第20話 俺と姉貴と微少女と
せっかく
黒部家の俺の部屋の中は、さっきとは違う空気で静けさが
「なあ、姉貴・・・」
「あんたは黙ってて!」
すげえはっきり言われた。
里奈の奴、こんな事をずーっと引きずる奴じゃないと思うんだけど、なんか考えでもあんのか?
「古名燈色、あんたさ、私に会いに来て言うことはそれだけ?」
ええええええええ!?なんかガラの悪いヤンキーみたいな事言い出しましたようちの姉様は!
「お前、どっかのヤンキーかよ・・・」
「あ、あんたは黙ってなさい!」
ちょっと
「あのね?あんたが私に直接会って一番言いたかったのは「ごめんなさい」だけなのか?って聞いてるの」
「あ・・・」
あ、ああ!そういうことか!
里奈の奴、まったく言い回しが回りくどいんだよ。燈色も最初は何の事だか判ってなかったみたいだけど、途中で気付いて「はっ」とした顔になってたな。
今は、姉貴に謝罪する時よりも緊張した顔になってやがる。でもな、たぶん大丈夫だと思うよ俺は。だって、姉貴のやつ、謝罪よりも「その言葉」を聞きたかったから、ダメ出ししたんだろうからな。
そして今度こそ古名燈色は、一番伝えたかった言葉を口に出して言ったんだ。
次の日、俺達はいつもの狩場「
今日の夕方、姉貴と燈色がログインすると、その場に居た全員が二人との再開を喜んでいた。二人っつーか主に姉貴だけどな。まあそれは仕方ない。
ただこの日一番皆を驚かせたのは、燈色が放った一言だろう。
「あの、今新しいクラスのキャラを作ってるんで、良かったらで良いんですけど、LVが上がったらギルドハントに連れてってもらってもいいですか?」
そりゃあみんなびっくりしてたよ。あの、何人とも馴れ合わない一匹
明海さんなんか「燈色ちゃんどうしたの?何か悪いものでも食べたの?」とか失礼極まりない事を言ってた。
「また一緒に狩りに連れて行って下さい!」
姉貴に一番言いたかったことは何かと聞かれて燈色が選んだ言葉がそれだった。謝罪の言葉ももちろん本心だけど、一番に言いたいことはそれじゃなかったんだ。
思えば長い道のりだったよな。この言葉を伝えたいだけなのに、オフ会の帰り道以降、えらい遠回りしちゃったよ。
けど、その言葉を聞いた姉貴のやつ、なんかちょっと苦笑いしてるんだよなあ。あれ?そんな場面だっけ?
「うーん、それもいいんだけどさ。例えばこんなのどう?
「私と友達になって下さい」
とかね!」
姉貴の言葉に、俺も燈色も一瞬時間が止まったね。姉貴・・・俺を泣かす気かお前・・。
さすがの俺も、感動でちょっと涙出そうになっちゃったよ・・・。燈色の奴はめっちゃ顔をクシャクシャにしてたな。
燈色の願いはオンライン上だけの関係で完結するものなんだけど、姉貴のは一歩踏み込んで、実生活にも適用される言葉だからなあ。燈色もその言葉の意味を理解しているんだろう。顔真っ赤にして泣いてやがる。
「後、私にそれ言えたんだからギルドメンバーにも言っちゃいなさい。千隼とか、あんたの事心配してたんだから」
「ああ確かに、あの人お前のこと気にかけてたぞ。」
燈色は、自分の中の感情をどう表現して良いのかわからなかったのだろう。まだ涙が完全に止まって無い状態で、あたふたとしている。
「一緒に狩りに連れて行って下さい」って言えばOKよ。と姉貴に言われ、それを今日実行したんだ。
あ、それと燈色は今、新しいクラスのキャラを作ってるんだが、これも姉貴から「あんた僧侶じゃなくて、「
奇術師は、例えば、仲間の防御力を短時間100%
姉貴に言わせれば、燈色の場合受け身の僧侶より、
幸い燈色の僧侶LVは低いので、これから新キャラを作っても問題ないだろう。それに、パーティーバランスがよくなるのも利点だった。
「これから3人で狩りに行くことが多くなるだろうしね!」
と、すげえ照れながら言ってたのが、まあ微笑ましかったな。そんな姉貴を俺がニヤニヤしながら見ていると、
「べ、別に、私が行きたいわけじゃないんだからねっ!どうしてもって言うから仕方なくなんだからねっ!」
とか、どっかのツンデレお嬢様のテンプレセリフみたいな事を言い出しやがった。いや、俺にツンデレされてもどうすりゃいいのかわかんねーよ。
そういうわけで、今日から改めて3人で・・・と思ったら、千隼さんが「ダーク君ばっかりずるい!私も連れてって!」と、何と、メインキャラの僧侶ではバランス悪いからと、新たに武術家のキャラを作成して、俺達のパーティーに参加したんだ。なので4人で深淵の森へ来てる。
何に対して俺がずるいのかは全くわからんけど、とにかく彼女も一緒に遊びたかったらしい。俺が前のめり気味に賛成すると、里奈と燈色から冷ややかな眼差しを送られた。
そういうわけで本当の意味で、俺と姉貴とギルド「自由同盟」に、色々と残念な部分も多いけど愛すべき所はもっと多い、微妙な美少女「古名燈色」が仲間として加わった。
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