コンクール狂想曲 (4)
電話はワンコールで出た。各店店長の電話報告が集中する時間帯。軍曹は携帯電話を握りしめていたのだろう。
「おーう。ナンボや」
「10箱です」
「ち」
舌打ちすんなやぁああああ
「どうするんや店長。店長とこ目標は……」
「40箱です。」
「で、これじゃショートやろ」
「はい」
「結果やぞ店長。どんだけ数字作れるかが店長の責務やぞ」
「はい」
「分かってんのか」
「はい」
「午後からどうするんや店長」
「はい」
「はいはいって、おまえ「はい」しか言えんのか。俺のこと舐めとんのか」
「とんでもございません」
「じゃ、どうするつもりや」
「やる気見せます。結果出します。」
「おーぅ、言うたな。楽しみにしとくわ……ホンマに……ちッ」
電話は切れた。俺の寿命も切れそうだった。
PHSを切った瞬間、着信が入る。表示窓を見るとキャバクラ店からだった。
「まいど」
「お、青野店長、ナンボ売った?軍曹には報告したん?」
「10箱や。軍曹には、今報告終わったところ。糞味噌やで」
「10箱で糞味噌かぁ……俺、電話したけどみんな報告中みたいで話し中でな、今から掛けるところ……」
「何箱販売した?」
「聞いて驚けよ……3箱」
驚くわ
「店長、それは……もう……おぉぉ……」
俺は絶句した。ご愁傷さまとしか言えなかった。
「店長、骨は拾ってくれ」
「拾える骨が残らないと思う」
「……や、やめろや……大丈夫やろ。何言われても、はいはい言っとけばいけるやろ」
いけないんだな。これが。
「……なに黙ってるんや店長。気色悪いやん。なんか言えや」
「とりあえず早く電話した方がええよ。遅いと更に軍曹の機嫌が悪化する」
「……そうやな……、早くすっきりした方がええな。終わったらまた電話する」
電話は切れた。
他人事のはずなのに恐ろしく緊張した。まるで受験に送り出した、受験生の母の気分だった。(キャバ男、大丈夫かしら……、あの子、小さい時から落ち着き無いから……)
しばらくして、キャバ店からの着信があった。俺はすぐに通話ボタンを押す。
「どうやった?」
「当ててみろよ」
おーっと。
「骨も残らない」
「大当たりや。もう糞みたいに最悪や」
キャバ店長は溜息交じりに続けた。
「舌打ちとため息の連続でな、『
「そういう叱られ方はメゲるな」
「怒鳴られたり、詰められたりするって、まだ相手してくれてるって事やしなぁ」
「叱られている内が華っていうもんな」
「...青野店長、追い打ち掛けんといてくれや。……いや、なんかムカついてきた。俺は見返してやる。軍曹を銃殺刑にしてやる」
「パワハラで通報するんか」
「いや、それは最後の手段や。って、冗談や」
冗談に聞こえないんですが。
「とりあえず。13時から遅番でお試し会に強いスタッフが三人来る。そいつらにも頑張ってもらう。ついでに三人に、俺の傷ついた心を慰めてもらう」
キャバ店長改め岩倉店長、あんた全然落ち込んでませんよね?
「へー、そうなん? 慰めてもらうっていうんだったら、やっぱ女子大生スタッフ?」俺は取りあえず訊き返した。
「そうやで。あいつらよく売ってくれるで。
今日来るのは『 パンク ロックの
それほんとに可愛いんですか?
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