第14話 みんなでやれば・・・

 先日利香と話した時にもらったアドバイス、まあ、目的をもってゲームを遊ぶって話しの事だ。

 とりあえずいつまでにお金をこれだけ貯めてレベルも上げる、みたいな目標を立ててみた。

 そしたらさ


「先輩最近、あまり狩り中に死ななくなったよね」


 ある時、燈色からこう言われたんだ。

 自分ではあまり、何かが変わった気はいなかったんだけどね。

 考えてみれば、無駄に死ぬことが少なくなった気がする。

 あと、無駄遣いも減ったし狩りで拾ったゴミみたいなアイテムも、捨てるんじゃなく売るようになった。

 ゴミに関しては、売るか捨てるかは人それぞれかもしれんけど。


 目標は経験値獲得とお金貯めなわけだが、全ての行動を目標に絡めようと意識してるもんだから、自然と無駄が無くなっていったんだよね。

 倉庫を見ると、特にレアが出たわけではないのに、これまででは考えられないペースでお金が貯まっているのがよーくわかる。

 まあ、これまでどれだけ無駄な出費が多かったのかを再認識させられた。


 これもしかしたら、実生活にも応用できるかもしれないな・・・。


「あんたPC画面見ながら何ニヤニヤしてんのよ・・・」


 そんな事を考えていたら、いつの間にか部屋の入り口に姉貴が立っていた。

 思い切り怪訝な表情をしながら。


「おい、勝手にドア開けるなよ!」


「はあ!?ちゃーんとノックしましたあああっ!」


「え?マジで?」


「あんたはPC見ながらニヤニヤしてて気付いてなかったけどね!どうせエッチな画像でも見てたんでしょ!この変態!」


「ちょ!そんなもん見てねーよ!って、こ、こら・・・」


 俺が言い終えないうちに姉貴は俺の横まで来てPCを覗き込んだ。


「何よこれ?ゲームの倉庫じゃない。なんでこんなのでニヤニヤしてんのよ・・・」


「別に倉庫でニヤニヤしてたわけじゃねーよ。お金貯まったなあって思ってただけだ」


「はあ?なによそれ・・・ぷっ!」


 姉貴はPC画面に映し出されている倉庫の中身を見て、急に吹き出した。


「なんだよ?」


「あんたこれしきのお金でニヤニヤしてたわけ?www」


「うるせえ!」


 俺は前衛職だから、魔法で回復できるお前と違ってポーション代とかすげえ掛かってるんだよ!

 とか言いたかったが、そこはぐっと我慢した。

 なんだかんだ言いながら、姉貴は俺に使わないポーションとか譲ってくれてるからな。


「で、一体何の用だよ・・・」


 そもそも用があったから俺の部屋まで来たんだろうに、なぜにこいつは、余計な事をして俺をイライラさせるのか、その真意をぜひお聞かせ願いたいぜ。


「あ、そうだった!あんたが余計な物見せるから忘れる所だった」


 うがあああああああああああああああああああああああああああああああっ!

 それはこっちのせりふじゃああああああああああああああああああああっ!


 とか言うと、絶対にまた揉めるので言わない。

 理不尽だぜ・・・。


「以前、あんたが動画とかホームページ作ったらどうか?って話をしたじゃない」


「ああ、姉貴のホームページを作ったらって話ね」


「そうそう。それで作ることにしたから」


「え?まじで?ホームページ?ヨーチューブ?」


「とりあえず動画はハードル高いから、まずはホームページね。ブログだっけ?」


 マジかよ・・・。姉貴の事だから恥ずかしいとか言って、絶対しないと思ってたんだけどなあ。


「どんなブログにするの?」


「んー、とりあえずINT型ヒーラーの日常的なブログにしようかなって思ってる」


「考察とかじゃなくて?」


「そんな大層なもの書かないわよ。ギルドのメンバーとかに見てもらう為のブログだし」


 なるほどなあ。それなら日記の方が良いのか。


「けど、せっかくINT型やってるのにもったいなくね?」


「だって、ギルドの人達以外に見せたいとか思ってるわけじゃないもの」


「そうなの?」


「ちょっと飽きてきた感のあるゲームに目的を取り入れる事で、また新しい目標とかできるんじゃないかな~って思ってるだけ」


 なるほどね。

 つまりこいつは、俺と一緒って事なんだよ。


 俺の場合、自分のレベルやお金を貯める手段が「目標を設定する」って事だったんだけど、里奈の場合は「ブログで日記を書く」事でモチベーションを保とうと考えてるわけだ。


 毎日何かしらの目標とかやることがあった方が成果が出やすいのは、俺が最近実感したばかりだ。


「OKわかった。じゃあギルドのブログからお前のブログにリンクを貼るから、ブログを作ったら教えてくれ」


「・・・」


「なんだよ?」


「いや、なんか、ギルドのみんなに日記見せるのとか、なんか恥ずかしいって言うか・・・」


 ああ、まあそれはなあ・・・。


「でも、黙っとくわけにもいかないだろ?」


「う、うーん」


「利久を見て見ろよ。恥ずかしさのかけらも感じてないぞあいつ」


「あいつと一緒にしないでよ!ばかーっ!」


「いってぇ!」


 姉貴は近くにあったクッションを俺に投げつけてから部屋を出ていった。

 なんつー暴力的な女だ。


 いや、この場合、陸と比較した俺が悪いのか。

 あ、結局姉貴のブログのURL聞くの忘れた・・・。


**********


 ある日のギルドチャット。


千隼「え?エリナちゃんブログ作ったの?」


エリナ「あーうん、まあね」


団長「えー!URL教えてよー」


エリナ「あ、じゃあラインで送るね」


千隼「ダーク君はもう見たの?」


ダーク「いえ、作るのは聞いてましたが、もう作ったってのは今知りました」


千隼「えー!エリナちゃんダーク君に教えてなかったの?」


エリナ「あれーそうだっけ?(棒)」


 こいつ、この前利久を引き合いに出したことをまだ根に持っているらしい・・・。

 とはいえ、一応俺の所にもURLが送られてきた。

 どれ、姉貴のブログをちょっと覗いてみますかね。


 ブログタイトルはっと・・・。


「エリナのブラックアース日記」


 べただな。まあでも、ギルド員向けなら悪くない気がする。


アッキー「へー、ブラックアースのプレイ日記なんだ?」


エリナ「うん。ギルドの人達に見てもらおうと思って」


千隼「エリナちゃんの普段のBA生活が赤裸々に語られるのね」


エリナ「何よそれw」


アッキー「ほうほう、例えばダーク君とのデートの様子とか・・・」


千隼「キャーw」


エリナ「ちょ!無いから!そんなの無いから!」


 大慌てで否定し始める姉貴。

 やばい!このままだと俺にまで被害が・・・。


ダーク「あー、とりあえず、ギルドブログにリンク貼っとくけどOK?」


エリナ「え?あ、ああ!そうね!お願い!」


団長「そういえば、ギルドのブログの進捗具合はどう?」


 よっしゃ!とりあえず話を逸らす事には成功したみたいだ。


ダーク「今は8割程度ですね」


 とりあえず現時点でのコンテンツは・・・。


1ギルドの紹介

2ギルドメンバーの紹介

3ギルドの活動内容

4ギルド掲示板

5リンク集


 これくらいなんだよなあ。

 実を言えば、もう少しコンテンツを増やしたいんだけど、正直何も思いつかない。


ダーク「何か良い案はないですかね」


アッキー「そんなもんじゃないの?ギルドのホームページなんてさー」


ダーク「ですかね」


団長「あ!」


ダーク「え?なんです?良い案あります?」


団長「良い事思いついた!」


エリナ「何よ?」


団長「ダーク君の日記を書けば良いじゃない」


 は?この人何言ってんの?


アッキー「おお!それ名案かも!」


千隼「あーそれ私もみたーい♪」


エリナ「まあ、私が書くんだからダークも書くのが筋ってもんよね」


ダーク「意味が全くわかりませんが!?」


 いやいやいや!

 なんで俺が日記なんか書かなきゃいけないんだよ!


団長「まあまあ、あまり深く考えないでさー気楽にいこう」


ダーク「それ、俺本人が言うならわかるけど、なんで団長が言うの!?」


アッキー「もう、男らしくないぞダーク君」


ダーク「意味わかんないっす!」


千隼「えー、ダーク君の日記面白そうだけどなあ」


 っぐ!

 さっきから千隼さんの言葉に心がぐらつきそうになるが、これだけは何としても拒否しなければ!

 大体なんで俺が書きたくもない日記なんか書かなきゃいけないんだよ!


千隼「あ!じゃあさ、みんなで交代で書こうよ!」


全員「・・・え?」


千隼「だって、ダーク君だけに書かせるんじゃ負担になっちゃうかもだけど、みんなで書けるときに書くって事にすれば、誰にも負担いかないよね♪」


団長「いやでも僕は日記はちょっと・・・」


千隼「えー、さっき深く考えないで気楽にいこうって言ったじゃない」


団長「いや言ったけど・・・」


ダーク「うん、それは確かに言いましたね」


アッキー「えーなんか面白そう!わたしやるー!」


エリナ「いやでも私、自分のブログで書いてるんだけど・・・」


千隼「エリナちゃんがブログで日記書いた時は、ギルドのホームページにお知らせとして掲載すればOKじゃない?」


エリナ「ああ、それなら私は構わないわよ」


千隼「じゃあ、書ける人で日記を書くに決定ね!」


アッキー「おー」


エリナ「はーい」


団長「えー」


 ・・・。

 結果的に良かった・・・・のか?

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