第40話 ただいま
団長からのいきなりの新団員発表に、ギルドチャットは軽くざわついていた。
団長「ホントホント!僕と
ヒイロ「え!?エリナさんはともかく、団長夫妻の日記を見てですか!?」
素直な
団長「はっはっは、当然じゃないかヒイロ君。僕らのラブラブ日記は、いまやカシオペアサーバーでも1,2位を争う人気コンテンツなんだよ」
そうなんだよなあ。以前ブラックアースニュースに取り上げられてからと言うもの、1,2位を争うは言い過ぎだが、結構な人気が出ちゃってるんだよなあ。
いやいや、今はそんな事どうでもいい。
ダーク「それよりも団長、今の言い方だと新メンバーは二人ですか?」
団長「そうなんだよ!なんと二人も入団が決定したよ!」
千隼「凄い!」
団長「まあ、とりあえずは仮入団扱いで様子見だけどね」
ほへー、まじで驚いたぜ・・・。
なんでここまで驚いているかって言うと、自由同盟って、あまり人の出入りが無いギルドなんだよ。
そういうと聞こえがいいかもしれないが、出来上がっているがゆえに、新規の人が入ってきにくい状況でもある。なんせ、皆オフ会で顔見知りなくらい仲良いからね。
なので、この新規入会してくれる二人ってのは大変貴重なんだよ。
エリナ「で、その二人はいつ紹介してくれるの?」
団長「とりあえず来週の頭から来てくれることになってるよ」
ヒイロ「どんな人達ですか?」
人見知り度MAXの燈色さんからしたら、まあそこが一番気になるよな。というか俺も気になる。
団長「一人は明海ちゃんと同じアーチャーで、一人はエリナちゃんと同じヒーラーだよ」
エリナ「へえ、ヒーラー増えるのは助かるわね。千隼の負担が減るもの」
そうなんだよなあ。千隼さん、ギルドの必要に応じて前衛になったり後衛になったりと、まじでフル稼働なんだよ。
千隼「いやー、私は好きでやってるから特に負担とか無いよー。でもありがとねエリナちゃん」
エリナ「何言ってんのよ。毎回足りない所を埋めるように狩りしてるじゃない」
千隼「いや~ホントに無理はしてないよ~」
まあ、千隼さんの事だから、皆と狩りできればなんでもいいとか本気で思ってそうだよな。それであんなレベルまで上げれるんだから、そのコツを俺にも教えて欲しいぜ。
団長「で、だね?ダーク君もその日は出来ればログインして欲しいんだけど、大丈夫?歓迎ハントとか行きたいからさ」
ダーク「はい、ぜひ参加したいです」
団長「ホントかい?良かったあ。これで黒を制するものを新人さんに紹介できるよー」
ダーク「あー、急に参加したくなくなってきた・・・」
団長「え?大丈夫?そんな時は僕らのラブラブ狩り日記を読むと良いよ」
ダーク「お断りします」
団長「えー!なんでそんな嫌がるのさ」
燈色「私もそれは嫌です」
団長「ひどい!」
燈色さんの一言で団長がいじけモードに入った為、姉貴プロデュースによる俺のサプライズ復帰イベントは終了。俺は久々に、ゲーム内を探索して回ることにした。
桜マスター「あ・・・」
俺が久しぶりにマイ倉庫で倉庫整理に励んでいると、
ダーク「どうもご無沙汰しています」
桜マスター「ごめんなさい!」
ダーク「ええっ!」
俺が久しぶりに再会の挨拶をすると、実明さんが急に謝罪してきた。
ダーク「ちょ、ちょっと!なんで急に謝ってるんですか!?」
桜マスター「だって私のせいでダークさんが大変な事に・・・」
なんでこの人謝ってんの!?って一瞬思ったが、そういえば実明さんから聞いたブラックアース掲示板の情報を見たことがきっかけだったな~と、今更ながら思い出した。
でもあれは悪気があったわけではない。
ダーク「いやいや!あれはあんな事書いてたやつが悪いのであって、桜さんのせいでは全くありませんから!」
桜マスター「でも私が余計な情報を伝えたせいで・・・」
それは確かにそうなんだけど・・・。けどさ、今回の事があったおかげで色々考える時間も増えた。
たぶんあのまま何事もなく過ごしてても、いつかは爆発した気がするんだよねえ。だったら早めに・・・と言う言い方は変だけど、それに気付けて対処できたのは良かったと思うんだよ。
ダーク「今回の件は俺にとっても良い経験でした。色々と無理してたのも自覚出来ましたし」
桜マスター「え?無理してるんですか!?」
ダーク「いやいや、もうしてませんよ!色々学んだ事も多かったし、悪い事ばかりでは無かったので、ホント気にしないで下さい」
桜マスター「・・・わかりました」
しばらく考えた後、桜さんは俺にそう言ってきたよ。まあ、彼女からしたら自分が原因と思ってるから「はいそうですか」とはいかないよな。
でもさ、本音を言わせてもらうと、正直ちょっとはびびってるんだよ。また掲示板とかに書かれたらどうしよう・・・とかな。
だけど、次に何か書かれてたら、絶対利久辺りに愚痴ろうと思ってるし、一人で抱え込まない事だけは決めてる。
と言うかさ、普段から燈色や利久に愚痴ってれば良かったんだよな、姉貴との格差の話しとかさ。なんかこう、カッコつけてたわけじゃないけど、なんともないふりとかしてたと思う。
「ダーク君!」
俺がそんな事をグダグダ考えながら街の周辺を散歩していると、俺を呼ぶ声が聞こえて来た。名前欄には「
ダーク「お久しぶりです水言さん」
黒乃水言「大丈夫なの!?もう平気なの!?もう私、すっごい心配したんだからっ!」
ダーク「ちょ!ちょっと落ち着いてください!」
会うなり怒涛の勢いで水言さんが俺に迫ってくるものだから、ちょっとビビっちゃったぜ・・・。
ダーク「あのその、事情は知ってる感じですかね・・・?」
俺は水言さんが落ち着いてから、そう尋ねた。俺は水言さんにこの件については一切話してないので、たぶん里奈か利香辺りに聞いたんだろう。
黒乃水言「あ、うん・・・。エリナちゃんが凄く心配してて、私に相談してきたの」
ダーク「え?そうなんですか?」
里奈の奴そんな素振り全く見せてなかったけどなあ。
黒乃水言「なんか、ダーク君のあんな落ち込んだ姿、最近見た事なくて、正直どうしたらいいかわかんないって」
まじかよ・・・。あんまそういう姿俺に見せないから、全然気づかなかった・・・。あーあと、黒乃さんにも心配かけちゃってたんだよなあこれ。
ダーク「あー、すみません黒乃さん、ご心配おかけしました。でもまあ、なんとか皆のおかげで無事復帰も出来ました。ありがとうございます」
黒乃水言「私なんか何もしてないよ!でも、ダーク君が戻って来れて良かった~」
なんか、こんな水言さんの姿見てたら、絶対こんな事はしないと誓おう!と思ったよ。
ダーク「ところで水言さん」
黒乃水言「なあに?」
ダーク「話し方、素に戻ってますよ」
黒乃水言「・・・。あーおほん。やあダーク君!久しぶりだな!」
ダーク「いや、遅いですから!」
黒乃水言「むう・・・」
その後水言さんと色々と話をした後、歩きながらマイ倉庫へ向かっていると、団長からギルドハントへ行かないか?と誘われたので、もちろん「行きます!」と答えた。
団長「よし!それじゃあダーク君とあけみちゃんの復帰祝いを兼ねたギルドハントへ行こうじゃないか!」
千隼「わーい♪なんかみんなで行くのひさしぶりじゃない?」
エリナ「まあ、誰かさんが全くログインしなかったからね」
アッキー「ごめん・・・」
エリナ「ちょ、明海さんの事じゃないわよ!ダークの事よ!ダーク!」
ダーク「ごめん・・・」
燈色「お笑いコントやってないで早く行きましょう」
エリナ「コントじゃないわよ!」
団長「まあまあまあ、久々の狩りで、はしゃぐ気持ちもわかるけど、とりあえず出発しよう」
エリナ「別にはしゃいでないからっ!」
今日のチャットは珍しく里奈の奴がいじられている。まあ、みんな俺に気を使ってくれているのかもしれないな。
まあそれを考えるとだなあ、とりあえず一番心配してくれていたであろう「あいつ」に俺は礼を言わなければならないだろう。
いや、水言さんに話を聞いてからと言うもの、ずっとそれは考えてたんだよ。けどさ、面と向かってリアルで言うのは恥ずかしいんだよ。
なので色々考えた末、それをゲーム内で実行しようと思う。
ダーク「なあ、師匠」
エリナ「何よ?」
ダーク「あーなんか、色々とありがとな」
あー無理!もう無理!これが精一杯!恥ずかしくて顔から火が出そうだぜ!
エリナ「はあ?何よ突然気持ち悪い」
ダーク「ちょ、気持ち悪いって・・・」
燈色「先輩、今のは訳が分からない上に、少し気持ち悪かったです」
ダーク「ええ・・・」
団長「いやあ、突然何を言い出すかと思ったら「ありがとう」とか、ダーク君どうしたの一体」
アッキー「えっと、ダーク君?」
千隼「えー、一体どうしたのよダーク君、お姉さんに話してみなさいよ~」
千隼さん、これ絶対に面白がってるだろ!
ダーク「なんでもありません!ちょっとこう日頃の感謝とかをですねー言ってみようかなーとか思っただけです!」
なんだよ気持ち悪いとかいう事ないだろうが・・・。
千隼「わー、ダーク君が怒った><」
ダーク「怒ってません!泣きまねは止めてください!それよりも早く行きましょう!」
これ以上チャットを続けてたらダメだ。俺のメンタルが持たん!くっそ~完全にやり方を間違えた。こんなならやっぱ面と向かって言えばよかったぜ。
エリナ「ダーク」
そんな事をうだうだ考えていたら、姉貴が俺にだけ聞こえるように話しかけて来た。
ダーク「なんだよ?」
まだ何か言い足りねーのかこいつは。これ以上言うと、直接部屋に言ってビシッと言うからな!「ごめんなさい、やめてください」って!
エリナ「おかえり、ダーク」
ダーク「・・・」
ちょっと待ってくれよ・・・。それはずるいだろ・・・。不意打ち過ぎるんだよ。なんか目から変な汗出そうなんだけど!
あーもう!とりあえず返事だ返事!
「おう、ただいま!」
第三部 完
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