第16話 らぶらぶ狩り日記
「先輩日記見ましたよ」
そう声を掛けてきてくれたのは、俺の後輩で友人の妹でもある「お兄ちゃんLOVE]こと、
最近では、お兄ちゃんLOVEの名前が泣いてしまうんじゃないかって程、兄への愛情が目減りしている気がするが、別に俺が気にする事では無いな、うん。
「別にお礼何て言わなくていいですよ。いつも先輩にはお世話になってるし」
たぶん日記の中で「お兄ちゃんLOVEさんにお礼言っとかなきゃ」って俺が書いてたからだろう、そんな事を利香が言ってきた。
「いやいや、お前が助言くれたおかげで、ホント無駄な出費が減ったし、経験値の増え方も変わって来たのは事実だよ。まあ、姉貴には「そのくらいの貯金www」とか言って笑われたけど・・・」
「ああ、里奈さんの基準で考えちゃだめです。あの人は自由同盟規模のギルドでは規格外な気がしますし」
「だよなあ」
「あ、里奈さんのブログも見ましたよ。うちのギルドのヒーラーやってる子が「凄く参考になる」って、すっかりブログファンになってます」
「ははっ、じゃあそれ姉貴に伝えてやってよ。すげえ喜びそうだからさ」
「そうですね、そうします。それにしても凄い事になってますね・・・」
こいつが言ってるのは、自由同盟ギルドのギルドホームページの事だ。
え?姉貴のブログの事じゃないのかって?確かに、姉貴のブログも凄い事にはなっている。
でも、姉貴のブログが話題になっている事の大きな要因の一つに、ギルドホームページの存在があるんだ。
「そうだな。俺もまさかこんな事になるなんて思ってもみなかったよ」
そう利香に返答しながら、俺は自由同盟ギルドの日記を眺めていた。
全ては、団長とアッキーさんが書いた日記を、ブログにアップロードしたことから始まった。
団長「お望み通り日記を書いたよ!さあ、みてもらおうじゃないかっ!」
その時の団長はなんかやけにハイテンションだった。
エリナ「なんでそんなにテンション高いのよ・・・」
ヒイロ「若干うっとおしいです」
団長「ヒイロちゃんひどい!」
アッキー「まあまあ、とりあえず二人の初の共同作業なんだから見てみてよ」
俺はちょうど狩場で金稼ぎをしていたので、後で見に行きますと返事をしておいたんだが・・・。
バタン!ドタドタドタ!バン!
しばらくすると、姉貴がいきなり俺の部屋に突入してきた。
「ちょっと真司!日記見た!?」
「おまっ!ノックしてから入れよ!」
「細かい事はいいのよ!それよりこれ見なさいよ!」
「なんだよ一体・・・」
俺は一旦自分のキャラを安全なゾーンまで避難させてから、姉貴が差し出したスマホの画面の覗いてみた。
「あれ?ゲーム画面だけ?何も文字書いてないじゃん」
団長たちが書いた日記には、文章がほとんど書かれておらず、ブラックアースのゲーム画面を撮影したスクリーンショットだけがたくさん掲載されていた。
「スクリーンショットよーく見てよ」
姉貴が画面拡大してくれたので、もう一度俺は日記の中のスクリーンショットに目を移した。
そこには、団長と明海さんが会話しているスクリーンショットが何枚も掲載されていた。
団長「アッキー、MPとか大丈夫?無理そうだったら休憩挟もうか?」
アッキー「大丈夫!礼君優しいね・・・ちゅっ(ハート)」
団長「(〃▽〃)ポッ」
アッキー「照れてる礼君も可愛い(/ω\)」
団長「そんな事ないよ!アッキーの可愛さには適わないよ!」
アッキー「ホント?嬉しい!(≧∇≦)」
「・・・なんじゃこりゃ・・・」
日記には、二人のこんな会話が写ったスクリーンショットがたくさん掲載されていた。
まだまだスクリーンショットは続いていたが、途中で見るのがつらくなってきた。
「あと十枚ほどのスクリーンショット、全部こんな調子だから」
「まじかよ・・・。一体何を考えてこんな日記を書いたんだ・・・」
とりあえずスマホから目を離し、ゲーム画面へと俺は戻った。
ヒイロ「団長、これ何?」
するとヒイロがすかさず団長に突っ込んでいた。
団長「僕と明海ちゃんのラブラブ夫婦狩り日記だよ^^」
ヒイロ「らぶらぶ狩り日記!?」
団長「そうさ!普通の日記を書いてもつまんないだろ?だったら僕と明海ちゃんにしか書けない日記をと思ったんだ」
ヒイロ「えっと、つまり今後もずっとこの路線で行くの?」
団長「うん!」
「まじかよ・・・」
あのクールなヒイロさんもさすがにこれには驚いたのか、その後の発言は無かった。
「ちょっと、あんたなんとかしなさいよ!あんなもんずーっと見せられるの私嫌よ!」
「俺だって嫌だよ!」
何が楽しくて、他人のラブラブ日記を見せられなきゃいけないんだ・・・。
ここは姉貴の言う通り、なんとかしてこの方向性を軌道修正してもらえるように交渉する必要があるな・・・。
ダーク「団長、さすがにこれはちょっと・・・」
団長「え?なんで?」
ダーク「だって恥ずかしいでしょ?よく知らない人にも見られる可能性があるんですよ」
団長「全然!むしろ僕らの中の良さをいろんな人に見てもらいたいよ!」
え?恥ずかしくねーの?まじで?
この前、無理やり日記を書く流れになったから、若干嫌がらせも兼ねて書いてたんじゃないの?
アッキー「ダーク君はずーっと一人だから恥ずかしいかもだけど・・・あ、そういえばダーク君もエリナちゃんとイチャイチャしてた時あったね^^」
げ!なんで姉貴と一緒に画面見てるタイミングでそんな事言うんだこの人は!
俺はそーっと姉貴の方をうかがってみた。
うわあ、案の定顔真っ赤だぜ・・・。
アッキー「あ、そうだ!二人がラブラブちゅっちゅしてた時のスクリーンショットあるから、今度日記書く時、それも掲載するね!」
ダーク「やめて!まじやめて!」
俺と姉貴のHPが無くなっちゃう!
アッキー「えー、いいじゃん二人付き合ってるんだし~」
ダーク「なんかしらんけど謝るから!それだけはやめてあげて!」
アッキー「えーつまんなーい」
その後姉貴はそそくさと部屋へと戻っていった。
その後の夕食とか、顔を合わせるのがすげえ気まずかったのをよーく覚えてるよ・・・。
で、実はその日記が「ブラックアースニュースコンテンツ」という、ブラックアースユーザーが立ち上げたブラックアース専門のニュースサイトで取り上げられたんだ。
カシオペアサーバーで夫婦で仲良く狩りしているユーザーとしてね。
なので、2,3日前からブログを訪れる人が凄い数になってるんだ。
ついでにブログに付けたアクセスカウンターが、凄い勢いで回ってるもんな。
で、ギルドのブログから姉貴のブログにもリンクを貼ってたので、姉貴のブログもちょっとした話題になってしまったんだ。
当の姉貴本人は
「どどどどどどうしよう!なんか訪問者がすごいことになってるううう><」
とか言って、昨日はゲームにも集中できない程に動揺していた。
なので俺は、「特別な事はなにもしなくていいんじゃないか?姉貴が書きたい事を書いて、それを気に入ってくれる人がいるんだから」って言ったんだ。
そしたら、まあちょっとは落ち着いたみたいだ。
今日は狩場ごとの立ち回り方について、自分なりの考察を書いてたみたい。
「ホント、里奈さんって勉強熱心ですよね」
まあ、利香のその意見には俺も同意する。あいつは集中すると、それ以外見えなくなるんじゃってくらい没頭するからな。
でもさ?それ考えると、やっぱ姉貴は高レベル帯の狩場へ行くべきなんじゃないかなあって俺は思うんだよ。
もちろん、姉貴自信の意思でそういう場所に行ってないってのは理解している。
けど、行けるのに、行きたくないわけじゃないのに行かないってのは、損してる気がするんだよね。
うーん、これは一度姉貴と話をしてみた方がいいような気がする。
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