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 横浜の『みなとみらい』。コスモワールドという遊園地。リアの年齢で遊べるのはゲームセンター内と4Dという立体映像とカードゲームとコラボした迷路くらいだった。ソウは率先してリアを遊ばせてくれた。リアは4Dの本当にそこに居るような鮫に戦慄し、ラストのベルーガたちに感動していた。最後に三人で観覧車に乗った。暗くなりかけた港にベイブリッジが浮かんでいた。ベイブリッジから見るこのコスモクロックという観覧車と背後に控える夜景は、宝箱が散らかったかのようにきれいだ。前日に予約が取れたビジネスホテルにチェックインしてから、少し高級な中華を食べに行った。一泊朝食付きのツインルームは、思っていたよりもかなりきれいだった。ビュッフェスタイルの朝食も美味しかった。ホテルを出てから、みなとみらいのショッピングモールを回った。私は好きなショップのカットソー、リアは新しいスニーカーを買ってもらった。今回の旅行は、貯蓄しようと思っていたソウの七月のボーナスを使った。みなとみらいまでは、横浜横須賀道路に乗れば一時間で着いてしまうけれど、とても楽しかった。暑い今の時期も、寒い季節も。辛い仕事をしているソウに感謝しないといけない。


 八月の終わり。神社の祭りがあった。リアは去年買った浴衣を着ている。ソウと私は普段着で出かけた。リアは一年ぶりに着る浴衣に、はしゃいでいた。リアのミニの浴衣と違って大人用と変わらない造りの浴衣を着た小学生たちが、神社の境内を埋め尽くしていた。神社の階段に連なる提灯。流れる水に回るスーパーボール。リアとソウが写っていない写真も、スマートフォンで何枚か撮った。今までインスタグラムに投稿した写真は二十枚を超えていた。コメントをし合うユーザーさんが増えてきた。私はクレオだけではなく、自転車で行った海の写真なども投稿するようになってきていた。自分で載せるコメントの行数も増えていった。酔った時に投稿して恥ずかしくなったけれど、消そうと思った時には既に誰かのコメントが入っていた。消すのが申し訳なくてそのまま残っていた。

「リア。金魚」

 ソウがリアを屋台の金魚すくいに導いた。水の中は珍しく、豊富な種類の金魚が泳いでいた。

「リーちゃんやりたい!」

 リアの浴衣の袖を捲って五百円を渡した。金魚を持ち帰れない人は二回出来ると書いてあった。

「どうする?」

「クレオの隣に置けんじゃねぇ?」

 一匹も掬えなかったリアは残念賞で黒い出目金と、本当に金色の小さい魚……金魚? を袋に入れてもらった。

「クレオを買った店に行こ」

 三人で歩いて、閉店ギリギリに観賞魚店に着いた。リアは喜び勇んで店員さんに金魚を見せていた。

「ベタも元気そうですね」

 この店員さんがいつもインスタグラムのコメントをしているのだろうか。ソウ並に強面だけれど、物腰が柔らかい男の店員さんが接客してくれた。ソウのボディピアスよりも太いゲージのボディピアスが両耳に光っていた。金魚の飼育セットと水草とソイルを買った。

「的屋の金魚は弱いので、何かあったらお電話でもインスタにでも連絡してください」

 インスタって? 店を出てからソウが言った。

「クレオの写真を投稿してるの。フェイスブックみたいなやつ」

 ふーん? ソウはそれ以上に興味を示してくれなかったけれど、見せるのが恥ずかしいようなコメントを載せていたので、見せてと言われなくて良かった。リアとソウは、リアが大事にぶら下げている金魚の名前を一緒に考え始めた。

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