snow

こっとんすのう。

第1話


「あーーーーーー……暑い」

灼熱の地獄。

まさにその言葉がふさわしいと思う。

空から照りつける眩しい太陽。

まるでこの肌を焼くかのように。

蝉の声のおかげでさらに暑さは倍増。

迷惑な生き物だ。

そんな灼熱の地獄の中、俺は公園のベンチにただ1人で座っていた。

「あ、虚(うつろ)みーつけた!」

そういいながら俺に抱きついてくるのは青陵 詠龍(せいりょう うた)。

少し色素の薄い髪を胸のあたりまで伸ばした可愛い女の子だ。

詠龍は日本でも有名な名家の1つ、青陵の生まれだ。

齢10歳で次期当主にまでのぼりつめている。

「1人できたのか?」

「そうだぞ!偉いだろう!」

「偉いけど、あんまり1人で出歩くなよ。名家の次期当主の首を狙う奴もいるんだし」

「大丈夫だ!あ、みんなが呼んでいるぞ!朱ノ宮(あかのみや)の屋敷に集まってる!」

「そうか、なら急ごう」

手を繋いで少し歩くと、馬鹿でかい屋敷が現れた。

とてつもない大きさ。

金持ち、なんて言葉じゃ片付かないな。

「いつみてもご立派なお屋敷で…」

「早く行くぞ!」

強引に手を引かれ、屋敷へと足を踏み入れる。

長い長い廊下を抜けると、とてつもなく広いお座敷に到着した。

そこには右に男1人、左に男1人、そして中心には真っ黒な髪を腰まで伸ばした綺麗な少女の姿。

大和撫子、という言葉がぴったり。

「あ、虚!遅いぞ!」

白園 桜虎(しらぞの おうが)。

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