんなとこに居るのだ!」


 黒乃さんが一緒に来ると知った途端のブラっちの反応だ。すげえ普通の反応でやんのwもっとこうさ、「くっ、この体の内側から放たれるプレッシャーは何だ!?まさか我が気圧されているとでも言うのか!?」くらい言って欲しかったぜ。


 いかん、俺もブラっちに影響されているのかも。


ダーク「黒乃さんには俺もエリナ師匠もお世話になってるんだよ」


黒乃水言「何を言うか。エリナ君とダーク君には、私こそいつも一緒にゲームを楽しませてもらっている」


 まあ、ゲームだけじゃなくて、私生活でも姉弟揃って黒乃さんにはお世話になってるけどね。


ブラック「くっ、やはり俺の目に狂いは無かったか!」


ダーク「ん?どういう事?」


ブラック「黒を制するものであるダークマスターと、その恋人であるエリナ。そこに関わる人間関係も、やはり普通では無かったという事か!」


ダーク「おい、ちょっと待て!」


ブラック「なんだ?」


ダーク「黒を制するものって誰に聞いたの?」


ブラック「団長殿だが」


 だんちょおおおおおおおおおおおおっ!


ダーク「いやいや、別に俺は黒を制する者でも何でも無いから!」


ブラック「しかし、我が得た情報によると、自己紹介で黒を制する者になると言ったと聞いておるぞ」


エリナ「その通りよ!」


ダーク「ちょっと師匠!何言いだすんだよ!」


 こいつ、どさくさに紛れて何言いだすんだ!俺は確かに言ったが、今はもうそんなの考えてもねーよ!


エリナ「ダークマスターは、ブラックアースを制するという野望を持っているのよ。ブラっちはそんなダークに勝てるのかしら?」


ブラック「くっ、この我を圧倒するような野望を持つ者が、こんな身近にいようとは・・・。ダークマスターよ!ここに宣言する!貴様を終生のライバルと認めよう!」


 なんでだよ!なんでそうなるんだよ!そしてそんな俺達を見て、黒乃さんが一言つぶやいた。


「ふむ、確かに面白いな」


「いやそれ、俺も含まれてるでしょ!」


 勘弁してくれよ・・・。俺はもっと普通にぬるーくゲームをする事に決めたんだよ。なんだよ、終生のライバルって・・・。まあでも水言さん楽しんでいるみたいで何よりだけどな。


 まあ、そんなこんなで狩りを始めてから20分程経ったわけだが、危ない場面にほとんど遭遇していない。と言うか、黒乃さんの殲滅せんめつ力が凄すぎて、なんか自分が強くなったように錯覚しそうだ・・・。


黒乃水言「ふむ、あれだな。どうもこう緊迫感が無いな。私は武器を変更してみようか?」


エリナ「まあ確かに、ブラッチの練習にはなってないわね」


千隼「あら、良いじゃない。黒乃さんと一緒に狩りできる機会なんて滅多にないんだし、殲滅力が高いうちにどんどん経験値もらっとこうよ」


エリナ「それもそうね」


黒乃水言「君達が良いのなら私も問題は無い。全力で行かせてもらおう」


 そういうわけで、レベル100オーバーの実力を遺憾なく発揮してもらい、最後ちょっとだけ森の方へ行ってから、俺達は制限時間いっぱい狩りを楽しんだ。


 しかしこの死者の島、経験値は確かにめちゃくちゃ良いんだが、ゴールドが全くでないんだ。なので、島で出たドロップ品を売る事でゴールドに換えるくらいしか金策の手だてが無い。まあこれでゴールドまで潤沢だったら相場がおかしくなっちゃうよな。


 そういえば今日も燈色ひいろとライデンの奴はヒカリさんのパーティーの方へ行ったみたいだ。燈色さんはブラッチが苦手だとか言ってたからなあ。でもライデンは、レベルとか考えたら、島にも顔を出した方が良い気もするが、まあ、そんなの本人の自由だな。


黒乃水言「そういえばエリナ君、今度の週末のどちらかは空いてるかい?」


エリナ「あ、はい、大丈夫です」


黒乃水言「では、流刑るけい地か塔のどちらかでいいかな?島は飽きたって言うメンバーが多くてな」


ダーク「島に飽きる!?」


黒乃水言「やはり、流刑地や塔の方がドロップは良いからな。経験値の時給はいい勝負だと思うんだが」


 ほえ~。俺なんか、島の一番低レベル帯の浜辺~森くらいが精一杯なんだが、やっぱ高レベルギルドは違うな―。


エリナ「わかりました。じゃあそのつもりで準備しときますね」


黒乃水言「うむ、よろしく頼む。それと千隼さん、あなたもたまには一緒に来てみないか?」


千隼「え?私?」


 おーっと。黒乃さんが突然千隼さんにも誘いをかけ始めたぞ。


黒乃水言「いや、レベルも高いし装備も申し分ない。エリナ君と共にパーティーに参加してもらえれば、うちのメンバーも喜びそうな気がしてな」


 さすが千隼さんだぜ。いや、この場合さすが黒乃さんと言うべきなのか?たぶんレベルと装備の話だけじゃなく、立ち回り方も見てたんだろう。そもそも、千隼さんは黒乃さんの憧れの人だからな。黒乃さんが知らないだけでさ。


千隼「う、うーん。でも高レベル狩場はちょっと怖いな・・・。またの機会って事でいいかな?」


黒乃水言「いや、もちろんだ。その気になったら声を掛けて欲しい」


千隼「ありがとー」


 そして俺達は解散して、それぞれのホームタウン(勝手に決めてるだけだが)に戻って行った。


エリナ「千隼、一緒に行かなくてよかったの?あんただったら余裕でしょ?」


 解散するなり、里奈が千隼さんにそんな事をギルドチャットで言っていた。確かにな、千隼さんだったら余裕な気がする。


千隼「いやー、そんな高レベル狩場なんてずっと行ってないからねー。皆と一緒に浜辺で狩りしてる方が私には合ってるよー」


エリナ「そう?でも行きたくなったら言いなさいよ?」


千隼「りょーかい」


 千隼さん、昔から高レベル目指すよりも誰かと一緒に遊ぶのが好きみたいだったからな―。その結果レベルも高くなりましたって言うんだから、俺にもそのコツを教えて欲しいぜ。

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