七月最後の水曜日。仕事が終わったソウとリアと一緒に地元の花火大会に出かけた。そして八月が来た。ソウから三万円は返って来なかったけれど、それ以上生活費が減ることもなく七月が終わった。八月最初の土曜日。ソウはパチンコに出かけた。私たちは散歩に出かけた。灼熱の陽射しを緩ませる潮風が、時折強めに髪を梳かした。帽子を被ったリアと一緒に近所のパン屋に入りバケットを買った。リアが気に入っている、ばら組の男の子が「この店のパンは美味しいよね」と言っていたらしい。家に帰ってバケットをカットした。マヨネーズで和えたコンビーフを載せて食べた。付け合わせは茹でただけのブロッコリー。ソウは食事もしないでパチンコをしているのだろうか。その日。ソウはリアが眠ってから帰ってきた。どれだけ使ったのだろう……。聞きたくない。これ以上、ソウに渡せる小遣いはなかった。また働きに行きたかった。でもソウにパチンコをさせるために働くのでは意味がなかった。

「心配すんなよ。少し増えたから」

 ソウが一万円札を一枚財布から抜いて渡してきた。増えたのは偶々だと思った。でも、減らなくて良かった。

「これ。冷蔵庫に入れておけば朝でも飲めるだろ」

 ファストフード店のスープを買って来てくれたらしい。朝になったら温め直して三人で飲もう。


 その日の夕方。リアとクレオの動画を撮った。近づくリアと喜んでいるように泳ぐクレオ。クレオだけが写っている動画をインスタグラムに投稿した。リアが眠ってから、インスタグラムを開いてコメントを読んだ。海外のユーザーから「Cute!」と言うような短いコメントが二件、日本語のコメントが三件。

「とても懐いていますね。かわいいです」

 クレオを買ったアヌエヌエという観賞魚店のアカウントからだった。コメントを返してから他のユーザーのベタの写真を見に行った。ユーザーのコメントも読んだ。もしかしたら、他にも。パチンコに行っている夫を待ち、ベタを見ながら癒されようとしている妻がいるかもしれない。当たり前のようにコメント欄に「パチンコ」の文字は一つもなかった。私は酔った頭で色いろなベタの写真とコメントを見続けた。

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