第10話 どーぞどーぞ

「すたいるしーと?HTML5?なんじゃそりゃ・・・」


 俺は今、ホームページ制作入門と言うサイトを見ていた。

 理由は、自由同盟のギルドホームページを作るためだ。


 先日団長に「ギルドのホームページ作りましょう!」と、姉貴と一緒に提案したんだ。

 けど「誰が作るのか?」という問題にぶちあたった。

 俺としては無理に作る必要も無いかと思ったんだけど、何と姉貴の奴が俺に「作れ」とか言い出しやがった。


 もちろん拒否したよ?拒否したけど「あんたどうせ暇でしょ?」とか言われ、団長や明海あけみさんからの賛同も取り付けられて、いつの間にか俺がする事に。

 ずるいぞみんな・・・。


 そういうわけでホームページの作り方を調べることにしたんだが・・・。


 作り方を検索している過程で「無料のホームページ制作ソフト」なるものを発見したので、それを使う事にしたまでは良かった。

 で、今は使い方を調べている最中だったんだけど、そしたら専門用語が山のように出てくるわ出てくるわ。

 素人の俺にはわけがわかんねー話しばかりだった。


「ねえ、ホームページ出来たあ?」


 俺が必死に専門用語と格闘していると、思わずいらっとするような、姉貴の能天気なセリフが聞こえてきやがった。


「そんな簡単に出来るわけねーだろうが!」


「何よ!なんで怒ってるのよ!」


 お前のおかげで苦労してるからだろうが!とか言うと、10倍くらいになって帰ってきそうなので、そうは言わなかった。


「そもそも、俺はホームページなんか作った事ないんだよ。そんな簡単にできるわけがねえ」


「えー、でもみんなホームページとかブログやってるじゃん」


 それは・・・そうなんだよなあ。


 なんかさ、ブラックアースプレイヤーの中にも「ブログ始めました」って人が、結構多いんだよね。

 ほら、他の人はどんな遊び方してるのかとか気になるじゃん。

 でさ、ブラックアースでブログやってる人が、ブラックアース公式ページに登録すれば、公式ページで紹介してくれるシステムがあるんだよ。

 それを見るとカシオペアサーバーでも、かなりの人がブログとかホームページを登録してるんだよね。

 みんなどうやって、あんな小難しいプログラムのようなもんを覚えたんだろう?

 これは、一人でどうにかする事は考えずに、スターナイトさんに助言を求めた方がいいような気がするわ。




「あー、それなら無料の「レンタルブログサービス」を使えば良いんですよ」


「レンタルブログサービス?」


「はい」


 次の日、俺はさっそくスターナイトさんに連絡を取って、ブログを始めるのに良い方法は無いのかを聞いてみた。

 そしたら「レンタル」とか言い出した。


「レンタルって、ブログをレンタルするの?」


「そうです。ダークさんも調べた通り、一から自分でブログやホームページを用意するとなると、物凄い手間がかかります」


「それはよーくわかりました。何が何やらだったもん」


「あはは。まあそれでですね、レンタルブログでは、その辺の小難しい所を全部レンタルサービスがやってくれるんですよ」


「全部?例えばどういう風にですか?」


「こっちは、日記なり記事なりを書いて、まあ画像を付けたりもして、後は書き込むボタンを押すだけでOKなんです」


「おおっ!それなら俺にも出来るかも!」


「でしょ?その代わり凝ったことをしようと思ったら、それなりに勉強しなきゃいけないのは一緒なんですけどね」


「いやいや、そんな凝った事はしませんから」


「ブログ始めると、色々凝りたくなってくるんですよw」


 へえ、そんなもんなのかねえ。

 でもとりあえずスターさんから教えてもらったおかげで、なんとかギルドのブログは始められそうだ。

 あ、もちろんスターさんのブログを見た感想は伝えたよ。


 エリナが


「戦士の要塞戦での心情がわかりやすく説明されてて、ヒーラーとして勉強になる」


 って言ってたよ~って伝えたら、「あの凄い人に言われると、なんか照れますねw」って、すげえ喜んでた。

 実際スターさんのブログの出来には圧倒されたからな。



 その夜、俺は里奈にスターさんから聞いたレンタルブログサービス「ファイブドア」の事を伝えた。

 そしたら里奈の奴、意外な事を言い始めたんだよ。


「あ、私も大学で聞いてきた」


「え?そうなの?」


「かなり詳しい人がいてさ、ブログを作るのに大切なのは、えっと、なんだっけ?」


 里奈の奴、そう言いながらメモを開き始めた。

 こいつ、俺に任せっぱなしかと思いきや、自分でも結構ちゃんと聞いて来てくれたっぽいな。


「あったあった。えっとね、SEOが大切なので「ワールドプレス」をすると良いよって言ってた」


「SEO?ワールドプレス?」


「えっと、検索サイトの順位が上がりやすいとかなんとか」


「なんだそりゃ」


「私だってよくわかんないわよ!ちょっと調べて見なさいよ!」


 ギルドのブログやホームページなのに、なんで検索サイトの順位が関係あるんだよ・・・と思ったが、こいつは言い出したら聞かないので、とりあえず調べてみることにした。


「えっと、ワールドプレス、ワールドプレス・・・あった」


 俺はワールドプレスの初心者向け導入ガイドというサイトを発見した。


「なんか初心者サイトを見つけたから読んでみる」


「わかった。任せる」


 俺は「わかった」「任せる」と言いながらも、「まだなの?」「早くしなさいよ」等の攻撃を仕掛けてくる里奈を適度に無視しつつ、ある程度を読み終えた。


「里奈」


「何よ」


「これはダメだ」


「は?なんでよ!友達がこれはおすすめ!って言ってたのよ!」


 あんたちゃんと読んだの!?とか、適当言ってるんじゃないでしょうね!とかすげえ怒りだした。

 なので、こいつにもちゃんとわかるように簡単に説明する事に。


「金」


「お金?何よそれ」


「ワールドプレスをやるには、レンタルサーバー代金とかが掛かる」


「へ?」


 つまりだ、ワールドプレスは、里奈の友人が言うようにかなり高機能で、それなのに簡単操作で扱える優れものだというのはわかった。

 だがこれを使うには、ブログやホームページをインターネットに置く場所を「自前」で用意しなきゃいけない。

 ファイブドアのレンタルサービスは、この場所代も無料なんだ。

 その代わり、広告なんかが表示されるらしい。


「毎月のレンタルサーバー代金を、姉貴が払っても良いって言うなら、全部無料のファイブドアを諦めて、このワールドプレスにするけど、どうする?」


「やっぱ、お金を掛けてブログするって言ったら、ギルドのみんなが気を遣うわよね!」


「おい、SEOとか検索結果はどうした?」


「そんな事より、ギルドのみんなの気持ちの方が大切に決まってるでしょ」


「・・・」


 そういうわけで、我が「自由同盟」のブログはファイブドアブログで作ることに決定した。

 ただ一応、ギルドの皆にもそれでいいか聞いておかなきゃな。



「そういうわけで、ファイブドアの無料ブログを使って、ギルドの公式ブログを作ろうと考えてるんですけど」


 次の日、俺は早速ギルドのメンバーに、ギルドサイトの話をしていた。

 まあ、自分でやりもしないのに口出してくる奴も、俺の姉貴以外にはいないと思うが、一応確認はしとかないとね。


「僕はダーク君に任せた以上、特に口出す気は無いよ。アイデアを一緒に考えたりは出来ると思うけどね」


 これは団長だ。


「私もダーク部長に一切をお任せします!」


「誰が部長じゃ!」


 今のは明海さんだ。部長ってなんだよ部長って!


「私も先輩が作るのなら、とくに反対意見はありません」


 これは燈色。


「えーなに面白そう~。私も手伝って良い?」


 これは千隼さん。


 なんかこうして見ると、それぞれの性格が反応に現れてて、ちょっと面白いな。


「おいちょっと待てよ!」


 しかし、そこに割って入ったのはライデンこと火雷利久だ。


ダーク「なんだよ」


ライデン「なんだそのギルドサイトって?俺、全然聞いてねーぞ!」


ダーク「あれ?この前いなかったっけ?」


ライデン「初耳だよ!」


 あれ、そうだったっけか?いやでも、別にこいつに言う必要ない気もするが。

 けど後でうるさそうなので、とりあえず説明してやることにする。


ライデン「へ~、それでギルドのホームページを作ることになったのか」


ダーク「おう。で、無料のブログサイトをレンタルして始めようってなったんだ」


ライデン「で、なんでお前が作ることになってんの?」


 なんでだろうなあ。俺も理由が知りたい。


ダーク「なんかなりゆきで」


ライデン「はあ?お前がやりたくてやってるんじゃねーのかよ」


ダーク「つーか、なんだよさっきから!何か文句あんのかよ」


 なんでこいつは、さっきからつっかかるような言い方するんだ。


ライデン「俺がやる」


ダーク「へ?」


ライデン「だーかーらー、俺がやるって言ってんの」


ダーク「ホントに?」


ライデン「ホントに」


ダーク「どーぞどーぞ」


 俺がそうPC画面に向かって打ち込むと、ドタドタドタと走る音が聞こえてきて、俺の部屋のドアがばーんと音を立てて開いた。


「おい姉貴!おまえなんつードアの開け方するんだ・・・よ?」


 開いたドアの向こうには姉貴が立っていた。


 鬼のような形相で・・・。


 やべえ、なんか凄く怒ってらっしゃる・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る