第6話 姉貴が怒ってた理由
「去年の年末のこと覚えてない?」
里奈は、俺からの質問にちょっとだけやはり不満そうな顔をしたものの、今回はちゃんと答えてくれるらしい。てか、去年の年末?年末といえば、里奈のやつがセンター試験に向けて追い込み中だった記憶しかないんだけど。
「姉貴のセンター試験が迫ってた時・・・・か?」
「私の事じゃなくて、あんたの事よ」
オレのことだって?去年の
学校から帰宅・パズスト・ご飯・パズスト・風呂・パズスト・宿題・バズスト、って具合だったと思う。たぶん、一日の大半をあのゲームに
「いや、確かスマホゲームやってたと思うけど・・・」
それが、今日こいつが機嫌悪いことと何か関係あるとは思えんが。
「他には?」
「他?」
え?他に目立った事何かあったっけか?思い出せることといえば、あまりのパズスト好きすぎて、攻略ブログとか立ち上げたは良いが訪問者がほとんどおらず、挙げ句の果てには、「その攻略法、周回遅れも良いとこですよ」とブログのコメントで指摘されて、恥ずかしさのあまり即効でブログを削除した事くらいか?
あ!もしかしてあれか?姉貴が俺のベッドの下のエロDVD「超巨乳EカップOL!着衣でごめんなさい8時間スペシャル」を見つけて、あろうことかお袋の奴にちくりやがった事件があった!あの時の事は今でも許せねえ!
って、これは俺が許せない方だから違うよな?
「いや、ちょっと思い付かない・・・」
正確には思い付いたけど言いたくないんだけどな。てか言えるかあんなこと。あの後親からは「ちょっとEカップ、そこの茶碗取って」とか「宿題やったの?8時間くらいできるでしょ!」とか散々だったぜ・・。さらに姉貴の奴は、しばらくの間口を聞いてくれなかった。
まあとにかく、俺に思い当たる節ふしが無いことがわかると、姉貴は淡々と理由を話し始めた。
「去年、私、真司に「ザ・ブラックアース」で遊ぼうって誘ったんだよ?」
「へ?」
え?えー?いや、全く記憶にないぞ俺。
「えっと、悪い、ちょっと記憶に無いんだけど・・・」
「そりゃ真司、ずっとスマホばっかいじってたもん」
あー、それは記憶にあるな。
「で、私が大学受験終わったら一緒にやろうって言ったら、「OKOK!楽しみにしてる」って」
いやそれ全然記憶に無いです。
「それで、受験も終わって、何回も誘ったの。その度に「今ちょっと、パズストに忙しい」って!」
それは・・たぶん・・・言ったと思う。あの頃の俺はとにかくパズストに夢中だったから、他の事なんてあんまり目に入ってなかったなあ・・・。
「それに、スマホゲーム夢中になって、あんまり話してくれなくなったし・・・。」
「あっと、その、それは悪かったよ・・。」
「だから私もう諦めて、一人でゲームやってたんだけど、そしたらギルド内で気の合う人見つけて、それでずっと今まで楽しくゲームやってきて、今日のオフ会もすっごい楽しみにしてきたの」
なんか去年の俺の行動が目に浮かぶようだわ。とにかくスマホばっかりいじってたもんなあ。
「真司とはゲーム一緒に出来なかったけど、こればっかりは趣味を強制できないし仕方ないって思って。でも今日オフ会来たらあんたがいて・・・」
「うん・・・。」
「で、私が誘った時は来なかったくせに、なんでこのゲームやってるの!って、なんかこう、かーっとなって!」
「うん・・。」
「それで、自己紹介したら、あんたが「ダークマスター」だって。もう私頭の中ぐちゃぐちゃで・・・・」
あーつまりこういうことだった。
去年の暮れに、姉貴は俺をブラックアースに誘った。で、俺もわかったーって返事をしたらしい。スマホゲーで頭がいっぱいだったので、多分、空返事だ。
んで、受験が終わって、姉貴は約束通り俺とゲームをしようと誘いに来たけど、相変わらずスマホに夢中だった俺は約束の事なんか覚えてるはずもなく、今忙しいから無理だと断った上、おまけに姉貴の相手もあんまりしなくなった。
それが約半年くらい前。つまりこの半年、姉貴が俺と疎遠になったり機嫌悪かったりした理由はそこだったわけだ。
え?そんくらいで怒るの?って思うかもしれんが、弟大好きだったあいつが、試験終わったら一緒にゲーム出来ることを楽しみに試験勉強やってて、で、終わったら当の弟の俺がそんな事すっかり忘れてスマホゲーに夢中だったんだ。しかも、それに夢中で姉貴ともあんまり話さなくなった。
それでもまあ、趣味なんか人それぞれ違うからと無理やり納得してたら、なんと俺がブラックアースやってることが判明。そりゃキレますよね・・・。
そして
で、特にダークマスターとは仲が良かったんだ。当事者の俺が言ってるんだから間違いない・・・。そしてそのダークマスターの中の人が俺だった。
今思えばさ、里奈のやつ、ゲーム内でたまに弟の
「私ね?あんたが中3だった頃からゲーム始めたんだけど、3年生で受験だし今は誘えないなって。で、次の年は私が受験だったでしょ?だから2年間ずっと我慢してたの」
そういうと姉貴は、ちょっとしょんぼりした顔で下を向いた。
あーもう!俺最低じゃん!約束破って姉貴怒らせて、その上あいつが、このオフ会に来てからどんな気持ちでいたかなんて、全く考えてなかったわ。
何が「俺は我慢強いほうだ」だよ!俺が姉貴に色々我慢させてたんじゃねーか・・・。
あれだよ、もう俺に出来ることなんて、この場面では一つしか無い。なので俺は思い切り行動することにした。
「すまん!」
そう言って、俺は姉貴に頭を下げた。
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