第32話 ちょっと待ったあああああ!
突如俺の家に泊まる!と宣言した
もちろん
お袋から好きな食べものある?って聞かれて、「は、はひっ」とか声が裏返ってたし、学校では真司と仲良くしてくれてるようだねってオヤジから言われて、俺と姉貴を交互になんども振り返りながら「えっと、あの・・」等とかなりテンパってた。
最近分かった事だが、燈色は基本人見知りなんだが、人と接するのが嫌いなわけではないようだ。苦手ではあるみたいだけどな。なので人とは接するんだけど、接し方がわからないのですぐにキョドってしまう。
そのキョドり方があまりにも可愛いので、わざと助け舟を出さずにニヤニヤしていたわけだが、なんか姉貴の機嫌が段々悪くなってきた気がしたので、「あー、そろそろ部屋でゲームでもしようぜ」等とわざとらしいセリフを喋りながら、席を立つことにした。
「じゃあ私達も部屋にいきましょうか?」
俺のセリフに便乗した里奈に、燈色のやつ物凄い勢いで顔を縦に振ってやがったな。しかし誰よりも「待ってました!」とばかりに勢い良く席を立ったのが利公だ。
「えーもう部屋に戻るの?仕方ねえなあ。」
などと言いながらめっちゃ笑顔だ。こいつマジで里奈と燈色と楽しくお喋りすることだけを考えて今ココにいるんだろうなあ。
そう考えながら階段を登り2階の廊下を歩き、俺の部屋の前まで来た。
「じゃあな、姉貴、燈色。あんま夜更かしすんなよ」
「あんたに言われたくないわよ」
「先輩おやすみなさい」
そう
「なんだよ!なんでだよ!女子会楽しみにしてたのに、なんでお前の部屋で男二人なんだよ!」
「ここが俺の部屋だからだ。見てわからんの?」
「そういうことを言ってんじゃねーんだよ!」
そして、今日利公が何故俺の部屋に泊まろうとしたか、何故今行動を起こさなきゃいけないのかを熱く語り出す。
「いいか?この壁を一つ
「いや、たぶん待ってないぞ」
「あーやだやだやだ!普段から年上の女と一緒にいることに慣れてる奴は、ときめきってものを忘れてるね!」
「お前さ、自分がいつも年上の女に気にかけられてるの気づいてないの?」
俺のその一言に利公は「え!?」って顔をする。
「誰?誰だよ!もったいぶってないで教えろよ!」
「俺さ、この前・・・・」
俺はが一呼吸置くと、利公のやつはゴクリと唾を飲み込み俺の次の言葉を待つ。
「お前の母ちゃんに、「利公と仲良くしてやってね」って念を押されたぞ。良い母ちゃんじゃねーか」
「ふざけんな!俺のわくわくとドキドキを返せやぼけが!」
俺は嘘は言ってないな、うん。
「だから最初から言ってただろ?女子会なんかしねーぞって。お前が勝手に盛りあがってただけだ。」
「で、でもさ、普通はこういう時って、みんなで集まって、なんかこう話とかするもんじゃねーの?」
「それは、最初からそのつもりで集まってたらな。今日はお前が勝手に泊まる宣言しただけだろうが」
こいつは今日自分が泊まることになった
「別に里奈の部屋に行くのは俺は止めないよ?でもな、行ったらしばらく俺ん家を出禁になる覚悟はしといたほうがいいぜ。」
「へ?」
「今日はさ、姉貴と燈色でやることがあるから燈色は泊まりにきたんだよ。さっき飯の時に里奈が言ってたろ?キーボードがどうとかって。だから、途中から勝手に泊まることにしたお前が邪魔をしようものなら、里奈のやつ怒るだろうなあ」
実際にはそんなには怒らんだろうけど、せっかく里奈にもリアルで一緒にゲーム出来るような友達が出来たんだ。邪魔するのは
それにさ、以前のオフ会の時のこと、燈色と俺達が
「はあ。せっかく隣の部屋には女子二人がいると言うのに・・・」
「まあ今日は諦めて大人しく寝るか、ゲームでもやってろよ」
俺がそう言うと、利公の奴は勝手に俺のPCを立ち上げ始める。おい、俺の絶対に開いてはいけないフォルダーを探すつもりじゃないだろうな。あれを見られた日には・・・、まあ、こいつにはいいのか。燈色と里奈には死んでも見せられん。
「お前、めっちゃ良いPC持ってんな。」
そう言いながら利公が起動させたのは「ザ・ブラックアース」だ。どうやら俺の部屋で、俺のPCを使って自分のアカウントで遊ぶらしい。まあ良いんだけどね。それより、ギルドのメンバーは、こいつの事を果たして覚えているのだろうか?
あれ?俺、何か大切な事忘れてる気がする。何だろう?うーん、思い出せん。
エリナ「それで今、燈色にゲーミングキーボードの使い方を教えてあげてるの」
利公がログインすると、ちょうど里奈のやつがギルドチャットをやってる所だった。どうやら、隣の部屋では順調に周辺機器の説明が行われているらしい。
ライデン「こんばんはー!おひさです!」
ライデンって言うのは、利公のゲーム内での名前だ。こいつの職業は俺と同じ剣士だ。でも、2ヶ月くらいで遊ぶのをやめてるので、レベルは12くらいで止まったままだ。
団長「おお!ライデン君久しぶりじゃない。どうしたの急に?」
ライデン「いえ、今友達ん家からログインしてるんすよー」
千隼「そういえばエリナちゃん、ダーク君と恋人申請の為の指輪の登録は終わったの?」
団長「あ、そうなんだ」
ライデン「え?ダークってあのダークマスター?え?あいつエリナさんと恋人なの?」
「お前ゲーム内で恋人作ったのかよ!リアルでは姉ちゃんと後輩といちゃいちゃしてくるくせに、ゲームでもリア充とか呪われろ!」
俺がゲーム内で付き合ってるのは、お前もよく知ってる俺の姉ちゃんだけどな。
しかしこいつ器用なことするよな。俺、チャットしながら喋ったりするのすげえ苦手なんだよ。スカイポしながらだとチャットが止まってしまうもん。
エリナ「指輪の事すっかり忘れてた!あ、ライデンさんお久しぶりです」
ライデン「あ、こんばんは!実は俺、そのダークの家からログインしてるんすよ!でもあれ?エリナさん、さっき、燈色さんて人にキーボードの事教えてるって言ってました?」
利公のチャットが、映しだされるや否や、ガタン!ドタドタ!ガチャ!ドタドタドタ!っと舎人の部屋からイスが倒れる音と、廊下を走ってくる音が聞こえてきた。そして俺の部屋のドアが勢い良く開けられる!
「ちょっと待ったあああああああああああああ!」
そして里奈がそう叫びながら俺の部屋に入ってきた。
「な、なんすか?」
すっげえびっくり顔で利公が里奈に話しかけた。てか、俺もビビったわ!
勢い良く入ってきた割には、その後に続く言葉が出てこない里奈。何やら真剣に考え事をしている。こいつ何しにきたの?
「ちょっと真司、こっちの部屋来て」
そう言って里奈は、俺の腕を取って強引に歩き出しやがった。
「まてまてまて!なんだよ急にすげえ剣幕で来たかと思ったら、わけわかんねーよ」
「理由は後で話すからとりあえず来なさい!」
「あ、じゃあ俺も!」
「あんたは留守番!」
「なんで真司だけなんすか!不公平っす!」
はりきって里奈の部屋に行くためにイスを降りていた利公は、力の限りの抗議を里奈に行っている。いや、お前そこまでして女子二人の部屋に行きたいのか・・・。
「とにかくあんたはそこに居る事!あとチャット禁止!」
「へ?」
里奈からのチャット禁止令に、俺は「?」な表情で利公の方を見た。あいつも俺と同じく頭の上に「?」マークを浮かべてぽかーんとしている。さっきから里奈の行動の基準が全くわからん。いや、普段もよくわからん奴だけどな。
部屋に入ると、燈色がパジャマ姿で、机の横の予備の椅子に座っていた。姉貴以外のパジャマ姿とか、子供の頃依頼に見たけど、うむ、今なら利公の気持ちがよくわかる。女子会バンザイ!
「あんた何でここに呼ばれたかわかってるんでしょうね?」
おぉぉぉぉぉ、チョーこええ顔で睨んでるぜ俺を・・・。
「いや、全くわからんぞ」
だって、利公と一緒にブラックアースやってたら、急に里奈が来て、俺を無理やり自分の部屋まで引きずって来て、で、今ここに居るわけなんだが。
「先輩、利公先輩は「エリナ」さんが里奈さんだって知ってるんですか?」
「いや、あいつは俺と一緒にゲームを始めたけど、2ヶ月くらいでやめてるから知らないと思う」
「だとするとですね、利公先輩に里奈さんと先輩が「ゲーム内で付き合ってる」事がばれるだけでなく、ギルドの人達にダークさんとエリナさんが実の姉弟だってばれる可能性が僅かながらあると思うんです」
そういう事ですよね?と燈色は里奈に話しかける。
「燈色の言うとおりよ!あんた何あいつにゲームさせてんのよ!バカじゃないの?」
ああ!そういや利公の奴、俺の姉貴がブラックアースしてることも、俺と里奈がゲーム内で付き合ってるふりをしてることも全く知らないんだよ。
と、言う事は、何も知らないあいつが、俺ん家に「燈色」って言うゲーム内の「燈色」と同姓同名の奴が泊まりに来てることとか、こっちでも里奈が燈色にキーボードの事教えてるとかギルドチャットでペラペラ喋ってたら、ダークとエリナが姉弟って事を察する奴が出てきてもおかしくなかった。
この前のオフ会で、エリナ=里奈って知ってる人も多いし、もし利公が「ダークの姉ちゃん里奈って言うんですけど~」みたいな話をしてたらと思うと・・・。
俺は美少女二人にジト目を向けられながら、嫌な汗が額に流れるのを感じていた(汗)
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