第2話 現実社会での問題だからね
次の日。
例の自由同盟オフ会からちょうど1週間が経った。
今日は週末という事で、
最近は月に1度くらいはうちに泊まりに来てるんじゃないか?
ホント、仲良いよなあいつら。
「お邪魔します」
そんな事を考えながらリビングでお茶を飲みながら新聞を読んでいると、燈色がやってきたようだ。
「先輩、今日もお世話になるね」
こいつは
自由同盟のギルドメンバーで、職業は「奇術師」。そして俺の高校の1個下の後輩だ。
そして今日も黒と白のシマシマのニーソとひらひらふわふわファッションで、ひとつ間違えるとコスプレか何かになってしまいそうな服装だ。
「よ。まあ、俺が世話するわけjyおhふぉf!」
「あらあらあら~燈色ちゃんいらっしゃ~い」
俺が燈色に返事をしようとすると途中でお袋が俺を押しのけて会話に割って入って来やがった。
「ど、どうもお邪魔します!」
燈色は、うちのお袋の勢い明らかににびびっていた。
と言うか燈色は基本、押しの強い人間が苦手なんだよな。
典型的な空気読まない系のうちのお袋は、それは燈色にとっては天敵みたいなもんだろう。
しかしうちのお袋は燈色の事を大変気に入っている。
気に入っているというか、若い女の子が来ると、興味津々で話しかけに行くんだ。
「あらー、今日のお洋服も可愛いわねえ」
そう言いながら、写真を撮りまくるうちのお袋。
燈色の奴、めっちゃ泣きそうな顔で俺の方をちら見して助けを求めてる。
本来なら、普段クールな燈色が慌てふためいている様子をニヤニヤしながら静観したい所なんだが、ほおっておくと俺にまで被害が及ぶ事が過去の事例から判明しているので、助け船を出すことにする。
「あ、そういえば燈色、姉貴に用事あったんだっけ?」
「あ、う、うん!」
俺の言葉に「こくこくこく」と凄い勢いで頷く。
「あら?真司とデートじゃなかったの?」
こ、このババアあああああああああああああああああああああ!
せっかく俺に被害が来ないように早めに手を打ったのに、台無しじゃねーか!
「んなわけあるか!燈色、このおばさんはほっといていいから」
「まあ!お母さんに向かって何て口の利き方するの!ちょっとここに座りなさい!」
そして俺は、燈色を無事脱出させることに成功した。
小一時間にも及ぶお袋の説教と引き換えに。
「あんたお母さんに怒られたんだって?www」
俺がお袋から解放されて自分の部屋へ戻ってくると、何故か姉貴と燈色が俺のベッドに座っており、開口一番姉貴にそんな事を言われた。
「先輩ごめん・・・」
逆に燈色の方は申し訳なさそうに謝って来た。
「いやいや、あれは完全にお袋が悪いから気にするな。と言うか、俺の部屋で何やってんの?」
さも、それが当たり前かの如く、俺のベッドに座り足と腕を組んでえらそうにしている
「あんたを待ってたに決まってるでしょ?」
何当たり前のこと聞いてるのよ?馬鹿なの?
とか、余計なことまで付け加えてきたので、、一瞬怒りのボルテージが急上昇しかけたが、どうせ言っても無駄なので余計な抵抗はしない事にした。
大体、俺が姉貴のベッドに座ってたりしたら、烈火のごとく怒り出す癖に。
理不尽極まりないぜ。
「待ってたって、どういう事?」
「えっとね、うーんと、あー・・・」
「なんだよ?ちゃんと言えよ」
「わかってるわよ!今それを考えてるんでしょ!デリカシーが無いわね!乙女のセンシティブな感情くらい察しなさいよ!」
なーにが乙女でセンシティブだよ!そんな奴が自分で自分の事をセンシティブとか言うわけねー!
なんか、里奈に聞いてもらちが明かなそうなので、燈色に聞いてみることにする。
「で、何なの?」
自分を差し置いて燈色に聞きだしたからか、一瞬だけ里奈の顔が不機嫌になったが、自分からは言い難い事らしく、文句を言われたりはしなかった。
「実は・・・」
燈色が言うには、ここ1週間ほど姉貴はゲームにログインしていない。
原因もあれだったし、なので、ギルド内の雰囲気なんかが気になっているらしい。
で、ギルドの雰囲気や皆の反応を俺から聞きたかったらしい。
里奈の奴一応色々気にしてたのね。
だったら最初からそう言えばいいのに。
「まあ、みんな心配はしてたよ。理由も理由だしな」
「そう・・・だよね」
「と言うか、学校ではどうなんだ?その、谷崎先生だっけ?」
「ん?ああ、まあ、あの件には触れずに過ごしてる・・・。ちょっと気まずい感じはお互いしているけど・・・」
まあ、あれだけ仲が良かったと思ってた相手が、実は全くそりが合わない大学の先生と生徒だったわけだからね。
しかもお互いの不満を、知らなかったとは言え、当の本人に愚痴ってたわけで。
そりゃあ、気まずくもなるだろう。
「でも、それで嫌がらせとか受けてるわけじゃないんだろ?」
「そういう事をするタイプじゃないわね」
ゲーム内での雰囲気でしか俺は知らないけど、そんな嫌がらせをするタイプには俺も見えなかったんで、そこは安心か。
「先生も、ここ1週間ログインはしてないよ」
「そりゃ今忙しいもの」
「そうか」
とは言っても、今の調子じゃセンジンさん、つまり谷崎先生もログインはしにくいんじゃないだろうか?
「まあでも、落ち着いたら少しでいいからゲームにも顔出してみたら?」
「えー?でも、谷崎先生と鉢合わせたら、なんか気まずいし・・・」
「俺が先にログインして、先生が居ない事を確認して教えてやるよ」
「・・・ん、考えとく」
それだけ話し終えるとちょっとはすっきりしたのか、「邪魔したわね」と言いながら、自分の部屋へ燈色と共に去って行った。
ダーク「まあ、そういうわけでして、近々師匠も顔を出しにくるかもしれません」
団長「そっかー。ダーク君お疲れ様」
俺は今、この前の里奈とのやり取りを簡潔にギルドチャットで団長に伝えてたところだ。
もちろん姉弟ってとこは伏せてな。
燈色「いえ、私は特に何も」
まあ、燈色はかなり姉貴の為に頑張ってくれてたけどな。
燈色がほぼ毎日姉貴と話してくれてたおかげで、かなり里奈のストレスも軽減されていたと思う。
それにしても、燈色のタイピングスピードは、今や俺よりも速いかもしれん。
以前は普通の文章を打つのに、それこそカップラーメンが食えるほどじかん時間かかってたのにな。
まあ、それは良いとして。
とにかく、現状あまりよろしくない状況が続いている事は確かだ。
里奈の奴は、まあ気が向いたらログインすると言ってるので、顔を出すこともあるだろう。
しかしセンジンさんのほうはどうだろうか?
ほぼ自分の為に開かれたオフ会であんな事になって、ギルドに居づらくなったりしないだろうか?
幸い、センジンさんもログインしてくれるようになったとして、果たして以前みたいな雰囲気に戻れるだろうか?
あーもうわかんねー!どうすりゃいいんだよ・・・。
こういう時は、俺は素直に大人に頼ることにしているので、千隼さんにスカイポする事にする。
いや決して、ただ単に千隼さんと話せる口実を作ったわけじゃないぞ?ほんとだぞ?
俺がスカイポすると、割とすぐに千隼さんは出てくれた。
真司「突然すみません。実は・・・」
そう言って俺は、今現在の自分の心境と、これから俺はどうすればいいのか悩んでいる事を打ち明けた。
桐菜「なるほどねえ。真司君としては、なんとか打開策を見付けたいのね」
真司「はい」
そう返事すると、しばらくの間千隼さんが無言になった。
おそらく色々と考えてくれているのだと思う。
桐菜「あのね真司君」
真司「はい」
桐菜「例えばこれが真司君自身の問題だったりしたら、私も色々アドバイス出来ると思う」
真司「・・・はい」
桐菜「でもこれは、里奈ちゃんと谷崎さんの間の問題なんだ」
真司「はい、それはわかってます。ただ、自分にも何か出来ることがあるんじゃと考えてしまって」
桐菜「気持ちはわかるよ。でも、これは大学での講師と生徒の間の問題で、部外者の私達が安易に口を挟める状態じゃないと思うのよね」
真司「けど・・・」
桐菜「真司君の言いたいことはわかってるつもり。でも今は、静観するしか無いと思う。ただ・・・」
真司「・・・」
桐菜「里奈ちゃんが真司君に愚痴ったりしてきたら、ちゃんと話を聞いてあげて。それだけで全然気分が違うと思うから」
そっかあ、そうだな。
ゲーム内での出来事だったら、以前の実明さんの時みたいに、みんなで考えたりも出来るけど、これは現実世界での問題だからなあ。
それに、俺のような高校生の先生と生徒という関係とは違うのかもしれない。
真司「わかりました。そうしてみます」
俺は「ふう」と深呼吸してから桐菜さんにそう答えた。
桐菜「うん!きっと里奈ちゃんも真司君に話を聞いてもらいたいと思ってるよ」
真司「そうかもですね。千隼さ・・・じゃなかった桐菜さんありがとうございました」
桐菜「いえいえ。悩める少年の相談に乗るのもお姉さんの務めなんだからねっ」
真司「ははっ、なんすかそれ」
そう言って、千隼さんとのスカイポは終了した。
やっぱ相談して良かったかも。俺の独断で行動してたら、ろくな事にならなかった可能性が高い。
俺今度、改めて千隼さんにお礼をしとこうと思ったよ。
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