第26話 煽っていくスタイル?
シャイニングナイトの奴らからの、俺たちが戦ってるモンスターへのヒールはずっと続いている。
俺はあいつらにもっと文句を言ってやりたかったんだけど、里奈の奴が「考えがある」って言うから黙って黙々とクリスタルの塔の中ボス「エレメントクリスタル」に攻撃していた。
こいつのHPバーがある程度まで減ると、シャイニングナイトの奴らからのヒールで回復、と言う状態がしばらくの間続いていた。里奈の奴は、あれっきり何のアクションも起こしていない。
「師匠、いつまでこんな事続けりゃいいわけ?」
俺は我慢できずに里奈に向かって質問した。あ、俺、ゲーム内で里奈の事を呼ぶときは「師匠」って呼んでるんだ。まさか「里奈」とか「姉貴」とは言えないからな。
「うーん、もうそろそろかな~」
「そろそろって、何が?」
そんなやり取りの直後だった。それまで一定量まで減ると回復していたHPバーが、ほとんど回復しなくなってきたんだ。
「おい!これどういう事だよ!」
「知らねーよ!」
シャイニングナイトの奴らのほうを見ると、何やら揉めてるようだった。これが里奈が言ってた「考えがある」って事か?いや、全然わかんねーんだけど。
奴らからの妨害ヒールが無くなったエレメントクリスタルは、1分も経たずに俺たちに倒された。そしてなんと、
≪クリスタルリングを獲得しました≫
クリスタルリング、ゲットだぜ!
クリスタルリングとは、全てのステータス異常、例えば「毒」とか「麻痺」とか、そういうステータス異常の魔法や罠をすべて防いでくれるリングだ。お値段なんと、俺が今付けている装備が2セットほど買えます。
もちろん4人で割るので、売ったお金全部もらえるわけじゃないけど、それでもかなりの収入だ。燈色なんか、一気に装備が充実しそうだよな。
そして俺はちらっと、シャイニングナイトの奴らの方を見る。
クリスタルリングをゲットしたとか知ったらめちゃくちゃ悔しがるだろうなあ。もしかしたら、「そんなもの、いつものギルドハントで見飽きたぜ」とか強がるかもしれん。PCの前で顔を真っ赤にしながらなwww
まあ、いたずらに相手を
「やったあ!クリスタルリングゲットしたわよお!てへっ♪」
俺がそんな事を考えていると、里奈の奴の、明らかに相手を煽るようなチャットの文字が見えた。
「ちょっと!師匠何やってんの!?」
「え?ドロップの報告だけど?」
「いやいやいや、なんでそんな相手を煽るような事やるのさ!?」
「はあ?先にやりだしたのあいつらでしょうが!今頃絶対PCの前で顔真っ赤にしてるわよwww」
ヤバイ、一瞬でもこいつと同じことを考えてた自分が恥ずかしい!しかしこれ、シャイニングナイトのやつらどういう反応するんだろうなあ。あいつらめっちゃキレるんじゃねーの?
「ふん!そんな物、俺らはいっつもギルドハントで見慣れてるんだよ!」
こいつら・・・。あまりにもお約束な負け犬のなんたらみたいな返答が返ってきたんで、涙でそうになっちゃったよ。
しかし俺は知っている。あいつらの装備が俺となんら変わらないと言う事を。だって、さっきこっそりステータス見させてもらったもんね。クリスタルリングを見慣れてるくらいゲットしてるなら、今頃その装備はないわ。
あ、もしかしたらこいつら、シャイニングナイトの中でも下っ端の方なのかもしれないな。そう思うとちょっとかわいそうになってきたな。けど、モンスターへのヒールは許さん。
「もう、エリナちゃんったら~」
「クヒヒ、言ってやった言ってやったw」
「エリナさん、グッジョブです」
パーティーチャットでは、女性陣が楽しそうにチャットをしていた。まあ、実を言うと、俺もちょっとはすっきりしたんだけどな。だってあり得ねーよ、モンスターへのヒールとかさ。
【
俺が女性陣のチャットをみながらそんな事を考えていた時だった。カシオペアサーバーで遊んでいる人全員に見える「メインチャット」にその文字が映し出されたのは。
エリナ「は?」
ダーク「へ?」
一瞬何をされたのかわからなかったが、すぐにシャイニングナイトの「刹那」って奴の発言だと気付く。
エリナ「ちょっとあんた何やってんのよ!」
同じく、メインチャットでの刹那の発言に我に返った里奈が猛抗議を始めた。いやそりゃそうだろう。いきなり何の根拠もなくあんな事を言われたら、そりゃあ腹も立つ。
刹那「ふざけてんのはそっちだろうが!チートなんかしやがって!」
チートってのは、本来ゲーム内には無い、不正なツールやプログラムを使って、早い話が「ずる」をすることを指す。刹那の奴、一体何を根拠にチートか言ってるんだよ・・・。
「こっちはヒーラーが二人もいるんだぞ!なのになんでそっちのエリナとか言うやつのMPより、俺たちのMPの方が先に無くなるんだよ!」
ああ!そういう事か!
さっきさ、中ボスと戦ってる時に、急にシャイニングナイトの奴らからの妨害ヒールが無くなったんだけど、あれ、あいつらのヒーラー達のMPが無くなったんだわ。
でもおかしいぞ?ヒールを使ってた回数は、絶対里奈の方が多かったんだよ。だって、ボス相手に戦ってたわけだからね。なのに里奈のMPは無くならなかった。しかもシャイニングナイトの奴らはヒーラー二人だ。あいつら二人分のMPより里奈のMPの方が格段に多いって事か?
エリナ「なんでこんな
そしてこいつはまた煽るような事を言う・・・。
刹那「お前馬鹿にしてんのかよ!」
エリナ「それ以外に何があるのよ?」
おいおいおいおい!もうやめとけ、まじやめとけ!俺のお姉さまは、何かあるとすぐテンパったりきょどったりするんだけど、最終的には「ブチ切れる」んだよ。
【刹那:チート行為をしてるのは自由同盟のエリナというキャラです。至急調査願います】
おわあああ!こいつまたメインチャットしやがった!だめだ!このままここに居てはいけない気がする!
団長「ちょっと大丈夫?何かトラブった?」
ギルドチャットで団長が尋ねて来た。まあ、2回もあんなチャットやられたらねえ。
ダーク「すみません、ちょっと色々ありまして・・・」
俺がそうキーボードに打ち込んでる時だった。
【エリナ:私はチートなんかやってないわよ!あんた達の装備がヘボイんでしょうが!】
おぉぉぉぉぉ、やりやがった。里奈の奴、完全に頭に血が上ってるらしい。メインチャットでやり返しやがった。お前が顔真っ赤にしてどうすんだ・・・。
ダーク「千隼さん、戻りましょう!収集が付かなくなってる」
千隼「そうね、一旦引き上げましょう」
燈色「らじゃ」
ダーク「団長すみません、後で説明します」
団長「ほいほい」
しかし、里奈には俺たちの帰りますよチャットは全く見えていないようで、メインチャットでいまだに舌戦を繰り広げている。なので俺は最終手段を使う事にする。
「こいつ本当に生意気ね!大体あんなへぼ装備で何をえらそうに!」
部屋に入ると、PCモニターを前にシャイニングナイトの奴らに向かって大きな声で一人で文句を言っている里奈の姿があった。
スパコーン!
里奈の頭から中々響きの良い音が聞こえた。うん、やっぱスリッパで殴ると良い音するわ。
里奈「何すんのよ!」
真司「何すんのよじゃねーよ!ギルドチャット見てみろ!」
俺がそう促すと、里奈の奴はしぶしぶPCモニターに視線を移した。
里奈「あ・・・」
そこでは、現在ログインしているメンバーの「ほぼ全員」が、エリナに向かって「落ち着いてー」とか「帰還してー」などと打ち込んでいた。
里奈「ど、どうしよう。やっちゃった・・・」
ダーク「とりあえず、謝っとけ」
俺がそういうと、こいつにしては珍しく素直にこくんと頷くのであった。冷や汗をだらだらと流しながら。
それにしても、結局なんで里奈のMPは尽きなかったんだ?
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