第39話 サプライズ

ダーク「ど、どうもこんばんは・・・」


千隼ちはや「・・・え?」


団長「ええっ!?」


ヒイロ「あ、あれ?先輩が・・・あれ?」


 これはとある夜の自由同盟のギルドチャットだ。皆が戸惑っているのも無理はない。


 つい先日、里奈から復帰しないつもりじゃないかと問い詰められた俺は、なるべく早目に一時的にでもログインしようと考えた。まあ、別に引退したわけじゃないよって事を表明する為にね。


 それに一度ちゃんと皆に謝っておかなきゃなとも思ったんだ。一応、ラインとかでは皆にちゃんと謝罪したんだけど、ゲーム内で起きた事だし、ちゃんとゲーム内で謝罪するのが筋かなと考えたんだ。


 で、その旨を里奈に話したら


「サプライズね!」


 とか言い出しやがった。


 要は突然ログインして皆を驚かせようという事らしい。しかも「しばらく復帰しない」ようなことを匂わせてだ。


 もちろん俺は反対したよ。事前にログインする日をそれとなく伝えてもらって、それから俺がログインしたほうが、人も集まってもらえやすいだろうしな。


 そう伝えたら


「そんな事したらサプライズにならないじゃない!」


 とか言い出しやがった。


 誰がサプライズをしたいなんて言ったよ!おれはただ、出来るだけ大勢の人達に謝罪と感謝をしたいだけなんだよ!


 しかしそんな俺の要望が通るわけもなく、結局は姉貴のプランが採択され、たった今ログインしたばかりだ。


団長「あー真司君、今日実は明海あけみちゃん、用事でログインできないんだよー」


ダーク「え?そうなんですか?」


 そしてなんと、俺が一番会わなきゃいけない人に会えないという事態が発生した。


団長「しばらく復帰は無いって言ってたからさあ、びっくりしたよ。前もって言ってくれれば日程会わせられたのに~」


ダーク「す、すみません・・・」


団長「いやいや、責めているわけじゃないんだよ。ただ明海ちゃんが残念がるかなーって」


 ぐぬぬぬぬ!


 ほらな!だからサプライズとか嫌だったんだよ!


ヒイロ「突然復帰とか、驚きました。一体どうしたんですか?」


千隼「そうそう、わたしもびっくりしちゃった!おかげで「お帰り!」って言いそこなったよーw」


ダーク「重ね重ね申し訳ない・・・」


 ううっ、つらい!なんかこの場に居るのがつらくなってきた!


 それもこれも里奈がサプライズとか言い出したからだぞ!なんであいつは黙ったままなんだ!


 俺がそんな事を考えながら、ぷんすか怒っていると・・・。


エリナ「まあ、ダークだから仕方ないわよ」


 里奈の奴、完全に自分は関係ない発言しやがった!


ヒイロ「まあ、先輩ですしね」


千隼「二人ともひどいw」


団長「そんな事で黒を制する者になれると思ってるのかい?」


 ぐぬぬぬぬぬぬ!あんのやろおおおおおおおおおおおお!


 完全に頭にきた俺は、これが里奈のプランである事を一瞬暴露してやろうかと考えた。が、そんな事したら後であいつからどんな仕返しが来るかわかったもんじゃない。


 それに、他のメンバーから、エリナとの関係を冷やかされかねない。正直それだけは避けたい。


 そういうわけで、今回も俺は泣き寝入りする事になりそうだ。マジで泣きたい!


団長「いやあ、それにしても間が悪い復帰ではあったけど、タイミングは良かったなあ」


 団長がおかしなことを言い出した。間が悪いけどタイミングが良い?なんじゃそりゃ。


ヒイロ「団長、意味が分かりません」


 燈色ひいろさんが非常に簡潔かつ、ストレートに俺らの意見を代弁してくれた。


団長「ごめんごめん。明海ちゃんがいないという意味では「間が悪い」んだけど、新たな発表をするには「タイミングが良かった」んだよ」


千隼「新たな発表?」


 知らないのは俺だけかと思ったが、どうやら千隼さんも知らないとなると、恐らく団長以外の全員が知らないのだろう。一体何なんだろう?


 しかしこういう時の団長の発表はロクな事が無い気がするんだが・・・。


団長「それはねえ・・・」


 アッキーさんがログインしました。


 団長が発表しようとした瞬間、明海さんのログインを知らせる文字がチャット欄に流れた。


アッキー「真司君!復帰するの!?」


ダーク「あ、えっと、あの、お久しぶりです。その節は大変ご迷惑をおかけしました」


アッキー「そんな事どうでもいいから!」


ダーク「ええ・・・」


 せっかく謝罪の言葉を一生懸命考えて来たのに・・・。


ダーク「えっと、今回は一時的な顔見世と言うか、迷惑をおかけしたので、その挨拶と言うか・・・」


アッキー「本格復帰じゃないの?」


ダーク「もうちょっと休んだら、またゲームしようかと思ってます」


アッキー「引退しないよね?」


ダーク「はい、そのつもりです」


アッキー「そっか、おかえりダーク君」


ダーク「あ、はい!ただいま戻りました!」


 こんな嬉しいお帰りは初めてかもしれない。こんな事なら、もっと早く顔を出しときゃ良かった!


団長「いや実はさ、ダーク君がログインした時、すぐに明海ちゃんに知らせたんだよ。そしたらすぐ外出先から帰るってw」


アッキー「だって、真司君がログインしてるって聞いたら帰るに決まってるよ!もう、前もって言ってくれてたら良かったのにー」


 ですよねえ!絶対後で里奈に文句言ってやるぜ!あーでも、また謝罪するタイミングを逸してしまった。まあ一度ログインしたし、いつでもそれは出来るか。


団長「はいはい。じゃあ、みんな揃ったところで発表しますよ!」


 あ、そういえばそうだった。明海さんの登場ですっかり忘れてたぜ。


団長「じゃあ発表します!」


 なんだろうなあ。もしかしてラブラブ日記をギルドの日記から独立させて、本格的に始めます!とかじゃないだろうな。


 やだぞ俺は。あんなコンテンツが本格始動とか。


団長「自由同盟に、新たなメンバーが加わります!」


 一瞬シーンと静まり返る自由同盟チャット欄。俺も最初何を言われたかわからなかったぜ。

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