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図書館で借りた「クリスマスまであと九日」という絵本をリアに読んであげていた。最後のページで感動して涙声になった。リアにきちんと聞こえただろうか。ベッドに横になるとリアは直ぐに眠った。ソウはまだ帰って来ない。リビングのライトを消すと水槽の照明が部屋の中に浮かび上がった。まだクレオは起きていて、鰭を棚引かせて泳ぐ影が見えた。寝室で飲もうと思って消したリビングのライトを、もう一度点けた。グラスを持って水槽の前に座った。水色の影が夢の中のように揺れていた。グラスをローテーブルに戻し、小さなバケツと大きめのスポイトを持ってきた。クレオを連れてきた日に、一緒に買って来たものだ。ソイルという黒い小石の集まりような底床付近をスポイトで吸うと、糞らしきものが水と一緒に吸い取られた。かなり汚れている。それをバケツの中に棄てた。何度も繰り返して、水槽の中の水が三分の一ほど減った。一度バケツの水を棄てて水だけで洗い、同じくらいの量の水を注いだ。そこにカルキ抜きとバクテリアという水の状態を良くしてくれるものを混ぜた。水が減った水槽の中は水草に占領されそうになっていて身動きしにくそうにクレオがじっとしていた。少し考えて鋏を持ってきて半分くらいに水草を減らした。水槽に、作った水をそっと注いでいく。水が増えると、またクレオが元気に泳ぎ始めた。
きれいになった水槽は気持ちが良さそうだった。観賞魚店でもらったリーフレットにはベタの飼い方や水換えの仕方とインスタグラムのQRコードが載っていた。スマートフォンで店のページにアクセスすると色とりどりの魚たちの写真や新しく入荷した飼育器具の写真が投稿されていた。一枚、パールホワイトのような色のベタの写真があった。その写真のハッシュダグから他のベタの写真が表示された。色いろな人たちが飼っている色いろなベタの写真が並んでいた。私はインスタグラムのアプリをダウンロードして観賞魚店のページをフォローした。クレオがこっちを向いている写真を撮る。鰭が広がったクレオの写真はきれいだった。「#ベタ」とだけ書いて投稿した。他の人が投稿したベタの写真を見ていると、何件か「いいね!」の通知が来た。英語でのハッシュタグは「#betta」だと言うことが分かった。海外でも多くの人がベタを飼い、写真を投稿していた。ベタの写真だけではなく、他のペットの写真、小さな子供の写真、植物や街の風景、一人、または友人たちとの自撮り、海の写真などを一緒に投稿している人もいた。私はベタの写真だけを何枚も見た。自分の写真にコメントを載せている人が多かった。きれいな色のベタの写真を見ていた時、また通知音が鳴った。
「Anuenue_Hayamaさんがあなたをフォローしました」……? そして、コメント通知……。
「こんばんは! 葉山のアヌエヌエです。フォローありがとうございます。お気軽にコメントくださいね!」
何回も読み直して、返信をした。
「先日そちらで買ったベタです。今日初めて水換えをしました。とても元気にしています」
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