第27話 どういう事!?
「ごめんなさい・・・」
チャット画面に映し出された里奈の打ち込んだ文字は、そりゃあ思い切り小さく見えたね!
昨日、クリスタルの塔で、シャイニングナイトの奴らとの
ギルドチャットのみんなのログを見た時の里奈の顔は、そりゃあもう冷や汗ダラダラで、俺に向かって「どどど、どうしよう!」とか、どもりながら聞いてきたくらいだ。
ここは素直にごめんなさいしとけという、俺の助言を珍しく素直に聞き入れて、みんなに謝ってたいたところだ。
ただ、状況が状況だったので、ほとんどのギルドメンバーは俺たちに同情してくれているのが救いかな。いきなり何の根拠もなしにメインチャットでチート扱いだからな。そりゃ頭に来るっつーの。
団長「まあでも、ああいう相手は、
エリナ「・・・すみませんでした」
あーもう、あいつの文字がすっげえ小さく見えるなこれ。たぶん自分の部屋で、毛布かぶって背中を丸めてキーボード打ってるんだぜ。
団長「うーん、そうだよねえ。モンスターにヒールはちょっとねえ」
なんか、千隼さんに聞いたところによると、要塞戦に参加しているライバルギルド同士では、相手の邪魔したりとかはけっこうあるそうなんだ。けどうちは要塞戦なんか参加してないし、大体、シャイニングナイトとは規模も違い過ぎる。これは単なる嫌がらせでしかない。
千隼「団長、これはギルド間での話し合いをしたほうがいいかも」
団長「そうだねえ。段々エスカレートしていってるもんねえ」
そうなんだよ。まだ2回しかあいつらとは遭遇してないけど、モンスターにヒールだぜ?今後ほっといたら何しでかすかわかんねーよ。
しかし、昨日グラマンから聞いた話だと、どうもシャイニングナイトは、ちょっとくらいのトラブルだと放置の傾向があるって事だからなあ。
ダーク「でもあいつら、話し合いに応じますかね?」
団長「そうなんだよね。この前も結局向こうのマスターとは連絡付かなかったし」
グラマンも言ってたもんな。大抵は幹部どまりだって。けど、今回の件に関しては、俺としては絶対に許せない。
エリナ「はい!」
それまで、借りて来た猫のように大人しくしていた里奈が急にチャットで発言した。なんか、嫌な予感がする。
団長「はい、エリナちゃん」
エリナ「私も話し合いに参加したいです!」
なんと、さっきあれだけの事をやらかしておいて、話し合いに参加させろとか言ってきやがりましたようちの姉君は!さっきの過熱ぶりを見ているとこいつの参加だけは阻止せねばと強く思ってしまう。
ダーク「却下です」
エリナ「なんでダークが決めるのよ!」
ダーク「師匠、さっきの師匠のメインチャットでの発言を思い出してください」
エリナ「うぅ・・・。」
さっきのこいつのヒートアップぶりを見て、それでも里奈を話し合いのテーブルに着かせようという勇者は、たぶんこのギルドにはいないだろう。俺はもう弟として恥ずかしいよ。
そんな事を考えていると、里奈からスカイポの着信が来た。
真司「なんだよ」
里奈「あんた何余計な事言ってんのよ!」
真司「よけーじゃねーよ。俺は自由同盟の名誉のために発言したんだ」
里奈「なんで名誉と関係あるのよ!?」
真司「お前が話し合いの場でも暴走したら洒落になんねーつってんの!」
俺と里奈が、自由同盟場外乱闘戦を繰り広げていると、今度は燈色からスカイポの着信が届く。
真司「どした?」
燈色「先輩、断固阻止です」
ぶほっ!こいつ、里奈が絶対俺に文句言ってると踏んでるんだろうなあ。そこまであいつの事をわかってくれてると思うと、笑っていいやら悲しいやら・・・。
真司「おう!自由同盟の名誉は俺が守る」
燈色「先輩ふぁいと」
まあでも、俺は燈色に力強く答えてやった。そして団長からの「今回はやめておこうね」という一声で、里奈の話し合いへの不参加が決定したのだった。
もちろんこの後、めちゃくちゃ里奈から
そして翌々日。
俺と団長と千隼さんは、俺たちがギルド会議という名の
前回、どうやっても幹部止まりでギルドマスターまで連絡できなかったのだが、今回の話し合いには何故か参加するようだ。
「あんた、今日はビシッと言ってやるのよ!わかってるんでしょうね?」
俺の後ろから里奈のそんな声が聞こえて来た。
今日の話し合いには里奈の奴は参加できない事になったので、ゲームにはログインせず、俺の後ろから成り行きを見守るつもりらしい。もう、なんだったら俺からキーボードを奪い取ってでも一言言わなきゃ気が済まない的なオーラを背中にビシビシ感じるぜ・・・。
「なんかドキドキしますね」
それと燈色も姉貴の友人と言う体で家に来ている。姉貴の友人なのに俺と同じ高校の制服で、俺とも親し気に話しているのを見たお袋のにやけた視線が若干気になるが。
とか考えていると、グラマンが入ってきた。
グラマンには、一応、今日の夕方から話し合いを行うことは伝えたんだ。そしたら自分も参加する!って言い出して。それはでも、こっちでは決められないから、シャイニングナイトの方に許可を得てくれつったんだけど。どうやら、許可をもらったようだな。
グラマンの奴、いつもみたいに「やあ、黒を征する者よ!」とか言いながら入って来なかったな。まあ、話し合いの内容が内容だし、あいつも空気を読んだって事か。てか空気読めたのかあいつ・・・。
グラマン「聞こえているぞ!」
ダーク「あれ?もしかして口に出してた?」
俺のそんな疑問にうんうんと頷く団長と千隼さん。すげえな俺。グラマン限定で思ったことをチャットで打ってしまうとは・・・。
燈色「先輩何やってるんですか・・・」
燈色と姉貴にジト目で見られたのでこの辺りで冗談はやめておこう。いや、俺もこんな事やりたかったわけじゃないんだけど、あまりにも空気が重すぎてさ、耐えられなくなったんだよ。
俺がそんな馬鹿なことをやっていると、誰かが部屋に入ってきた。確かあいつは、昨日、俺たちの妨害をやっていた奴の一人、確か「
いや、わかってはいたんだ。団長からも聞いてたしね。
シャイニングナイトのギルドマスター「ワールドマスター」が、サーバーでも3人しか居ないレベル100プレイヤーの中の一人だってことは。
レベル100になると、レベル100プレイヤーだけが装備できる変身リングをもらえる。見た目のカッコよさもあるが、攻撃性能が1.25倍に増加するのが最大の特徴だ。
燈色「おお、あれがレベル100プレイヤーですか・・・ごくり」
燈色が俺の後ろでそんな事を言っている。そういえばレベル100プレイヤーを見るのは初めてとか言ってたもんな。俺だって遠巻きに見たことがあるだけで、身近な奴にレベル100の奴がいるわけじゃないしね。
シャイニングナイトのギルドマスターは、空いている席に適当に座り、挨拶をする。
「どうも初めまして。シャイニングナイトのマスター「ワールドマスター」と言います」
そして続けてこう言った。
「久しぶりだねシャイン。いや、今は千隼だったね」
その言葉に、俺と里奈と燈色は3人で顔を突き合わせて
「どういう事?」
と、目を点にして言ったのだった。
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