第31話 ローザ要塞戦
ブラックアウトが所有する「ローザ要塞」に、自由同盟とBMA、それにお兄ちゃん大好き!を加えた3ギルドで攻め込む事が決まり、開戦1時間前。俺たちは、お兄ちゃん大好きが所有するカルニスク要塞へと集まっていた。要塞内なら、第三者から見られることなく集合する事が可能だからだ。
勝てる可能性がめちゃくちゃ低いとはいえ、決して勝利を
そういえば今日、久々にスターナイトさんに会ったんだが、かなり
スターナイト「ダーク先輩、どうしよう・・・」
ダーク「え?何?どうしたのスターさん?」
スターナイト「ダーク先輩も聞いてると思いますが、うちのリーダー、実は女の子だったじゃないですか?」
ダーク「あーうん、そうだね。やっぱショックだった?」
スターナイト「いや、そうじゃなくてですね」
ダーク「うん?えっとじゃあ、どうしたんですか?」
スターナイト「実はですね、うちのギルド、男も女も、結構な下ネタ好きって言うか、下ネタがギルドチャットで普通に展開されるんですが・・・」
ダーク「うん?」
スターナイト「それで、実はリーダーがすっごい大人しそうな女性だったわけで。それで今後、ギルドチャットをどういう感じで盛り上げていけば良いのか、みんなわからなくなったと言いますか」
ダーク「・・・」
スターナイト「あの、どうすれば良いと思います?」
ダーク「知らんわ!」
スターナイト「ええ!一緒に考えてくださいよ~。僕も散々桜さんに下ネタ振っちゃった手前、どう接すればいいのかわかんないんですよー」
一体どんな悩みで憔悴しているかと思えば、すげえ下らない理由でこっちが脱力したわ!そもそもうちのギルドは、ほとんど下ネタが無いんだよ。俺も姉貴も下ネタ言わないしな。そんなこと言われてもわからん。
まあでも、思っていたほどの悪い影響っつーか、性別を偽っていた事への影響のような事は無かったようだ。まあ、グラマン・・・じゃなくて桜さんのギルドは大人が多いらしいし、現実に比べりゃこんくらいどうってこと無いのかもな。
そんなスターさんとのやり取りをなんとなく思い出していると、里奈からスカイポの着信が届いた。
真司「なんだー」
里奈「いやあ、何度見てもあれがグラマンと同じ人物とは思えないわね!」
姉貴の奴、今日何度聞いたかわからないセリフをわざわざスカイポで伝えに来たようだ。まあでも、あいつが言う事もわかるけどね。
グラマンが実は女の子でしたーって話を俺から聞いて知っていた里奈は、実明さんから直接説明を受ける時に、何も聞いてないふりをするって言ってたんだ。けど、あいつ嘘が下手だから、自分でもうまくごまかせるかすげえ不安だったみたいなんだよ。そして、その時はやって来た。
桜マスター「エリナさん、今まで男だと偽っていて申し訳ありませんでした。色々と思う所もあるとは思いますが、これからもBMA、そして私と、末永くお付き合い頂けないでしょうか?」
エリナ「( ゚д゚)ポカーン」
いや、まさにこんな状態だった。わかってるのに「本当にこれがグラマン!?」って、半信半疑だったからなあ。だってあのグラマンだった人が、会議でも余計な事はほとんど何も話さず、黙って人の話を聞く役に徹してるんだぜ?ホントに中の人同じかよ!って俺も思っちゃったもん。
真司「まあ、正直言うと、俺もあまり慣れてない」
里奈「そりゃそうよね」
真司「まあでも・・・」
里奈「何よ?」
真司「これ全部、姉貴のおかげだわ。ありがとな」
里奈「ちょ!えっと、急にそんな改めてお礼を言われると、こっちも困るって言うか・・・」
まあ、この部屋の壁の向こう側では、顔真っ赤にして照れてる姉貴が居るんだろう。ホントは直接礼を言いたいところだが、それは俺もはずい・・・。
そんな会話を姉貴としていると、今度は燈色からスカイポの着信が来る。なので、俺と姉貴のグループに招待した。
燈色「なんですかあれは!?」
真司「デスヨネー」
燈色「あの、中世の騎士気取りのナル男の中身が、実はあんな大人しい女の子だったとか、設定としてあり得ません!」
真司「お前ホントひどいな」
燈色「今後あの男・・・じゃなくて、あの女とどう接すればいいんですか・・・」
真司「いや、知らんし」
団長「それじゃみんな自分の役割確認お願いね!桜さんの合図と共にローザ要塞へジャンプするからね!」
3人でスカイプで話していると、団長からの時間を要塞戦の時間が近づいているよっていうチャットが見えた。そして今回の要塞戦のメインギルドのリーダーである「桜マスター」からの挨拶が始まった。
桜マスター「今回、皆さんと縁あって、この3ギルド合同でブラックアウトと戦う事になりました。多くは望みません。狙うはだた一つ、勝利のみです!」
一瞬の静寂の後、大歓声・・・まあ文字なんだけど、わあああああああああっ!という文字でチャット欄が埋め尽くされる。そして、要塞戦の始まりを告げるファンファーレが鳴り響く。
団長「みんな飛んで!」
団長の声とほぼ同時に、みんなが一斉にローザ要塞へとジャンプした。俺達「自由/BMA」ギルドのメンバーは、回復役、つまりエリナやお兄ちゃんLOVE達の護衛となる。なので、ローザ要塞へ着くと同時に、エリナ達の周りを囲むように配置に着く。これで、不意打ちによる攻撃はなくなるはずだ。
ふと、メインで攻める利香達のギルドを見ると、すでに門内部へと侵入を果たしていた。いや、あいつらが強いのは知ってたけど、味方視点で見ると、さらに凄いと思うわ。
でも、それよりも強いのがブラックアウトなんだよなあ。そう思いながら、門の方を見る。門には、お兄ちゃんLOVEの戦士達が列を作って押し寄せている。これは、ローザ要塞での戦いでは見慣れた光景となっている。
ローザ要塞が強固なのは、ブラックアウトが強いってのはもちろんだが、城内に侵入する為の門が一つしか無いのが主な理由となっている。他の城は最低二つは門があるので、人員をそれぞれの門へ割り振らなければいけないんだ。
ところがローザでは、すべての防衛の為の人員を、一つの門へと集中して配備できる。ブラックアウトが数を増やさず、少数精鋭の道を選んだのは、所持している要塞が「ローザ」だった事が大きいんじゃないかな。
逆にシャイニングナイトは、二つの門を持つ「カドリナ要塞」と3つの門を持つ「深淵の要塞を所持していることからもわかるように、人員の拡大に力を入れている。
全く正反対のやり方なのに、どっちもサーバーで1,2を争うギルドと呼ばれているんだから面白いよな。
さて、そんなローザ要塞の門への攻めなんだけど、今回はいつもと違うやり方を試していたらしい。屈強な戦士達に混じって弓兵も前線へと投入したんだ。
普段弓兵は、戦士の後方から援護射撃を行うんだけど、ローザのように門が一つしか無い超難関な要塞門の場合、弓兵も一緒に突撃する事がかなり有効なんだ。城壁に隠れている相手の回復役を弓兵で攻撃できるからね。そうすることで、相手の回復のターゲットを複数に分散して、前線へのヒールを遅らせることが出来る。
そして実際に、今回の攻撃方法はかなり有効だったらしい。らしいと言うのは、後でエバーラングからそう聞いたから。この時は回復役の援護をしていたから、俺は門の内部まではわからなかったんだよな。
そして、ブラックアウトを混乱させた要因がもうひとつ。それは、シャイニングマスターの存在だ。
今回は、「千隼」ではなく「シャイニングマスター」として指揮を執っていたので、いやでも相手の目に入るわけだ。で、シャイニングマスターの名前は、ブラックアウトのような要塞戦大手のギルドだったら誰でも知ってるわけで、「なんでシャイニングマスターが!?」「引退したんじゃねーの!?」みたいなチャットで、ギルドチャットが溢れていたらしい。
そしてそれは、サーバー全員が見れるサーバーチャットも同じで、誰かの「シャイニングマスターがいるぞ!」みたいな発言と同時に、「まじかよ!?」みたいな発言が流れ出し、それ以降、大量の見学者がローザ要塞に詰めかけた。すげえぜ千隼さん。
まあでも、例え千隼さんのネームバリューが幾ら凄かろうが、俺達の実力にそれが反映されて強くなるわけもなく、俺たちはブラックアウトに完敗した。
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