薬だって売ってます。(3)

 基本的に市販の薬は、『病名を治す』という表示はしてはならない事になっている。(一部例外あり) 皆さん、身近にある適当な常備薬の裏を見て下さい。そうすれば分かると思う。基本的には、『○○の△△に伴う諸症状の緩和』もしくは『△△、□□など(の症状)に』と書いてある筈。


 そう。市販薬は法律上、『風邪を治す』とか『口内炎を治す』とか『神経性胃炎を治す』とか、『病名+治す』って書き方は出来ない。そう言った医薬品は、医師しか取り扱うことが出来ない事になっている。

 軽い皮膚炎とか蚊に刺されたとかは、それ用の軟膏やクリームを塗ったら、症状が治まって、そのまま再発しない場合が多いんで、皮膚薬(や一部の眼薬も)は、効能書きが少し違う書式になっているけど。


 つまり、市販の医薬品は、「発現した不快な症状を抑えます。体の一時的な不調や身体の免疫が治せるモノなら、自然と治るんで、それまで不快な症状で日常生活が送るの大変だろうから、これで抑えて様子見てよ。」というコンセプトで作られたものが大部分なのである。

 なので、風邪薬のパッケージの裏面を見ても分かる通り、『かぜの諸症状(鼻水、鼻づまり、せき、たん、のどの痛み、発熱、悪寒、頭痛、くしゃみ、関節の痛み、筋肉の痛み)の緩和』みたいな書き方がされていて、決して『風邪を治す』とは書いていない。風邪を治すのは、身体の免疫機能だから。


 風邪は『風邪ウィルス』という、山ほどある色々な種類(試験に出たけど忘れた)のウィルスが体内に侵入して、そいつらが増殖を開始するために起こる、色々な症状群を差している。だから試験の問題集とかには、『風邪』の事を『風邪症候群』と記載している。

 それで、ウィルスを直接やっつける薬は、まだ余り無い。体内に侵入した細菌をやっつけるのは抗生物質で、風邪の時に抗生物質を注射して貰う人は、結構いるかと思うが、実は風邪ウィルスには影響は無い場合が多い。


 じゃぁ、なんで抗生物質を注射するかというと……そろそろ医師とか薬剤師の専門領域になってきたのだが……続けると、実は、風邪症候群はウィルスが原因だと言った。ただし、実は『細菌性の風邪』というのも少なからず存在する。これには抗生物質が効果がある。症状だけを見て、『ウィルス性か細菌性か』という区別は、特に初期段階では区別がつきにくいみたいで、医師は「とりあえず抗生物質も出しておきますね」という判断をする。これは、その年に流行っている風邪の種類とか、患者の状態とかを総合的に診断して決めているのだと思う。


 そして、風邪の一般的な原因であるウィルス性の風邪の場合。

皆さん御存じの通り、体内に侵入した外的を戦うのは身体の免疫機能であり、これはいわば軍隊。で、こいつらは雑魚敵相手とはいえ、色々な外敵と24時間戦ってくれている。そんな時に、風邪ウィルスの体内への侵入を許す。

 体内軍最高司令部は最高レベルの防衛体制を宣言する。免疫軍はウィルスとの戦いに全力を尽くす。で、戦力をウィルスとの戦いに振り向けすぎると、これをチャンスとばかりに、雑魚敵が暴れ出したり、別の細菌の侵入を許してしま、いわゆる二次感染を招く恐れが出てくる。抗生物質はそれを防いでくれる。こっちの理由で使用されている方が多い(と個人的には思う)


 ウィルスの増殖を妨害したり、その爆発的増殖を抑えたり、免疫機能に備わる『対ウィルス戦能力』を強化する、といったウィルスとの戦いに特化した薬は、『抗ウィルス薬(剤)』という。『抗ウィルス薬』を作るのはなかなか大変で(理由は……また長くなるので省略)、種類は少ない。最近は研究スピードが急に速くなった気がするが。ただ、風邪の抗ウィルス薬は、まだ発表されていない。この業界に入って、未熟とはいえウィルスに関する知識を身に付けて分かった。『風邪を根治する薬を作れたらノーベル賞モノ』という言葉の意味を。


話は少し変わるが、ここまで書いて、或ることの根本的な違いを分かった方。居てはると思う。


何についてかって?

『細菌』と『ウィルス』は、全く別物だからね。

ごっちゃにしないでね。


 違いを説明しようとすると、結構長くなるんで省略するけど、全く違うモノだと認識しておいてください。ちなみに『ウィルス』について初めてまともに勉強した時、「????ウィルスって生物? 生物的材料で作られたロボットみたいだ!」とびっくりした記憶がある。実際、ウィルスが生物であるか非生物であるか、学者の先生の間でかなり長い時間議論されていて...なんと今でも定義付けされておらず、『非細胞生物』とか『生物と非生物の中間』という曖昧な位置づけをされているらしい。


 ちなみに小ネタだが、SFや、ホラーSFのモンスターやゾンビの正体が『未知のウィルスの感染によって、姿を変えられてしまった元人間』という設定の作品が沢山あるが、その設定はウィルスである必要性がある。もちろんウィルスでも、人間をゾンビに変えるなんて、現実的確率では皆無だろうけど、可能性としては「0」では無いのだ。


 本当に、ひょっとしたら、俺が宝くじの一等を三回連続で当選するくらい(一回で良いんで当たりたい)の確率で起こり得るかもしれないのだ。

なんでかっていうのは、インターネットで調べたら分かると思うよ(投げっぱなしだけど、また長くなるし……)

 なので、ゾンビものとか、人間が変異したモンスターものの作品を作るとき、そのマクガフィンは、やはり王道の『ウィルス』『(なにかの原因の)突然変異』を使うのが無難だと思う。


 なんで、風邪薬の接客がゾンビ作品の導入部の話に変わってるんだ。しかも余計なお世話だし。


そう、風邪薬の接客の話だ。


※追記 風邪の時に抗生物質を使用するのは、患者の上気道を強化して免疫機能を向上させるのを期待している場合もあるそうです。

(これは特定の種類の抗生物質)





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る