第9話 ほーむぺーじ

「え?ライデンさん、ヨーチューブチャンネル作ったんですか?」


「そうなんすよー!スターさんも見に来てくださいよ!」


 深淵しんえんの森地下2階のとある一室では、我がギルドの戦士であり俺の友人でもある火雷利久からいりく(ライデン)が、BMAギルドのスターさんと、利久が開設したヨーチューブチャンネルの事で盛り上がっていた。


 今日もいつものメンバー、俺、姉貴、ヒイロ、千隼さん、ライデンの5人で狩りに来てたんだ。

 そしたら偶然、BMAのスターナイトさんとトリックスターさん、そしてNEOさんの3人と遭遇したんだ。


 3人はレベルが近い事もあって、よく一緒に狩りに出かけるらしい。


「じゃあ後で見に行きますね!」


「ホントに!?やった!」


 スターさんの言葉に利久の奴、めちゃくちゃ喜んでるなあ。


「そういえば、スターさんもブログやってたんですよね」


 以前、スターさん本人からブログをやっているって話を聞いたのを思い出した俺は、ブログの事を聞いてみた。

 後でURLとブログタイトルを聞いておこうと思いながら、すっかり忘れてたんだよな。


「え?そうなの?」


「はい!ぜひ僕のブログにも遊びに来てくださいよ!メール送っときますよ!」


 利久にも聞かれたスターさんは、どうやらメールでURLとブログタイトルを知らせてくれるらしい。

 こりゃあ後で遊びに行ってみるかな。


「それにしても凄いよねみんな。私なんか、動画やブログのネタなんか、全然思い浮かばないよー」


 そんな事を千隼さんが言い出した。


「まあ、俺も動画ネタでは、毎日頭を悩ませてますからね!」


 その言葉にどや顔で答える利久。


 いやいや、千隼さんが本気でゲームをプレイしたら、つまりシャイニングマスターで狩りしたら、それこそ膨大なアクセスを稼げる気がするわ。

 はっきり言って、利久の動画の100倍以上のアクセスはあるんじゃね?


 まあでも、動画やブログのネタが無いって話には同意する。

 俺のブラックアースライフなんか、みんなで狩り行ってたまに要塞戦やって、後はほとんど友達と話してばっかだよ。

 ネタにすらならんわ。


 ブラックアースでブログや動画をやってる人の多くは、要塞戦をやっているギルドの人が多い気がする。

 彼らは、より強くなるために、レアアイテムを出す敵のとこへ狩りに行く事が多い。

 そういう狩場ってのは、一般のギルドでは中々行くことが出来ない場所も多いので、物珍しさや、後々の勉強の為の需要もあるみたいだ。


 また中には、ゲーム内でのイベントを頻繁におこなっていて、その様子を動画やブログでレポートするパターンもある。

 後は狩りでゲットした超レア装備の紹介や、ガチャで獲得した珍しいファッションのお披露目をやってる人もいるんだ。

 まあ、そんな激戦区に、何のネタも準備もないまま特攻した利久はすげえと本気で関心はしている。


 たださ、やはり利久がアップロードした動画、姉貴と利久の漫才が収録されている奴な。

 ああいうのはサプライズ性が重要なので、何度も同じパターンをやられると、見てる方も飽きてくるんだよね。

 実際、あれから似たような動画を何本かアップロードしたんだが、見事に右肩下がりとなっている。

 しかも最近は、動画を撮っている事を先に宣言しているので、姉貴も撮られてるとわかっている状況では、なんかこう、やりにくいらしく、利久への突っ込みにもいつものキレは無かった。


 その結果うちの姉貴は、「もっと激しく罵ってくださいよ!」と、利久から言われ、「あんた何言ってるのよ!この変態!」とリアルで激しく利久を罵っていたんだがな。




 その夜、スターさんから教えてもらったブログを見るために、俺と姉貴はPCの前に並んで座っていた。

 まあこういうのは、誰かと一緒に見た方が面白いからね。

 できれば彼女と一緒にとかが良かったな。


「ん?なんか言った?」


「何も言ってないよ!」


「大きな声出さなくても聞こえるわよ!馬鹿じゃないの・・・」


 びっくりしたー!

 一瞬、俺の心の声を読んだのかと思って、焦ったじゃねーか・・・。

 普段無茶苦茶鈍感なくせに、こういう時だけは鋭いんだよな。


「それよりも、ブログ見てみようぜ」


「それもそうね」


 とりあえず教えてもらったブログタイトルを検索する事に。


「スターナイトのブラックアース日記・・・っと」


 教えてもらったタイトルは、結構ストレートなものだった。

 なんかスターさんらしいと言えばらしいタイトルかもな。


 そんな事を考えつつ、モニターに映し出されたブログに目を向けた。


「な、なにこれ・・・?」


 思わず姉貴が、そんな言葉を口に出した。

 しかし気持ちはわかるぜ。俺も「なんじゃこりゃ!」って思ったもん。


 一体、スターさんのブログの何に俺達が驚いたかを説明しよう。


 スターナイトのブラックアース日記とあったんで、俺達はてっきりただの日記ブログだと思てたんだ。

 そしたら、日記だけじゃなく、色んなコンテンツが山盛りだったんだよ。


 ・自己紹介

 ・ブラックアース日記

 ・カシオペアサーバー要塞戦データ

 ・BMAギルド紹介

 ・ブラックアースの今後のアップデート

 ・ワールド内のボス出現予想時刻一覧

 ・戦士職の序盤~中盤の育て方考察

 ・リンク集


 これだけのコンテンツが用意されていた。


 要塞戦データってのは、サーバーのどこかで要塞戦があったその週の週末に、その結果と要塞所持ギルドを、なんかのPCソフトを使ってきちんとした表で掲載しているんだ。


 ブラックアースの今後のアップデートは、公式サイトで発表されている今後のアップデートの予定を、自分の予想も交えながら掲載している。


 特に俺が目を引いたのが、戦士職の育て方だったなあ。

 キャラを作った瞬間から何をすればいいのかを詳細に書いており、これを見れば序盤から中盤の育て方で迷う事は無いように見えた。

 俺が始めた時に、こんなブログがある事を知っていれば・・・と思わずにいられないような丁寧な説明だった。


「すげえなこれ・・・」


「ほんと、誰かさんのいきあたりばったりの動画とは大違いね」


 まあ、誰かさんとは誰かさんの事だろう。

 利久の名誉の為に、ここはあえて誰とは言わないでおこう、うん。


「ねえ見てこれ!」


 姉貴が急にページ内の一角を指さして俺を呼んだ。


「なんだよ・・・おおっ!」


 そこには、


「現在ギルドの公式サイトを製作中」


 との一文が書かれていた。


「これいいわね!ギルドのホームページ!」


「だなあ!自由同盟って無かったっけ?」


「ホームページどころか、みんなツイッターもやってないわよ。ラインだけかな?」


 そういえば、ギルドの誰かがツイッターをやってるって話、全く聞いた事が無いな。

 利久も、ヨーチューブチャンネルをきっかけに、ツイッター始めたって言ってたからなあ。

 そういえば、利久のツイッターアカウントが悲しい事になっていたなあ。

 俺もアカウント作ってフォローしといてやるか。

 まあ、俺のアカウントも悲しい事になりそうだが・・・。


「団長に言ってみましょうよ!」


「ホームページ?」


「そう!」


「ああ、いいかもな!」


「でしょ?明日にでも提案してみるわ」


 そういうわけで、明日ゲームにログインした時に、団長に姉貴から提案してみることにした。




団長「え?ホームページ?」


エリナ「そう!ホームページ!良いと思わない?」


 次の日、早速姉貴は団長に「自由同盟」のホームページについて提案していた。

 とりあえずスターさんのブログを見せて、こんな感じの自由同盟のホームページがあったら良いんじゃないか?って言ってみたんだ。

 まあ、余程の事が無い限り反対される案件ではないと思う。


団長「なるほどねえ。うーん、ホームページねえ・・・」


 ところが、俺と姉貴の予想に反して、団長の反応はあまり良いものでは無かった。

 あれえ?ギルドのホームページだよ?何か悩むところなんかあったっけ?


ダーク「えっと、団長はあまり賛成ではない感じですか?」


 あまり遠回しに聞いても仕方ないので、ストレートに聞いてみた。


団長「いや、反対ではないんだけどさあ・・・」


エリナ「何かひっかかるようなとこある?」


 姉貴も団長俺と同じことを聞いていた。

 だよなあ。この内容で悩むところなんかないよな。


団長「えっとね、実は一つだけ重大な懸念けねん事項があるんだけど・・・」


ダーク「え!?懸念事項ですか!?」


エリナ「どんな懸念事項よ?」


 重大な懸念事項ってなんだ?

 ギルドホームページ作るだけで懸念事項?なんだそれ?


団長「あのね・・・」


 俺と姉貴は団長の次の言葉を待つ。


団長「誰がそのホームページ作るのかな~って・・・」


ダーク「あ・・・」


エリナ「あー」


 ホームページを作るって言う事だけを考えていたせいか、誰が作るかなんて全く考えてなかったよ。


団長「あ!僕はダメだからね!ただでさ最近忙しいから、ホームページ何て作ってたら、ゲームする時間無くなっちゃう!」


 団長は俺達が何か言いだす前に念を押してきた。団長に作ってもらおうと思ったのに、なんでばれた。

 しかし考えてみれば、スターさんが作ってるからと簡単に考えていたが、ブログやホームページを作るのにも、それなりの知識や労力がいるんだよな。

 なーんも考えてなかったわ。

 

 まあでも、出来ないものは仕方ないし、無理に作る必要はねーか・・・。


エリナ「ダークが作ればいいじゃない」


ダーク「・・・は?」

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