第43話 何気ない日常

 そして今日は、そんな愉快な新団員を迎えてのギルドハントというわけだ。ちなみにヒカリさんはレベルが足りないので、団長たちと別口で狩りに行っている。メンバーはヒイロと団長、アッキーさんとライデン、そして主役のヒカリさんだ。


「くっこの、回復遅れてるわよ!」


「くっ、この我をそんな変な名前で呼ぶんじゃない!我の名はブラックエンペラー!そう、このブラックアースを制する闇の皇帝である!」


「あーもう、そういうのどうでもいいから、早く回復魔法!」


 エリナからの回復要請に、ぶつぶついいながらも従うくっこの。


千隼ちはや「あ、ブラっちこっちも回復おねがーい」


ブラック「ブラっちと呼ぶな―!」


 いやー、ブラっち大忙しだな。ちなみに「くっこの」は、ブラックが「くっ、この我が・・・」ってすぐに言うから、姉貴がくっこのって命名した。たぶんどっかで「くっころ」ってのを見たんだろうな。


 ちなみにこっちのメンバーは、俺、姉貴、千隼さん(武闘家ver)、ブラっちの4人だ。ブラっちが死者の島の推奨レベルギリギリくらいだったので、一番低レベルモンスターが湧くポイントで狩りしている所だ。


 とはいえ、俺もシルバーソードを持っているし、千隼さんもレベルは高いから、割とサクサク経験値稼ぎが出来て楽しいかも。まあ、ここだとレアは期待できないけどねー。


 そして時間ギリギリまで狩りをして、俺達は死者の島を出た。レアは出なかったけど、楽しい時間を過ごせたよ。



 俺達が島から飛ばされて、本土の船着き場へ到着すると、かなり大勢の人が同じように島から帰還していた。人数制限あるからもみくちゃってほどではないが、かなりの人数が島に行ってたんだろう。


「あ、ダークさん!」


 俺達が船着き場でだべっていると、俺の名前を呼ぶチャットが見えた。発言者は「お兄ちゃんLOVE」。お兄ちゃん大好き!ギルドのギルドマスターで、名前の由来は食べちゃいたいくらいお兄ちゃんが好き!だからだそうだ。


 由来と名前だけ見ると、正直関わり合いになりたくないレベルの痛さだよな。でも本人は割と常識人なのが面白いんだけどな。ちなみにそのお兄ちゃんは、うちのギルドのライデンこと俺のクラスメートの火雷利久だ。


ダーク「よ、そっちも死者の島で?」


お兄ちゃんLOVE「そうなんですよー。あ、みなさんこんばんはー」


千隼「やっほーラブちゃんー」


エリナ「こんばんは」


ブラック「ほう、名前はあれだが一般的な常識はあるようだな。くっくっく」


 すげえなブラっち。お兄ちゃんLOVEとは初対面なのに、そのキャラで通すんだ。と言うか、お前が常識語るのか・・・。


お兄ちゃんLOVE「えっと、この人は・・・?」


 お兄ちゃんLOVEは、それはもう不信感100%と言う感じで、そう聞いてきた。


千隼「今度うちに入団したブラっちよ。よろしくしてやってね」


ブラック「ブラっちと呼ぶな!」


エリナ「そしてまたの名をくっこの」


ブラック「違うわ!」


お兄ちゃんLOVE「は、はあ・・・」


 お兄ちゃんLOVEは困惑している。そりゃそうだよな。


ダーク「お兄ちゃんLOVE、あれだ、彼はグラマンなんだ」


 俺は困惑気味の彼女を助けるためにそう言ってやった。


お兄ちゃんLOVE「あー!そういうことですね」


ブラック「だから何なのだ!そのグラマンと言うのは!」


 そして逆に困惑しだすブラっち。やばい、面白過ぎる!そしてしばらくブラっちをいじりつつ、お兄ちゃん大好きの人達と談笑してから俺達は解散した。いやー、ブラっちすっかりいじられキャラに定着したよな。



「やあ、ダーク君!」


「あ、黒乃さん、こんばんはー」


「うむ」


 俺がローザ要塞近くの街の倉庫で倉庫整理をしていると、黒乃水言くろのみことさんに声を掛けられた。黒乃さんはサーバーでも3人しかいないというレベル100達成者のうちの一人だ。そしてゲーム内で独特のキャラクターをロールプレイしている人でもある。


「しかしあれだな、ダーク君をゲーム内で普通に見れるようになって私も嬉しい限りだ」


「すみません、その節はご心配をおかけしました」


 俺はとある理由でしばらくゲームを離れていたことがあり、その間いろんな人に心配と迷惑をかけてしまった。もちろん黒乃さんにもだ。


「別に迷惑ではない。人には悩む時間も休む時間も必要だ」


「黒乃さん・・・」


 くうううううううっ!カッコいいぜ黒乃さん!


「さすが「黒乃一閃いっせん」の黒乃さんです。尊敬します!」


「ちょっと!それやめてって言ってるじゃない!あれは間違っただけなんだから!」


 黒乃一閃の話しをすると、必ず怒り出すところも可愛いよなー。


「もう!えっと、所で最近要塞戦には出てないみたいだけど・・・」


「ああ、復帰したばかりで正直操作思い出すので精一杯で・・・」


「あーなるほどwそう言う事ってあるよねー」


「そうなんですよー。ところで黒乃さん」


「なあに?」


「キャラ、素が出てますよ」


「はっ!・・・こほん。まあそういうわけで、ダーク君が要塞戦に復帰する時を楽しみにしているぞ!」


 まあ、後は黒乃さんと軽く世間(ブラックアース)話をしてから、俺はログアウトした。



 次の日。燈色ひいろさんがクラスで飯を食うようになったので、俺は一人で屋上で飯を食うようになっていた。というか、ボッチ飯意外と良いという事に気付いてしまったのだ。この俺だけの時間は誰にも邪魔させないぜ!


「せんぱーい!」


 そんなあほな事を考えながらぼけーっとしてたら、屋上階段の方から俺を呼ぶ声が聞こえて来た。声をした方に振り向くと、火雷利香からいりかと燈色がこっちへ向かっていた。


「先輩、私達も一緒に食べて良い?」


「おう」


 利香がそう聞いてきたので、俺は快く承諾した。つーかこの二人、いつの間にか仲良くなってたんだよなー。すげえよな、学年のアイドル的存在の利香と、この前までは孤高ここうの存在だった燈色さんが一緒に飯とか。まあ燈色はなんちゃって孤高なんだが。


「お前ら最近仲いいな」


「そう・・・ですね。ゲームの話しという共通の話題も有りますし」


「なるほどね」


 あと、利香と一緒にいると燈色が楽なのもあるかもな。皆と一緒にいるのは好きだけど、知らない人と喋るのは苦手な燈色にとって、矢面つったら表現が悪いが、前に出てどんどん話しをしてくれる利香の存在はありがたいのかも。


「そういえば、凄い人入ってきましたね」


「凄い人?」


「ほら、ブラック何とかって・・・」


 あー、ブラっちの事か。


「ブラックエンペラーの事か?」


「そうそれ!なんか「くっくっく、この我を・・・」とか言って、すぐ自分の世界に入ってたじゃないですか」


「だから姉貴に「くっこの」て呼ばれてる」


「あー、そういえば里奈さんにかなりしぼられてましたね」


 利香のゲーム内でのキャラ名は「お兄ちゃんLOVE」、つまり昨日死者の島が終わった後話していた人物だ。で、兄はうちのギルドのライデンこと「火雷利久」なんだが、紆余曲折あって、今では「お兄ちゃんLOVE」の名前の由来となったその精神は、すっかり鳴りを潜めている。


「私あの人怖いです」


 それまでずーっと俺達の話を聞いていた燈色が発言。


「確かに燈色ちゃん、あー言う感じの人苦手そうかも」


「まあそれで燈色は昨日、もう一人の新人さんの歓迎ハントの方に行ったんだよな」


 俺の言葉に燈色はこくこくと頷いている。


「え?二人入ったんですか?」


「そうなんだよ、珍しいよねうちのギルドに二人とか。今度お前にも紹介するよ」


 まあ、ヒカリさんも千隼さんレベルでコミュニケーション能力高いからな。利香とは気が合うんじゃないか?

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