第32話
「なんか鏡也と海生って仲が良いね」
「あぁなんか前から友達みたいよあの二人……ってなんでテンション低いの美優」
練習が終わった後の鏡也と海生の二人の絡みを見て美優と優香が話しはじめる。なぜか美優はテンションが低い。
「海生が幸隆以外といちゃいちゃするのを見るとちょっとね」
何かが間違っている気がするが、美優の認識からするとそう見えるのだ。
「いやー別にあれはあれで良くない? 私は鏡也×海生とかも有りだと思う」
「やだ。私は幸隆×海生の方が良い」
趣味や好みの問題が色々あるようで、この二人も完全に好きなものが一致するわけではないようだ。
「じゃあさ。鏡也→海生←幸隆とかは?」
「っ!? それはそれで良いかも」
なんとか落としどころを見つけたようでこの話も収束に向かおうとしていた。
「そういえば幸隆ってさ、海生以外の一年生と話したり練習してるところほとんど見たことないね」
思い出したように言う優香。幸隆は鏡也と帆億が入部した際に、軽く挨拶をしただけであまり話をしていない。黙々と自分の練習を続けている。
「幸隆は海生一筋だから……」
美優は何かを妄想しているようで、手を組みながらうっとりしている。
「う、うん別にそれならそれで良いんだけどね」
少し後ずさりながら美優の反応を見る優香は、マネージャーとして、一抹の不安を抱えていた。
レスリングは個人競技。究極的には一人で戦う競技だ。それでも、チームのメンバーとコミュニケーションを全く取らなければどうなるのか。そうなる事を懸念していた。
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先週新入部員が入部したらしい。海生の友達なんだとか。部員が増えることは良いことなんだろう。
団体戦において出場する階級を多く揃えられるということは、それだけで有利に働くことはこの前の大会で十分理解した。
今は二、三年生で固められたメンバーも、年数が立つにつれ入れ替わる。
だが正直幸隆は、自分が勝つこと以外に興味はなかった。団体戦でも個人戦でも、自分自身が勝つことが出来ればいい。極端に言えば団体戦も自分が勝っていれば、団体戦の勝ち負け自体もさして興味はない。
ようは部員が増えようが増えまいが、自分の練習について来れる者がその中にいなければどうでもいいのだ。
海生以外に自分と同じように頑張れる者が、一年生の中にいるとは思えない。
海生以外の一年生とあまり接しようとしないのは、そういった気持ちから来るものだった。
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