第7話 二人が付き合う理由
「ちょっと真司、顔上げなさいよ!」
そう言って姉貴は慌てて俺の頭を上げさせる。そして周囲を見渡して、特に誰もこちらに気付いてないのを確認する。
「何やってんのよ!こんな光景見たら、みんなびっくりするじゃない・・・。」
ちょっとだけ
「いやでも、これ謝らなきゃダメだろ・・・。」
俺のせいでどれだけ今日のオフ会で里奈を混乱させたかを考えれば、あの泣きそうな顔とか思いだすとこれくらいじゃ全く返せてない気がする。あいつからすりゃ、覚えていて当然のはずの約束そのものも忘れてたんだからな。
で、思いっきり混乱し動揺している姉貴をよそに、俺ときたら調子こいて、団長やら明海さんやらと楽しくオフ会
「あのさ、俺なんでもするから、だから許してくんないか?」
これが今の俺に出来る精一杯の謝罪だった。あいつがゲームやめろって言えばやめるし、逆にレベル上げ手伝えって言えばほいほいついていくよ。言うとは思えんが、話しかけるなって言われたら、甘んじて受け入れます。
「だめか?」
返事がないので、そんくらいの謝罪じゃダメかと思ってたら
「なんでも・・するの?」
と、返事が帰ってきた。
「え?あ、うん。俺に出来る範囲でならなんでもやるよ」
実際そう思ってるし、なんでもする気満々だよ俺は。かなり寂しい思いもさせてたみたいだしな。
あれ?でもなんか、あいつの目がすげえ輝いてる気がする。今日何度目かの、俺の嫌な予感センサーがビンビンに反応してるんだけど・・・・。
「指輪買ったの・・・」
「・・・・ん?」
「指輪!レッドリング!」
いきなり指輪とか言うから何かと思ったが、どうやらゲーム内アイテムの「レッドリング」の事だったらしい。レッドリングとは、正式名称を「紅い指輪」と言い、ゲーム内で恋人申請をしたプレイヤー同士が、その証として装備するものだ。
俺と里奈、つまり「エリナ」と「ダーク」も、ゲーム内で恋人申請する気満々で、もうすぐレッドリング買おうねとか話してたんだよ。
今考えると、実の姉と恋人
「あれだろ?前言ってたリングだろ?」
それはわかるが、なんでこのタイミングで言うのか全くわからん。あれか?リング代返せってことか?それだったら、お安・・くは無いが全財産つぎ込んでもお返しますけどね。
「そう。二人分買ったから」
あーOKOK。二人分まとめて払いますよ。こんくらいで許してもらえるなら安いもんだよ。
「だから今度、二人で恋人申請にいくからね!」
おーけーおーk・・・・・・・・・・・・・・。
「はあああああああああああああああああああああああああ!?」
俺が思い切りでかい声だしたもんだから、部屋中の視線が俺に注がれた。
「えっと、何かあったの?」
心配した団長が声をかけに来てくれた。後で聞いたことだが、俺と里奈の様子が変だったので、一応ずっと気にかけてくれてたらしい。
「いえ、ちょっとびっくりさせる話を私がしちゃって」
間髪かんぱつ入れずに姉貴が団長に返答した。ええ、確かに度肝を抜かれるようなびっくりする話でした!
「そう?」
あまり問題ないのを見ると、団長は向こうへと戻っていった。部屋に再び喧騒が戻ってくる。本当は問題大有なんですよ団長!
「ちょっと!大きな声出さないでよ!」
「あほか!びっくりするに決まっとるわ!恋人申請するって言ったのかお前」
「そうよ!」
なんの気後れも無く胸を張って答える里奈。いやびっくりしたよ!姉貴に悪いことしたから、その償いも込めてなんでもするって言ったらとんでもない事言いやがった。
「お前、弟と恋人申請とかもしかして変態!?」
「は、はあ?ばっかじゃないの!誰があんたと付き合うもんですか!」
「いやいやいや、お前自分で何言ってるかわかってんの?」
こいつは一体何を言っとるんだ。恋人申請するのに付き合うわけではないとか意味わからんわ!
「あんた、レッドリングの機能知ってるの?」
あ、物凄いしょっぱい目で俺を見てる。もう、こいつからのまるでゴミでも見るかのような眼差しも慣れてきたな。不本意ながら。
「いや全然」
「そうじゃないかと思ったわよ。」
簡単に言うと、レッドリングには様々な機能が追加されていて、恋人申請したカップルだけが機能を使えるらしい。つまり、姉貴としてはその機能をぜひとも使いたいらしい。
「つまり、リングの機能を使うために付き合う振りをするってことか」
「そういうこと」
なるほどなあ。このリングの機能はとても便利で、お互いに離れた場所にいても一瞬でお互いの所へ飛んでいけたり出来るらしい。まあ、飛ぶの不可能な場所もあるみたいだけど。
けどなんでもするって、そんな事でいいんだろうか?俺は
「他に何ができるのよ」
って言われた。すんません特に何も出来ません。
「とにかく、私は今やってる回復系の職業を
確かに回復系のクラスは、単騎でのレベル上げは効率悪いからなあ。その点、俺は里奈との狩りには
「大体あんたも、黒を
「それを言うなあああああああああああああ!」
姉貴に言わせれば、これまでずっとダークと狩りしてて呼吸はぴったりだし、新たにパートナー見つけるのは面倒だと言うことらしい。
「それにあんた相手なら、変な気を使わずに済みそうだしね!」
遠慮無く文句言いまくる気満々だなこいつ・・・。でもまあ、最悪な事態にならなくて良かったよ。
あれ?でもちょっと待てよ。俺はある一つの疑問を里奈にぶつけてみる。
「なあ、俺達が姉弟だって事は公表せんの?」
「あんた馬鹿なの?そんな事言ったら、恋人申請とか恥ずかしくてできないでしょ!」
そっかあ?明海さんあたりから冷やかされるくらいで、結構みんな気にしないと思うけどな。まあでも、姉貴がそう言うなら俺は別に良いけどね。
しかし今度から、ギルドチャットとかで、どんな態度で「ダーク」として「エリナ」に接すればいいのか全くわからん。その事を姉貴に言うと、
「ああ、それならスカイポっていう無料ネット通話使えばいいでしょ」
と返事が帰ってきた。
つまり、チャットで会話がなくても「ああ、スカイポで話してるのか」ってギルドメンバーは思うはず、との事だ。エリナが里奈ってわかった以上、まあ、あいつもそうだと思うけど、前みたいな会話とか絶対無理だしなあ。
うわ、一瞬あいつとのの昔の会話を色々と思い出しちゃったよ。これは永久に俺の心の中にしまっておこう、うん。
そんな事を考えながらふと時計をみると20時を回ろうとしていた。俺の初めてのオフ会も、もう終わりかー。
まあ色々とあったけど、とりあえず解決できて良かった。なんだかんだ言っても、やっぱ来て良かったよ。姉貴とも仲直りできたしね。
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