第12話

約束した日、私は拓真の家に訪れた。

「お兄ちゃんお帰り。つぐちゃんもいらっしゃい。今日手伝ってくれるんでしょ?」

売り場にいた、拓真の妹のあゆちゃんが声をかけてくれる。

「うん、あゆちゃんよろしく。」

「つぐちゃんいてくれると助かるから大歓迎!バイト代は安いけど!今日コタ部活で遅くなるらしいし。私より若い娘のほうがいいわよね~。」

溌溂とした拓真のお母さん。拓真の親とは思えないくらい。そもそも息子が女のコ連れてきたというのにサバサバしていて気持ちがいい。

「おばさま、私にそんな期待しないでくださいよ。」

「謙遜はいいわよ。タクも早く。」

「ハイハイ。」

私は拓真以上に行野家の女性陣と相性がいいらしい。

「あゆ、綾乃サン来たら、つぐ解放してやってくれよ?」

「もちろんよ。じゃ、つぐちゃん着替えてきて?上に荷物おいていいから。」

「着替えには俺の部屋を使えばいい。大丈夫だ。入らないから。」

「了解。今日はよろしくね。」

「はい。よろしくお願いします。」


そこから数時間、休憩をはさみつつあゆちゃんとともに働く。さすがに本家のあゆちゃんほど手早くはできない。疲れる。

「つぐちゃん、綾乃サン来たよ。だいぶ働いてもらったし、着替えてきなよ。」

「ありがとう、あゆちゃん。」

疲れていて綾乃サンを見逃していたらしい。手早くエプロンを上に置きに行く。多分あゆちゃんが気を使ってくれたのだろう、綾乃サンの会計があゆちゃんと雑談しながらちょうど終わったところのようだ。

「綾乃サン。」

「…つぐな。なんでここに?」

「ここ、拓真ん家なんで。時間は取らせません。少しお話いいですか?」

「そうか、あゆちゃんのお兄さんが、今、私たちの間で話題の行野拓真君だったわね。…悪いけど、手短に。あゆちゃん、イートイン借りていい?」

「もちろんですよ。ごゆっくり。飲み物いりますか?」

「ありがとう。じゃあ、紅茶もらおうかな。」

「了解しました。あちらでどうぞ。」

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