第11話

連絡が来るのはそう遅くなかった。

「つぐ、綾乃サンは”つぐなの気持ちはわかってる。謝罪なら必要ない”ってさ。」

私は苦笑する。

「やっぱ、一筋縄ではいかないね…。拓真、綾乃サン次いつ来るかな?」

「わかんねーけど、あゆは多分明後日の夕方、って言ってたよ。」

ほとんどの客に会っているあゆちゃんの言葉は割と信憑性が高い。

「じゃあ、そのとき私そっち行ってもいい?」

「待ち伏せか?」

「うん。」

拓真は笑った。

「ウチの店は慢性的に人手不足だから手伝ってくれるなら。家族でやってるから融通も効くし。」

「あゆちゃんの手伝いでいいのかな?」

「ああ。悪いが、バイト代はたいして出ないぞ。…あゆたちには伝えておく。」

「いらないわよ。むしろ払いたいくらい。…ありがとう。どうしても綾乃サンには謝りたいんだ。」

「どういたしまして。」

最近、似非カップルしてる時間が長すぎて、時々わからなくなる。もともと私にとって好きな人だった彼だ、この関係は甘くて痛い。この関係の真実を知っているのも、たった一人、コータだけだ。

この関係の終了条件は、うちの部のみんなが引くか、拓真に好きな人ができるか。そのどちらかだ。

お互い中二病気質があるから、成り立っている関係。漫画やアニメやドラマへの憧れと紙一重。

それに加えてたまたま私と拓真の性格が合うという偶然のもとに成り立っているのだ。私はもともと隠してはいないけれど、私にも拓真も詐欺師まがいの嘘つきで。

私はこの関係の終わりが少し見えてきて、少し怖い。

私と彼は何年後かにこの関係を笑い話なんて贅沢じゃなくていい、彼と話すことができるのだろうか。

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