オープニングトーク

「ネネ」「フミの」

「「絨毯爆撃」」



 というタイトルコールが入って、収録が始まるキュー(合図)を水野Dがする。

 爆撃機なんて名前とは共通点のなさそうなカントリーなBGMをバックに、


「皆さんこんばんは、パーソナリティの『望月文』です」

「皆さんこんばんは、同じくパーソナリティの『日野音々』です。

『ネネフミの絨毯爆撃』第十回の放送がスタートします」


「さて、相方日野音々よ。この番組はどういう番組なんだい?」

「この番組は、リスナーの皆様の悩みを募集して千切っては投げ、破いては投げ、

時に悩みの理由や原因に爆撃をして解決していく、お悩み相談ラジオです」


「なお、お悩みが解決しなくても、苦情は一切受け付けませんのであしからず」

「逆に、感謝やお礼のメールは無限大に募集しております」


 恩着せがましい台本ですね。

 最初はもっとまともだったんですが、ふたりがこういう方向性なので第八回から変えたんですが。


「ところで相方よ、このラジオ『ネネフミの絨毯爆撃』ってタイトルなんだけど」

「今言った」

「ネネフミって確かに戦闘機っぽい名前だよね」

「いきなり何言ってるの?」


 僕もそう思って名づけました。


「いやだって、最近SFアニメにでてるんだけどね。

そういう名前の戦闘機とか戦車とか出てくるからさ」

「どう読んだってあたしたちの名前くっつけただけじゃない」


「もしかしたらアニメが進んでいくうちに『爆撃機ネネフミ』っていうのが出てきたりして、それでわたしと相方のキャラが操縦して敵の基地にぐぁーって攻撃して」

「いやラノベ原作のアニメでそんなことないでしょ」

「原作者さん! これ聞いてたら採用してください!」

「そもそも聞いてねーよ」


「漫画家さんやラノベ作家さんの間でこのラジオが話題になってるって聞いたよ」

「そんな方々も聞いているとは世も末だわ」


 この番組というか、このラジオ局の番組は業界のいろんな人が聞いています。

 漫画家やラノベ作家、声優さん、海外のサブカルファンからもたくさんの感想が寄せられています。


「何を言ってるんだ相方! 

 我ら日本の誇るアニラジの帝王『秋葉原電波放送局』略してA……

 電波って英語でなんていうの?」

「しらねーよ。あんたが言い出したんだろうが!」


 と勢いのツッコミ。その漫才みたいな動き、電波じゃ伝わりません。


「とにかく! 我々は日本のサブカルチャーの代表なのよ! 

 そんな意気込みもなしにどうやって世界に配信していくのよ! 

 一応ネットでも配信されてるのよこれ!」

「はいはいそうですねー」


「《カノッサ機関》だってこの番組をチェックしてるわよ」

「どこよそれ」

「ラ・ヨダソウ・スティアーナ」


 別れの言葉。特に意味は無い。


「日本語でOK」

「ああ、我が相方『ヒノネネ』よ。君はまだ目覚めていないというのか」

「変なイントネーションで呼ぶな、厨二病末期患者望月文」


「『ヒノネネ』って違うイントネーションで発音すると、コードネームみたい。

 相方って言い方もよりそれっぽいし」

「わたしは何の相方なのよ?」

「仕事の」

「ホントに仕事だけ?」

「他にどういう相方があるの?」


「女性の漫画家さんや小説家さんは旦那さんのことをそう呼ぶらしいよ。

 結婚してるけどそれを隠すための『旦那』の比喩表現らしい。

 あっ、作家のマーズが無茶苦茶反応してる」


 日野さんのそれ初めて聞きましたよ。


「その意図でいくと、音々が奥さんになるんだけど」

「いいんじゃない、流行ってるでしょう百合営業」


 流行ってるかどうかは分かりませんが、百合っぽいアニメが増えたのは確かです。


「営業ならいいけど、ガチに思われる可能性があるわ」

「なんで?」

「芸能界や美術、デザインの仕事をしてる人は多いらしよ」

「マジで? 文が漫画とBL漫画の読み過ぎでそう思ってるとかじゃない?」

「私がいつBL漫画を読んだよ?」

「読んでるんじゃないの?」


「読んでない。相方も、作家さんも意外そうな顔しない。

 っていうか相方は第六回の収録の後、わたしの部屋に来たでしょ! 

 本棚には出演した百合漫画はあっても、BL漫画は置いてなかったでしょ!」

「そうだったかしら~」

「とにかく私、望月文はノーマルです」

「日野音々もノーマルです、念のため」


「話がまとまったところで、本日もよろしくお願いします」

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