第13話 グラマンの異変?
今日は、お兄ちゃん大好き!ギルドが所持する「カルニスク要塞」への再度の挑戦の日だ。この日に備えて、グラマン率いるBMAでは、コボルト要塞にて、戦闘中でも平常心を保つための特訓をしていたらしい。
対プレイヤー戦の訓練という事なら、コボルト要塞はうってつけだと思う。毎回乱戦になるので、対人戦の経験だけは豊富に積むことが出来る。
BMAは、前回のデビュー戦から今までの間に、何度もコボルト要塞で修行していたらしいので、そこら辺は期待していいかも。勝てるって意味じゃなく、形になるって意味でね。
あ、そうそう。今回はちゃんと、ブラックアウトの黒乃さんやエバーにも要塞戦のことは伝えたんだ。そしたらすげえ喜んで「必ず見学にいかせてもらう」と言っていたなあ。
あ、でも、お兄ちゃんLOVEさんに見学席を手配してもらう案は却下になった。
「ブラックアウトのレベル100プレイヤーである黒乃さんが、わざわざ見学申し込みに来るって事は、どっかのギルドが攻めて来る可能性があるって言ってるようなもんじゃねーの?」
とは、エバーラングの言葉である。それは全くもってその通りなので、仕方なく一般見学席で見学する運びとなった。なので今日は、前回の要塞戦みたいな、情けない戦いだけは絶対しない!
と、思ってはいるんだけど、今日は今日で、ちょっと気がかりな事があるんだよなあ。
エリナ「はあ、それにしても、今日は絶対MPを切らさないように気をつけなきゃ」
エリナ「グラマンのギルドも、かなり修行してたって聞いたわよ」
グラマン「・・・・・」
エリナ「グラマン?」
グラマン「・・・・」
エリナ「ちょっとグラマン!返事しないさいよ!」
グラマン「はっ!も、申し訳ない!ちょっと考え事をしておりました・・・」
エリナ「ちょっとあんた大丈夫なの?」
グラマン「何をおっしゃられますか!このグラマン、本日の要塞戦で死力を尽くす覚悟でございます!」
エリナ「いや、そう言う事じゃなくてね・・・」
要塞戦前に、皆で集合してから何度似たような場面に遭遇したことか。最初は
俺もさすがに気になって、プライベートメッセージで聞いてみたんだけど、「大丈夫です!ちょっと考え事をしていました。すみません」と返事が返ってきたんだ。
人の呼びかけにも気付かないほどの考え事って一体何なんだ?めっちゃ気になるんですけど・・・。
パッパラー!パラララララ~パッパッラー!
そんな事をやってたら、いつの間にか要塞戦スタートのファンファーレが鳴り響いてきた。今日はBMAのメンバーが自由同盟に一時的に加入して、自由同盟として戦う事になっている。
団長「じゃあ、今日も思い切り楽しんでいこうね!」
全員「おー!」
千隼「皆、カルニスク要塞の新門へとみんな飛んで!」
千隼さんの言葉で、全員が新門へとジャンプする。カルニスクへとジャンプすると同時に、剣士は門内部へと一気に突入。今回は2回目という事もあって、かなりスムーズに門へと突入出来たと思う。
俺は前から3列目へと並んだ。この場所だと、剣も槍も届かないので、念のために持ってきた、剣士でも使える片手用クロスボウを装備した。はっきり言って攻撃力は大した事は無いんだけど、何も無いよりはましだろう。
と言うかこれ、里奈の案なんだけどね。前回の要塞戦で、後方に居るときに手持ち無沙汰にしてた俺を見て考えてくれてたみたい。しかも、アイテム所持数が30%増加するリングも貸してくれたので、弓矢もどっさり持つことが出来た。
後、前回の戦いでは、魔法使いからの魔法攻撃で大ダメージを食らってしまったので、今回は安物ではあるけど、魔法抵抗力のある装備を持ってきた。まあ、無いよりはマシ的な装備だけどね。
さて、カルニスクに攻め出してからそろそろ30分程経過したが、やっぱり守りが堅く、攻め落とせる感じが全くしない。
ダーク「千隼さん、そろそろじゃない?」
千隼「そうね、別働隊、裏門へ飛んで!」
千隼さんの号令と共に、予め決まっていたメンバーが全員、カルニスクの裏門へとジャンプする。もちろん陽動の為だ。メンバーは、俺と燈色とスターナイトさんとNEOさんとグラマンを含む10名ほど。
里奈の奴は主力のヒーラーなので、正門に付きっきりだ。あいつのヒールが無いと、正門はかなりきついだろうからなあ。てかあいつ、この前のレベルアップボーナス、またINTに振り込んだらしい。もちろん、回復量とMP回復のスピードアップの為だ。
俺はと言えば、レベルはあまり上がってはいない。装備の方は、里奈や千隼さん達と狩りに出かけているおかげか、そこそこお金も溜まって装備も買うことが出来始めている。けどやっぱ、レベル上がらないと根本的な解決にはならないよなあ。
そんな事を考えながら、俺はふと、あることに気がついた。
ダーク「あれ?グラマンどこ行った?」
スターナイト「そういえば、さっきから見かけませんね」
ダーク「おーい、グラマンどこ行った?」
俺はギルドチャットでグラマンに呼びかけてみた。
グラマン「む?私ならここにいるぞ」
ダーク「どこ?」
グラマン「どこって、正門を攻めているに決まっているだろう」
千隼「ちょっとグラン、あなたは裏門に陽動に行ってるはずでしょ?」
グラマン「・・・は?」
ダーク「ほら、要塞戦前に、陽動作戦にさんかするメンバーとして、グラマンも決まってたじゃん」
グラマン「あ!もしかして、すでに陽動へ行かれてるのですか!?」
スターナイト「そうですよマスター!早く来て下さい!」
グラマン「も、申し訳ない!今すぐ参ります!」
おいおいおい、大丈夫かよ実明さん。これが緊張してて、千隼さんの号令を聞いてなかったとかならまだいいんだけど、今日は一日なんか変だったからなあ。やはり、なんか悩みとかあるんじゃないのか?
遅れてきたグラマンも参加した陽動作戦だったが、効果があったのは本当に最初だけで、すぐに相手は落ち着いてしまった。
そして、そのまま俺達は時間いっぱい攻め続けたが、カルニスク要塞を落とすことはできずに、要塞戦終了のファンファーレがその場に鳴り響いた。
団長「いやあ、どうもお疲れ様でした!色々と勉強になります」
お兄ちゃんLOVE「いえいえ~、こちらこそ楽しい1時間でした。前回よりとってもスムーズな立ち上がりでびっくりしました」
団長「本当に?いやあ、そう言ってもらえると嬉しいなあ」
団長とお兄ちゃんLOVEさんは、要塞戦後の挨拶を交わしていた。門周辺の色んな所で、お互いの健闘を称え合う挨拶を皆が交わしている。
そんな中、俺を含めて千隼さんやBMAのギルドメンバーは、グラマンの様子がおかしい事を心配して、グラマンの周りに集まっていた。
千隼「ちょっとグラン、あなた本当に大丈夫なの?」
NEO「マスター大丈夫ですか?」
グラマン「いや、本当に申し訳ない!少しぼーっとしてただけなんだ。反省している」
いや、ぼけーっとしてるだけなら逆にそっちのほうが良いんだけどさ。どう考えても、悩み事を抱えてるような雰囲気みたいなものを感じるんだよねえ。みんなそう思ってるからこそ、こうやって
「ダーク君」
俺達がグラマンの周りに集まっていると、後ろの方から声が聞こえてきた。
ダーク「黒乃さん」
そうだった、今日は黒乃さんが見学してたんだった。うわー、黒乃さんの眼にはどう映ったんだろうなあ、今日の俺達の戦いぶり。
ダーク「ははっ、黒乃さんにそう言われると自信になりますね」
黒乃「それと千隼さんだったか、今日の指揮は見事だったよ。さすが元シャイニングナイトなだけはある。うちに欲しいくらいだ」
千隼「あら、ブラックアウトの人にそう言われると、ちょっと照れちゃうかもw」
そんな話をみんなでしていると、急に周囲がざわつき始めるのを感じた。
「おい、あれ黒乃水言じゃね?」
「え?ブラックアウトのレベル100の?」
「え?まじかよ」
なんて声が聞こえてくる。
黒乃水言「む、私はそろそろ引き上げたほうがいいかな」
ダーク「ですねえ。周囲がざわざわし始めましたし」
黒乃水言「そうだな。ではまたな、ダーク君に千隼さん。今度はローザの見学にも来てくれたまえ」
ダーク「ぜひ!」
千隼「お伺いしますね」
そう返事をすると、黒乃さんはテレポートの巻物を使ったんだろう。その場から姿を消してしまった。
スターナイト「ダーク先輩!」
急にスターさんが大きな声で俺を呼んだので、めちゃくちゃびっくりした。
スターナイト「今の人、サーバーに3人しか居ないっていうレベル100の人ですよね!?」
ダーク「あ、うん。黒乃さんはブラックアウトの剣士で、レベル100プレイヤーの人ですね」
スター「そんな人と知り合いだなんて・・・。先輩マジパネーっす!」
ひいい!スターさんの中で、俺の株価が勝手にまた上昇したようだ。俺自身は、本当に大したことない平凡なプレイヤーなんだけどなあ。周りは凄い奴いっぱいるけどね!
しかしそれよりも、今の俺には気になることがあった。さっき黒乃さんが来ていた時、実明さん、黒乃さんの事をじーっと見てたんだよなあ。この前は、お兄ちゃんLOVEさんに執着してたし、一体何が実明さんに起こってるんだろう?
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