第2話 まるくんをはじめて触る

生まれてから一週間ほど。

順調におっぱいを飲み、すくすく育つまるくん。

まだ名前を決めていなかった時期なので、こそこそ生まれた箱の中を覗きながら、どんな名前にしようかと家族と相談する。


「おっぱい一人占めで、たくさん飲めてるからお腹がまんまるだねぇ」


と、うちの母親が言う。

うん、これだ。


「名前さー、『まる』にしようよ。かわいいし」


わたしがまるっていう名前を提案する。

母親は呼びやすいかってことだけで名前を決めるので、あっさりと賛成してくれた。

一応家長の父親に名前の案を聞いてみたところ、


「ショコラ」


なんであの模様でショコラやねん!

それにショコラっていう外国な顔つきしてないやないか!

大体からして父親とかけ離れた名付けセンスに、家族全員で大受け。

ここはお産に立ち会った権限で『まる』という案を押し通すことにした。


シロちゃんが半日とちょっとぐらいの時間まるをほったらかしにし、箱からいなくなっていた。

若干気になっていたけど、なんとなくまるの元気がなくなっている感じに見えた。

子猫時はミルクの時間が開きすぎると、脱水症状を起こすので心配しつつ、シロちゃんの戻りを待つことに。

だけど、8時間経っても戻ってこずに、まるもくたっとしたまま。

そこでわたしは、スポイトを探し消毒したあと、ぬるいお湯をまるの口に垂らす。

少しだけどぺろぺろと水を舐めてくれた。

これがもう少し遅かったら手遅れだったんだろうな。

ちょん、とまるの頭をつついて、そっと置いておく。

それを何度か繰り返したあと、結局シロちゃんが戻ってきたのは一日後。

育児放棄のはじまりだった。

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