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 きらきらと、長い水色の尾をなびかせた彗星がふたつ。ひとつに合わさって、結歌の寝顔。左目元にキスをした。目尻に泣き黒子のような、水色ツインテールの印が浮きあがる。

「起きて」

 聞き覚えのある、澄んだ高い女の子の声が聞こえた。ふと目を覚ますと、机につっぷしたまま眠っていた自分がいた。

 いけない、いつの間にか眠っちゃった。

 頭を上げて、寝ぼけ眼に、学校の教室がぼんやりと映る。

 あれ? 教室? おかしいな、自分の部屋でミクの曲を聴いていたはずなんだけど…。

 徐々にピントが合ってきて、教室全体が見渡せる。ぼわ~んとした頭が、少しずつはっきりしてくる。

 あっれ~? あたしの教室、こんなんだったかな~?

 改めて、教室を見回す。ちょっと待て。ここ、あたしの通ってる学校と違う。

 机や黒板、壁や天井の色や形。配置。窓から眺める光景。全てが、結歌の通っている教室と違う。

 寝ぼけたか?

 慌てて結歌は、座っている机を撫で回してみた。金属のパイプに木の天板。学校には標準的にある、普通の机だ。

 違う。

 天板の色や角の面取り。ニスの塗りに落書きが見慣れたものとまったく違う。否。この机には、そもそも落書きが無い。イスもそうだ。金属パイプに木の背もたれ。

 違う!

 色、サイズ、面取り、落書き、全てが違う。机の中をのぞきこむが、何も入っていない。教科書もノートも、忘れられたプリントはもちろん、ちぎれた紙の一片すら入っていない。

 おかしい。

 立ち上がって、教室の中を改めて見回してみる。そこはかとなく、見覚えはあるが、自分が通っている教室とは違う。一番、異質に感じたのは、整然と並んだ机にイス。チョークを消した跡の無い綺麗な黒板。忘れ物ひとつ無い教室。名札はおろか、掲示物のひとつも無い。生気を感じない教室。

 こんなの、おかしい!

 ふと、遠くから、ボールの弾む音と、女の子の歓声が聞こえてくる。窓から外を見ると、グラウンド角に体育館があり、音はそこから響いてくる。廊下に出ると、そこに人影は無く、自分が見知った学校の廊下とは違っていた。

 どこの学校だろう?

 脳裏をかすめる疑問は、遠く体育館から響いてくる、ボールの音と歓声にかき消された。結歌は、そこへ向かって廊下を走り出す。

 駆け抜けた先に、体育館の入り口が見えた。中から、大歓声が響いてくる。結歌はゆっくりとドアを開ける。歓声と同時に、熱気と湿気と、汗の臭いが結歌を襲う。体育館の中では、今まさに、白熱した男子バスケットボールの試合が行われている。

 ほとばしる汗。キュッキュッと床を鳴らすシューズ。床を震わすバスケットボール。髪を巻き上げて伸ばした手は、スリーポイントラインからのシュート。ボールは一瞬、天井のライトで瞬き、ゴールポストに吸いこまれた。審判の笛が高く鳴り響くと、それ以上の歓声が、ゴールサイドの観客から沸き上がった。

 なるほど、バスケの試合をしているのか。

 ここまで結歌は理解できた。

 しかし、なぜ、今?

 ゲームはすぐに再スタートした。軽快にボールを操る背の高い男子生徒たち。皆、結歌の知らない人だ。

 つーか、うちの学校のバスケ部。こんなに人気あったっけ?

 館内を見回して、ふと、見覚えのある女の子が目に飛びこんできた。観客の一番奥。体育館の壁に背を付け、潤ませた目でプレーヤーを追う、ちょっと背の小さい、長い髪をおさげにまとめた女の子。

 どこだっけ? どっかで見たような気が…。

 見た場所を思い出して、結歌はハッとなった。それはあまりにも現実離れした世界だからだ。

 最初、一笑に付したが、改めて彼女を見てみる。間違いない。『パ・ディ・シャ』のPVに出てくる、初音ミクに似た、バスケ部の部長に恋する女の子だ。

 つまり、このシチュエーションは、『パ・ディ・シャ』の世界だ。女の子は、今、汗と熱気を振り撒いている、バスケットボール部の部長。片思い中の彼。体育館の片隅から活躍を目で追って、その一挙手一投足。釘付けになっている。

 なるほど。やっぱりこれは夢だ。

 ポンと手を叩き、プレー中のメンバーに目を馳せれば、イケメン部長はすぐに見つけられた。軽やかな身のこなし。華麗なプレー。なびく髪から星のように流れる汗。うん、これは惚れる。少女漫画の主人公に出てきそうなイケメンぷり全快だ。

 ほどなく、試合が終わる。他校との対抗試合だったのか、紅白戦だったのか、勝ったのか、負けたのか、内容や結果はどうでもいい。大事なのは、あこがれのイケメン先輩がバスケで綺麗に大活躍した。その一点につきる。

 バスケ部員を先頭にして、体育館にいた人たちがぞろぞろと、結歌をすり抜け出て行く。遠く、体育館の壁にもたれていたおさげの子も、トコトコと足早に体育館を後にする。出入口にひとり。結歌が取り残された。

 なるほど、で?

 ぽつんとひとり取り残された結歌は、当然、夢の覚める時を待った。しかし、夢の覚める気配は無い。腕組みをしたり、うろうろ歩き回ったり、ため息をついたり。

 ふう。まったくあたしの夢って奴は、目が覚めるのも夢の中の人任せなのか?

「おーいっ! 試合は終わったぞ! 早く目を覚ませあたしー!」

 しーんと、静まり返る体育館からは、なんの返事も無い。

「おーい!」

 今度は校舎の中に叫んでみた。が、なんの返事も無い。

 あっれ~? もしかしてあたし、自分に忘れられた?

「あなた、ゆうかさん?」

 突然、男性の声に呼ばれる。

「はい! 結歌はあたしです」

 思わず声がうわずった。振り返ると、声の主とおぼしき男子高生が立っている。

「あの、どなたですか?」

「NEGStrings」

「ねぎすとりんぐす?」

「それは、ハンドルネーム」

「あっ! ボカロ部の」

「正解」

「あなたが、ねぎすとりんぐすさんだったんですか。つーか、発音あってます?」

「発音なんて考えたことないから、わかんね」

「じゃあ、なんて呼びましょう?」

「ネグでいいよ」

「じゃあ、ネグさんで♪」

「ゆうかさんは、ゆうかさんでいいの?」

「はい」

「じゃあ、ゆうかさんで」

「あたしも、ネグさんで♪」

「それでは改めて、この状況をどう思います? ゆうかさん」

「ずばり! 夢です」

「ですよね。そう考えれば一番、しっくりくる」

「はい♪」

「しかし、ふたり同時に同じ夢を見るなんてことは、科学的に考えにくい」

「もちろん♪」

「次の可能性として、自分が見ている夢に、相手が出ているだけだと考えるのが自然だ」

「そうですね♪」

「だから、今はお互いがお互いの夢に出ているという状況になる」

「はい♪」

「しかし、それを証明するには、夢から覚めて、互いに見た夢を照らし合わせ検証する以外に方法がない」

「そうですね♪」

「なので、今この場で、これが夢であることを証明できません」

「そうなります♪」

「さて、どうしましょう?」

「どうしましょう♪」

「さっきから、楽しそうですね」

「楽しいです!」

「まじめに考えてます? 今、お互いが置かれた状況に」

「もちろん」

「では、そのまじめな意見をうかがえますか?」

「夢なら痛みを感じません」

「はい?」

「お互いに、ひっぱたき合ってみる。なんてどうでしょう?」

「それはまた、夢の中とは思えない突拍子も無い発想だ」

「その発想が出るという時点で、夢である可能性が若干、減りましたね」

「まあ、そうかも知れません」

「それでは早速、あたしの頬をひっぱたいてください」

「いや、ちょっと待って」

「はい?」

「夢の中とはいえ、人の頬を叩くというのは…」

「夢の中なら問題ないじゃないですか。傷害で訴えられることもないですよ」

「そういう意味じゃなくて」

「どういう意味です?」

「俺は現実の世界でも、人を叩いたことなんて無い。だから、これがたとえ夢の中であったとしても、人を叩くには良心の呵責がある」

「紳士でらっしゃる」

「茶化さないでください」

「失礼。じゃあ、しっぺぐらいならいいんじゃない?」

「しっぺ?」

「ええ。相手の手首を、人差し指と中指で、ぺちっと」

「ぺちっとね」

「はい♪」

「まあ、いいでしょう。どちらが先に?」

「どうぞどうぞ」

 結歌は嬉々として右手を出した。

「こういうのを男が先というのも…」

 ネグが右手を出した。

「いやいや、あたしが提案したんですから、ネグさんから先にどうぞ」

「そうはいっても、やっぱり男が女性を叩くというのは…」

「じゃあ、あたしから」

「切り返し早っ」

 結歌は、ネグの右手首をつかんで、人差し指と中指を束ね、手首を叩くしぐさを繰り返した。

「生半可な力加減だと、夢かどうかわからないので、本気でいきますよ。いいですか?」

「どうぞ」

「じゃ、遠慮無く」

 結歌が右腕を高く振り上げる。おいおい、夢の中とはいえ洒落にならんぞと、ネグはそれなりの痛みを覚悟する。振り下ろされた結歌の右腕が、ヒットする瞬間、思わず目をつぶった。激痛は別のところに響いた。

 パンッ!

 風船が破裂したような、良い音が響く。結歌の右手が、ネグの左頬を、クリティカルヒットする。

「「痛っ!」」

 叩いた手を、痛みに震えて結歌は振る。

「うん。これ夢じゃない」

 叩かれたネグは、左の頬を真っ赤に張らす。

「ああ、痛い。確かにこれは、夢じゃないな」



 校舎から生徒たちが、巣穴から這い出る蟻のように、わらわらと出て来る。

「下校時間だな」

 冷静に状況を語るネグ。その足下で土下座している結歌。

「これからどうします? ゆうかさん」

「ごめんなさい」

「だから、もういいって」

「初対面の人を、いきなり平手打ちなんて。いや、初対面じゃなくても、なんの罪もない人を平手打ちなんて」

「いい加減、頭を上げてくれ。謝罪なら十分、受け取ったから」

「自分の気が収まらないんです」

「じゃあ、お返しに俺がゆうかさんを平手打ちしますか?」

「是非!」

 目をキラキラと輝かせて、結歌は顔を上げた。

「やっぱ、止めとく」

「えっ?」

「お互い、これが現実だとわかって、良かったじゃん」

「現実ならなおさら許されないことを…」

「でも、夢じゃなかったからといって、俺たちが生きていた世界と同じだった、という訳ではないみたいすよ」

「それはどういう意味?」

「まず、立ってくれますか?」

 ネグは結歌に手を差し出した。その手を握って、結歌は立ち上がった。結歌の額から、擦り付けていた校庭の砂が、パラパラと落ちる。ネグはそれを優しく拭った。

「あ、ありがとう」

「握った俺の手は温かかった?」

「う、うん」

「今、払った手の感触は?」

「温かかった」

「俺も同じ。握ったゆうかさんの手は温かかった」

 頬を真っ赤に染める結歌。

「ここまで、感触的には現実だ。だが…」

「だが?」

「辺りを見回して気がつかない? それとない違和感」

「そうですね。あたしもそれはさっきから感じてました」

 ふたりは辺りを見回した。

 見慣れた学校。見慣れた学生。下校風景。夕焼けに赤く染まる空。

 ふと、落とした目線の先。結歌の左目の目尻に、ネグは泣き黒子を見つけた。しかし、ちょっと変だ。

「今、気がついたんだが、ゆうかさんの左目の目尻に、なんか、マークみたいのが付いてる」

「そういえば、ネグさんの左目尻にもマークみたいなのが付いてますよ」

「この形、見覚えがあるな」

「あたしもあります」

 お互いが、お互いの左目尻を見つめた。

「「わかった!」」

「カイト!」

「初音ミク!」

 結歌の左目尻には、初音ミクのツインテールを模した水色の刻印があり、ネグの左目尻には、カイトの短髪を模した青い刻印があった。

「あたしの目尻に、ミクの刻印?」

「黒子にしちゃ青すぎだし、自然にできたんじゃ不自然だ」

「そう…」

「俺の目尻にも?」

「うん。カイトみたいなのが」

 ふたり、校舎の窓ガラスに駆け寄って、自分の目尻を確認した。

「なるほど、これはカイトに見えるな」

「あたしも。ミクみたい。やっぱり、ミクにキスされたせいかな?」

「キス?」

「うん。ミクにここをキスされた夢見て、目が覚めたらここにいた」

「俺は、カイトにつつかれる夢を見た」

「ほう。そのへんkwsk」

「そういう意味じゃない!」

 ていっ! と、結歌の額を掌で軽く叩いた。

 てへぺろと、結歌はおどけた。

「そういえば、お互い、ここの学校の制服を着てるな」

「あっ! 言われてみれば」

「今までこの制服を着た経験は?」

「ありません。だが、見覚えはあります」

「どこで?」

「『パ・ディ・シャ』のPVの中で」

「俺も」

「名曲ですよね~。バスケ男子に片思いする女の子の心情が、なんとも切なくて」

「プロじゃない、一般の人が作った手書きアニメのPV。キャプテンのスリーポイントが決まる瞬間の、飛び散る汗とか、跳ねるボールとか、プレーヤーのステップとか、良くできてる」

「男の匂いたちます♪」

「まあ、最終的に片思いで終わるわけだが」

「ですね~。で、ネグさんがどのへんをして匂ったのかkwsk」

「匂ったとは言ったのは、ゆうかさん」

「ちっ。引っかからなかったか」

「ちょうどPVの話が出たところで本題に戻るけど、ほら」

 ネグの指す方。下校する多くの生徒に混ざって、背の高い、バスケ部のキャプテンが、女の子に囲まれながら帰って行く。

「PV通りなら…」

 自分達が隠れている校舎。昇降口を挟んで反対側は校舎の陰。

「いるな」

「いましたね」

 さっき、体育館の角で、バスケ部のキャプテンに熱い視線を送っていた、初音ミクに似た女の子。

「体育館からここまで、件の曲、どおりの展開だな」

「となるとこの後、河川敷でジョギングする彼のシーンに飛びますが…」

 突然、ふたりはブロック状のノイズに囲まれ、デジタルに切り取られた光景は、色を変え、再びふたりの前で、実像を形成した。

 景色は、夕暮れの河川敷。

 犬を散歩する女の子。ジョギングする中学野球部の一団。夕日を照らして輝く管楽器の集団は、鈍い音を響かせている。どこかの吹奏楽部だろう。川面に糸を垂らす年配の男性。サッカーボールを蹴る男の子の影は長く、長く伸びて、土煙を上げた。

 土手の上を、例のバスケ部男子が駆けてくる。彼の作る長い影の先に、ツインテールのあの子はいた。

「いましたね」

「いたね」

「ところで、さっき、周りの景色がジグソーパズルみたいになったのって、なんだったんでしょう?」

「さあ」

「豪雨の日に見た、衛星放送の様な感じでした」

「俺は、動きの速いサッカー中継を思い出した」

「こんな状況でも、あたしはこの世界が、夢とは思えないですが、ネグさんはどう思いますか?」

「俺も同感」

「意外と冷静ですね」

「ゆうかさんもね」

「ところで、あの女の子ですが、曲のPVどおりに展開するとしたら…」

「彼は、この先で足首を捻る」

 彼は普通に走っている。次の瞬間、小さな子供が横から飛び出して来る。彼は子供を避けようと、体を捻る。右足は、平坦な着地点をずれ、土手の下り坂に落ちる。バランスを崩して彼は転ぶ。

 あっ! という声にもならない叫び声をあげて、ツインテールの子は手を伸ばした。伸ばした手が、彼に届くことはない。

 彼は、右足を軸に立ち上がろうとして、倒れた。遠目に見ても、右足になんらかの怪我を負ったのは明白だ。

 手を添え、だましだまし、足を持ち上げ、肩で息を継ぎ、ゆっくりと歩き出す彼に、それまでの軽快な足取りはかった。

 涙を浮かべ、両手で口をふさぎ、心配で心が張り裂ける気持ちは、曲の中でよく描かれている。

 辺りは再び、デジタルなモザイクにかき消され、再構成される。場所は、最初の体育館に移る。

 バスケ部は例によって、たくさんの女生徒に囲まれ試合をしている。昨日までの華麗な動きはどこへ行ったのか、彼のプレイは生彩を無くしている。

 ため息と、悲鳴と、嗚咽と、応援する声が、女生徒から同時にあがる。

 右足首をかばいながらプレーする彼の姿が痛々しく、ツインテールの子の胸に響いた。

「ネグさん。お話があります」

「奇遇ですね。俺もです」

「本題へ入る前にひとつ、確認しておきたいんですが、ネグさん。もしかして、この世界に来る直前、『パ・ディ・シャ』を聴いてませんでしたか?」

「実は同じ事を俺もゆうかさんに訊こうと思ってた」

「という事は、聴いていたんですね?」

「ああ。もちろん、ゆうかさんも?」

「あたしたちは、ほぼ同時期に、この曲を聴いていた」

「結果、俺たちは曲の世界に迷いこんだ」

「まるで、異世界をつなぐ魔方陣をくぐり抜けた気分です」

「なにその中二病的な言い方」

「なにせ、異世界ですから」

「せめて、不思議の国のアリスと言え」

「おや? 意外とロマンチックなこと言いますね」

「そんな事より、考えなきゃいけない事があるだろう」

「そうですね」

「この世界から、どうやったら抜け出せるか?」

「違います」

「え?」

「これが曲の中の世界だとしたら、ツインテールの子が、失恋してしまうじゃないですか!」

「まあ、曲のとおり物語が進むとしたら、そうなるな」

「それは悲しすぎる」

「あの、ゆうかさん?」

「あたしは、あの子の恋を実らせてあげたい!」

「はあ?」

 ドラッグストア。湿布や包帯、テーピングなどが並べられた棚の前で、ツインテールの子は戸惑っていた。ネットで調べた、足を挫いたときの対処法。それに必要な物を買い揃えるつもりだが、肝心のサイズがわからない。症状の大小によって、使い分ける湿布の効能も変わってくる。彼のため、最善の湿布は? テーピングは? サイズは? 

 彼の体格。捻った時の状況。痛みの具合。考えれば考えるほど、訳がわからず、彼女は棚の前で三十分以上、考えあぐねいていた。

「ツインテールのお嬢さん」

 突然、後ろから声をかけられた。

「ヒャ!」

 と、思わず振り向いた。

 そこには、自分と同い年ぐらいの女の子がいる。

「生兵法は怪我の元」

「はい?」

「ご心配なく。見てのとおり同じ学校の者です」

「はあ…」

「あなたは、怪我をしたバスケ部のキャプテンのため、薬を買いに来ましたね」

「なんでそれを!」

「見てたんですよ。偶然ですけど。あなたと一緒に、彼が土手で足を捻るところを」

「そ、そうなんですか…」

「先日の彼は、まったく良いところがなかった。大事な試合だ、怪我を悟られまいと懸命にステップを踏んだ。だが、ダメだった」

「…」

「そこであなたは、湿布やテーピングを買って、そっと手渡そうと考えた。そうでしょう?」

「ど、どうして知ってるんですか?」

「わかってるんですよ。あたしたちにはね。理由は訊かないでください。企業秘密とだけ言っておきます。話を戻しますが、あなたのその行動じゃ、肝心の、あなたの気持ちが彼に届かない」

 ツインテールの子は顔を真っ赤にする。

「別にいいんです。たとえあたしの気持ちが伝わらなくても、彼の力になれれば」

「万が一。彼の怪我が、湿布やテーピングなでごまかせないほど、重傷だったとしたらどうしましょう?」

「そんな! じゃあ、どうすれば…」

「ご安心を。あたしたちはあなたの味方です」

「はあ…」

 彼の家の前に、三人はやって来た。

「さて、今からここにいる、通称ネグが、彼の家にとつげきします」

「なんで俺の突撃が勝手に決まってるんだ」

「まあ、ネグさん。いきなり女子が男子の家に凸撃は無理というもの。クッションになってください」

「しょうがないな」

 ネグがインターホンを押すと、家人が応答する。ネグが二言三言、つぶやき、彼をうまく誘い出す。

 結歌とツインテールの子は、物陰に隠れ、ネグの動向を見ている。

 結歌は、彼女に言う。

「確認しておきたいことがあるんですが」

「なんですか?」

「本来なら、病院でちゃんと診てもらうべき。あなたも当然、そう思ってる」

「はい」

「だが彼は、責任感の強いバスケ部のキャプテン。病院で診てもらった結果、ドクターストップなんて事になったら、部員たちに申し訳ない。今ここで、戦線離脱するなんてありえない。故に、病院へ行けと言って、素直に言うことを聞いてくれるとは思えない」

「あなた、何組の人? さっきからずいぶんと、彼について詳しいみたいなんだけど」

「もう一度、言いますが、あたしたちは、あなたの味方です。彼が玄関から出てきたら、言って欲しいことがあります」

 結歌は、ツインテールの子に耳打ちする。

 玄関から、彼が出てくる。ネグが結歌の方を指さす。

「さあ!」

 結歌がツインテールの背を押す。彼女は頬を染め、彼の前に歩み寄る。



 ホイッスルを合図に、次の試合が始まった。しかし、コートに彼の姿は無かった。

 動揺する観客の女子たち。その観客の後方で、コートを見守る結歌とネグ。

 観客の心配をよそに試合は進み、一進一退の末、試合は僅差で彼のチームが負けている。おして、第四クォーターを迎えようとしていた。

 一瞬、観客がどよめく。

 そのどよめきは、驚きとなって会場を包む。彼が、右足をガッチリ、テーピングして現れたのだ。

 監督と二言、三言、言葉を交わして、彼はコートにステップを踏んだ。会場中から、女の子の歓声が響く。

 試合が始まる。

 相手チームは、怪我をして動きにくいエリアにボールを運び、彼になかなかボールを触らせない。自軍がボールを持つと、彼にパスを回すが、怪我で普段のプレーができない彼。ディフェンスは、ただ前に立ちはだかって足を止めるだけの、簡単な作業だ。普段なら、何枚ものディフェンスが付く。なめられているのだろう。

 静かに試合の動向を見守る結歌とネグのところへ、ツインテールの子がやって来る。

 結歌が静かに話しかける。

「怪我の具合は?」

「骨、腱、靱帯など、大きな損傷はないそうです。炎症は起こしていますが、数週間、安静にしていれば治ると」

「テーピングは彼の意思?」

「はい」

「止めた?」

「はい。最初は。でも…」

「彼の強い意志に根負けした、と」

「違います」

「え?」

「彼の意思を尊重しただけです」

「もし、万が一のことがあたったら?」

「ありません。ありませんが…」

「が?」

「その時は、あたしが支えになります」

 キッとした視線は、コートの隅で、ただ見つめることしかできなかった弱々しいものでは無く、強い力で彼のプレイを追っていた。

 試合は一進一退。右足を庇う彼のプレイが、自軍の足を引っ張っているのは明らかだった。

 残り時間もわずか。そのとき、信じられないプレイを彼は魅せる。右足を軸にしたロングシュート。

 凍り付く観客。ボールはゴールポストに弾かれ、惜しくもゴールにはならなかった。だが、これで彼のチームは勢いを取り返した。

 相手が彼の死角へパスを回すのはわかっている。あえて死角を大きく取り、相手が死角へ回り込んだ瞬間に、彼自身が、自分の右足を踏み出して死角に突入する。自軍へ出したパスが、彼の俊足によるカットで盗られる。死角の反対側はフリースペースだ。そこへ彼がパスを出す。パスを受けた選手がシュートを決める。

 最後は彼自身が、自ら踏み込んだ右足の死角から、スリーポイントシュートを放つ。ボールがゴールポストに吸いこまれて、タイムアップ。見事、彼のチームは勝利を収める。

 体育館が女子の歓声で揺れる。

 試合を終えた彼を、チームメートがねぎらう。タオルで汗を拭きながら、彼は観客の合間を縫って、ツインテールの子の前まで歩いて来る。

 タオルを彼女に掛けて、彼はギュッと彼女を抱きしめた。

 結歌とネグは、笑顔で二人を祝福する。

 そのとき、周りが再び、デジタルなモザイクに包まれ、パ・ディ・シャの光景は光の中に消えた。

 目が覚めた時、結歌は机に突っ伏していた。

「夢?」

 パソコンはスリープモードになっていた。あわててマウスを振る。パソコンがスリープモードから立ち上がる。画面は『パ・ディ・シャ』の再生が、終わった状態で止まっている。始めから再生してみようとしたが、動画は既に、アップロード者によって、削除されていた。

 今度は、ボカロ部のツイッターを閲覧してみる。特に、変わったことは書かれていない。


ゆうか{お~い。NEGStringsさん}


 しばらく待ってみたが、返事は無い。


ゆうか{ネグさんや~い}


 やはり、返事は無い。

 パソコンの電源を落として、ベッドに入る。

「あれはいったい、なんだったのだろう」

 部屋の照明を消すと、結歌はすぐ、深い眠りについた。



 明くる日の学校。

 美琴の隣に座りながら結歌は言った。

「『パ・ディ・シャ』がさあ」

「消されてたね」

「ちょうど聴いてたんだけど、うたた寝して目が覚めたら消されてた。美琴、その辺の事情、なんか知らない?」

「知らない」

「そっか~」

「そんなにお気に入りだったっけ? あの曲」

「まあ、それなりに…」

「うかない顔して、なにかありましたか?」

「ありました」

「なに?」

「曲の世界に飛びこんでた」

「え?」

「失恋で終わる歌詞を、ハッピーエンドに変えてきたよ」

「ほうほう、それはまたご苦労さん」

「信じてないな」

「ここまでの会話を総合して、信じる要素はありましたか?」

「ありません」

「ならよろしい」

「信じてくれる人なんていないよねえ。あたし自身、いまだ夢心地なんだし…」

「そういば、あんたの曲。ボカロ部での反応は?」

「玉砕」

「だろうね。あの出来でよくアップするわ。私ならフォルダにパスワードロックして門外不出にしてる」

「はあ…」

「玉砕して落ちこんでいるところ悪いけど、結歌はもっと、曲作りを勉強した方がいいね」

「落ちこんでるのは、玉砕したせいじゃないし」

「『パ・ディ・シャ』の方?」

「そう」

「そんなに再生数も多くなかったでしょう」

「好きな曲が消えたのは、世界からひとつの生物種が消えたのと同等の損失がある」

「大仰な」

「なんで消しちゃったんだろう」

「出来が気に入らなかったとか、ブログが炎上したとか」

「ブログは炎上してなかった」

「じゃあ、出来に満足できなかったんじゃない?」

「美琴はあの曲、どう思う?」

「そうだなあ。失恋の曲として良くできてたと思うけど」

「気に入った?」

「そう言われると、ちょっと違うかな」

「嫌いだった?」

「そうでもない」

「気に入ってた訳ではないが、嫌いでもなかった。その心は?」

「う~ん。曲の後半がいまいちだったかな」

「というと?」

「なんか、中途半端に感じた」

「そっか」

「なんで?」

「いや、なんとなく訊いてみただけ」

 その夜、ボカロ部のツイッターで待機していると、ネグが現われた。


ゆうか{こんばんは}

NEGStrings{こんばんは}

ゆうか{昨日はどうも}

NEGStrings{どうも}

ゆうか{曲消されちゃったね}

NEGStrings{そうみたいだね}

ゆうか{やっぱりあたしたちが曲の内容を変えちゃったからかな?}

NEGStrings{たぶんな}

ゆうか{悪いことしちゃったかなあ}

NEGStrings{ひとつ訊いていいか?}

ゆうか{なに?}

NEGStrings{あの曲は本来あの子が薬局で湿布や包帯を買い彼に渡すも渡せない}

NEGStrings{手当もせず試合に出た彼は惨敗悔し涙を落とす}

NEGStrings{彼に何もできなかった自分を悔やんでその子も涙を落とす}

ゆうか{結果お互いに泣いて接点無しの失恋物語}

NEGStrings{ゆうかさんはあの子を介して彼を病院へ行くように仕向けた}

NEGStrings{何故だ?}

ゆうか{なんとなく}

NEGStrings{なんとなく?}

ゆうか{そう}

NEGStrings{なんだそりゃ}

ゆうか{あの世界でも言ったけど生兵法は怪我の元だからちゃんと医者に行くべき}

ゆうか{彼の性格から家族のように近い人の言葉ほど聞く耳を持たない}

ゆうか{逆に涙を流して心配する知りもしない同級生の女の子の言葉が心に届く}

NEGStrings{ちゃんと考えての行動だったのか}

ゆうか{と今思いました}

NEGStrings{なんだそりゃ}

ゆうか{あたしも夢中だったからさ}

ゆうか{今思い返せばそんな感じだったんじゃないかな~と思いました}

NEGStrings{はははは!}

NEGStrings{あんたらしいや}

ゆうか{どうもありがとう}

みことん{こんばんは}


 『みことん』とは、美琴のハンドルネームだ。ボカロ部の一員でもある。


ゆうか{こんばんは}

NEGStrings{こんばんは}

みことん{パ・ディ・シャ消されちゃいましたね}

ゆうか{まあ消されちゃった曲の話はいいよ}

ゆうか{別の曲の話をしませう}

笛{なんの話ですか?}

みことん{消されてしまったパ・ディ・シャの話です}

笛{あの曲良かったですね}


 『笛』は、ボカロ部の一員である。


みことん{やっぱ笛ちゃんもそう思う?}

笛{はい好きでした消されたのは残念ですが}

ゆうか{やっぱあれが原因なのか!}

NEGStrings{どうだろうね証明の仕様も無い}

みことん{なにふたりだけの世界で語って}

ゆうか{エロく言うな}

みことん{私たちにもわかるように説明しろ}

ゆうか{実はかくかくしかじかで}

みことん{なるほどそれでパ・ディ・シャは消えたと}

ゆうか{はい}

みことん{ってそんな漫画みたいな説明でわかるかー}

NEGStrings{説明しても所詮夢物語とスルーされるのが落ちだから説明は無意味}

みことん{無意味かどうかを判断するのは私たちなんだからまず説明してくれ}

NEGStrings{じゃあ簡潔に説明しましょう}

みことん{待ってました}

NEGStrings{俺とゆうかさんは曲の世界に入り込んで曲の内容を変えてしまった}

みことん{ほうほう}

NEGStrings{だから消えちゃったんじゃないかというのが俺とゆうかさんの見解}

みことん{なるほど曲の世界に入りこんだと}

NEGStrings{信じられないかもだけど}

みことん{信じられるかー}

NEGStrings{ですよね}

笛{そうなんですか?}

みことん{笛ちゃんは信じるの?}

笛{そんなことがあるのかも知れないと考えると素敵です}

みことん{笛ちゃんは純粋だな}

ベル{パ・ディ・シャの話ですか?}


 『ベル』は、ボカロ部の一員である。


みことん{パ・ディ・シャの話です}

ベル{消されちゃいましたね}

みことん{その原因がどうやらゆうかとNEGStringsさんにあるらしい}

ベル{そうなんですか?}

ゆうか{う~んどうだろう}

ベル{どのようないきさつで?}

みことん{ツイートさかのぼって読んでみて}

ベル{読みました}

みことん{どう思う?}

ベル{科学的じゃないね}

みことん{ベルさんならそう言うと思った}

ベル{お互いどのような出で立ちでしたか?}

ゆうか{出で立ち?}

ベル{同じ夢を見ていたとして衣服顔形など現実と一致するのか興味がある}

ゆうか{服はお互いにパ・ディ・シャのPVに出てきた学校の制服を着てたな}

ベル{背格好はどうでした?}

ゆうか{ネグさんの事?}

ベル{ネグ? さんって誰ですか?}

ゆうか{NEGStringsさんの呼び方です}

ベル{そう読むんだ初めて知った}

ゆうか{ネット上だと相手の本名は元より年齢や性別すら知らないことあるよね}

ベル{ゆうかさんの容姿については?}

NEGStrings{背は低めショートカットに丸顔で胸が大きかった}

ゆうか{おい!}

ベル{みことんさん当たってますか?}

みことん{どうして私に振る}

ベル{クラスメイトだし}

みことん{ショートカットではある胸に関してはノーコメント}

ベル{背は?}

みことん{低い方かな?}

ベル{何センチ?}

みことん{さすがにそれは直接本人に訊いてくれ}

ベル{ゆうかさんそれで?}

ゆうか{百五十センチぐらい? かな}

ベル{みことんさん当たってます?}

みことん{たぶん正解私も正確な数字は知らないし}

ベル{身長以外検証の仕様がありませんね}

ゆうか{写真でも残ってたら証明できたかもね}

ベル{ネグさんは?}

NEGStrings{俺の事?}

ゆうか{背は普通で顔も普通で太くもなく細くもなく平均的だったと思います}

NEGStrings{褒められてるんだか貶されてるんだかわかんね}

ベル{前髪が異様に長くて目が見えなかったなんて}

NEGStrings{それなんてエロゲの主人公?}

ベル{もうちょっといじり甲斐のある体型してなさいよ}

NEGStrings{十分いじられてると思うけどW}

笛{あたしもその夢に入りたかったな}

ゆうか{夢か? 夢だったのか??}

笛{今度はあたしも誘ってくださいね}

ゆうか{おおう}



 翌日の夜八時三十分。浅川ダンススクールは、最後のレッスンを終えた。

 講師の浅川舞子は、帰路につく可愛い生徒たちに手を振って見送った。小学生の生徒たちは、蜘蛛の子を散らすようにスクールから散って行った。

 浅川家の夕食は、その後に始まる。ふう自身、子供の頃から染みついた習慣は、一般的な家庭に比べて、遅い夕食を苦にしていない。むしろ、お風呂から学校の宿題や勉強を済ませてから取る夕食は、自分自身が母にダンスを教わっていた頃の習慣と同じ。今では、母に代わって夕食を作りもする。

 父は、演劇の演出を仕事にしていて、公演がある時は家に帰って来ない。それもあたりまえなので、母と、ダンスや学校の話をしながら取る夕食も、十七年間の習慣になっている。

 そんな時、父からLINEが来る。

「これから夜中まで稽古だ!」とか、「これから団員と焼き肉だ!」とか、「音響と照明と意見が合わん!」とか、愚痴なのか喜びなのか、よくわからない事を、このタイミングで送ってくる。あたしが無視していると、「おまえらだけでのんびりしてるな!」と、文句を言うので、母が適当に、「笛子は彼氏とデートで今夜は帰ってきませんよ」と嘘を返す。それに父が切れる。

 正直、食事時ぐらい静かにして欲しいのにと笛子は思うが、これも子供の頃からの習慣なので、母と一緒になって、適当にあしらう術を探っている。

 食事が終わって、ベッドへ入るまでが、笛子にとって至福の時になる。

 会ったこともない、ボカロ部のメンバーと楽しく語り、ボカロの名曲や新曲を聴いて心を踊らせる。笛子が『笛』になる時だ。

 それは、身体を動かして踊るダンスと同じくらい、笛子にとって、心身ともに有意義な時間になっている。

 ふと、気になるタイトルがスマイル動画でランクアップしていた。

『パ・ディ・シャ』

 この曲は確か、投稿者が自ら消したはず。サムネイルは前回と似ているが、ちょっと違う。投稿日時が新しい。クリックしてみる。



 小さい弟、ふたりを寝かしつけて、中島すずは、勉強をしていた。

 高校一年生の彼女が今でも使っている学習机は、小学生の頃に親から買ってもらったものだ。机とイスの高さは変わったが、子供の頃に書いた落書きは、今でも変わらずに残っている。ポータブルプレーヤーでお気に入りのボカロを聴きながら、ノートにシャープペンを走らせている。共働きの両親はまだ帰ってこない。

 『パ・ディ・シャ』が流れた時、この曲が消えていることを思い出した。曲を創ったボカロP自ら消したのだから、何か思うところがあったのかも知れない。

 ふと、パソコンを開き、件のボカロPのマイリストをチェックすると、曲が復活している事に気がつく。しかし、投稿日時が新しい。鈴はそのサムネイルをクリックする。


ゆうか{ぬわぁわあ~~~なんということだあぁ~}

みことん{もちつけ}

ゆうか{パ・ディ・シャが復活しているなんてえぇ~}

みことん{いいかげんもちつけ}

ゆうか{しかも! あんな風に変わってるなんてえぇ~!}

NEGStrings{正直びっくりだね}

ゆうか{びっくりどころの騒ぎじゃないよ!}

ゆうか{驚天動地! 阿鼻叫喚! 諸行無常!}

みことん{意味違ってきてるから}

ゆうか{うぅおおおおぉ~}

みことん{ダメだこいつ早くなんとかしないと}

笛{今晩の議題は復活したパ・ディ・シャですね}

ゆうか{笛ちゃんそのとおりなんですよ}

笛{ゆうかさんは大変お喜びのようですね}

ゆうか{やっぱ笛ちゃんもそう思う?}

笛{はい消された時は残念でしたから}

ゆうか{喜ぶもなにも嬉しさが天を突き破ってスーパーゆうか状態ですよ}

笛{それはなによりです}

ゆうか{やっぱりあの夢は夢じゃなかったんですよ}

NEGStrings{証明できないけどそう考えると納得いく}

ゆうか{ガッテン! ガッテン! ですよ}

ベル{またパ・ディ・シャの話?}

ゆうか{そうです!}

ベル{曲調もそうですが最後まで変わってましたね}

ゆうか{みなさん驚かないでください今回公開されたパ・ディ・シャこそ!}

みことん{ゆうかとネグさんが体験してきた世界なんだって}

ゆうか{落ちを盗るな(怒)!}

ベル{ホント?}

NEGStrings{だいたい合ってる}

笛{そんなことってあるんですね素敵です}

みことん{ずいぶんとすんなり受け入れたね}

笛{ロマンチックじゃないですか}

みことん{そうか?}

ベル{怪しさ満載過ぎて信じられませんね}

みことん{今ベルさんが良いことを言いました}

ゆうか{別に信じてくれなくたっていいもん}

NEGStrings{こればかりは体験した者でないと理解できないでしょう}

みことん{なんかオカルトっぽくなってきたなあ}

NEGStrings{証明できない以上信じる信じないは人それぞれってことで}

ゆうか{なんかそんなまとめ方気に入らないなあ}

NEGStrings{しょうがないでしょ}

ゆうか{しょうがないけど…}

NEGStrings{今度こんな機会があったら皆さんをご招待するということで}

みことん{私パス}

笛{是非よろしくお願いします}

ベル{危険がなければ行ってもいいかな}

ゆうか{ふふ心せよ皆の者その時が訪れて腰を抜かしても知らないからな}

みことん{だから私行かないし}

笛{助けてくださいねゆうかさん}

ベル{腰を抜かすのは嫌だな}

NEGStrings{腰を抜かすのは例え話}

NEGStrings{飛びこんでしまえば意外と楽しい世界だと思うよ}

ゆうか{ネグさんがそう言うなら}

笛{次はいつですか?}

ベル{家事と勉強の邪魔にならない程度に頼みます}

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