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二匹の金魚。クロとチビの水槽には、クレオの水槽とは違う水草を植えた。クレオの水槽に生えている水草はとても成長が早くて困っていたので、成長が遅い水草を選んでもらった。クロとチビを水槽に移した。金魚たちは性別すら分からない。餌は、大きいクロばかりが食べてしまった。上手に買えるだろうか。
やはり、丁度一週間になる頃にチビは死んでしまった。リアは悲しがって、また掬うと言うけれど、一匹しか飼う自信がなかった。クロだけでも長生きしてほしい。小さな命とは言え、チビの死は悲しかった。魚は食べるのも好きで、良く釜揚げしらすや刺身を食べたり、切身を煮付けたり焼いたりして食べているくせに勝手なものだと思った。
ため息と一緒に九月を迎えた。月末は給料日。月初の土曜日はソウがパチンコに行く。リアと私は久しぶりに図書館に出かけた。行きはソウが送ってくれた。ソウは昼前に迎えに来てくれるはずだった。電話に出ないソウ。お腹が空いたリアと一緒に図書館から近いカフェに行ってランチをとった。ソウからは連絡が来ない。私たちはプーさんとピーターラビットとバムとケロの絵本と、星座の本を借りて図書館を出た。九月になってもまだ暑かった。バス停まで歩いてバスを待った。ソウから着信があった。「出てるから手が離せない」と言うソウに、私たちはもう食事をしたし、バスで帰ると告げた。
「はーい」
電話を切ると「パパー?」とリアが首を傾げた。
「うん。パパは忙しくて来れなくなっちゃったから、先におうちに帰ろう」
「リーちゃんね、ししざみる!」
獅子座生まれのリアは先月五歳になった。家族で行ったコスモワールドと、新しいスニーカーがリアへの誕生日プレセントになった。
「クレオとクロにゴハンをあげたら星を見ようね」
暗くなる頃には、ソウは帰って来ているだろうか。一緒に星を見るだろうか。
バムとケロの絵本を読んであげている内にリアは眠った。私はスマートフォンを持って一人でお酒を飲んだ。図書館で借りてきた本を並べて、インスタグラムで撮影した。
「今日は娘と図書館に行きました。娘は保育園で聞いた星座の話に夢中になっています。暗くなって外に出ました。娘が見たがっていた星座は春の星座らしくて、探すことができまでせんでした。代わりにペガススの大四辺形を見つけました。夏の大三角形が今でもまだ輝いていました」
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