第11話

 開会式と計量が終わり団体戦が始まる前のアップが始まる。


 それぞれの学校の選手達が入り乱れてのアップになり、周りを見てみると全体的に軽量級、体重が軽そうな者が多い。


 レスリングをやっていると耳の形が変わっている者が多く見られる。

 これはタックルをする時に顔の耳の部分が接触し、そのまま押し倒したりすることが多いためだ。


 ちなみに海生は耳をあまり変形させたくないため、肩で押していたりする。


 アップが終わり、団体戦の準備が始まると、一回戦から試合がある通天高校と城間ぐすくま工業高校の生徒以外がマットからいなくなる。


 ユニフォームに着替え、整列のする前に円陣を組み、龍生が掛け声をかけそれに他の部員が答える。

「思考を止めるなー!」

「「おう!!」」

「勝ちをもぎ取れー!」

「「おう!!」」

「我らー!」

「「通天!!」」


 意気込み整列する団体戦のメンバー達。


「たまんないよ……コレが良いんだよ……」


 部員達の体を舐め回すように見ながら優香が何か言っていた気がしたが、海生は何も聞かなかった事にした。


 ただ整列した際に気づいた。明らかに相手側のメンバーの人数が少ない。


 団体戦では勝った組数が多い学校が勝利ということになるはずだ。


 はぁはぁと息が荒い優香を捕まえてその疑問をぶつけてみる。


「あぁそれはね。あっちの学校で全部の階級を揃えられなかったからだよ。だから必然的に負けられる数が少なくなる相手の高校は不利になるね……はぁはぁ」


 なるほど部員の数が少ないために全部の階級を揃えられないということか。


 その点、全部の階級を揃えている通天高校は有利になるわけだ。


 戦う前から厳しい状況に置かれている相手の高校が少しだけ気の毒になった。


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 城間高校は新入部員が多いわけではない。

 それでも何とか団体戦になんとか出ることが出来た。


 今年入学した一年生は二人。55㎏級に一人と、66㎏級に一人だ。


 この二人を加えてようやく団体戦に参加する事が出来た。


 今年は84㎏級と120㎏級の選手を用意出来なかったため、5階級での団体戦参加になる。


 相手の通天高校は全ての階級を揃えているため、2階級分こちらが不利になる。


 三回負けてしまうと負けが確定してしまうため、最悪60㎏級の試合が終わる頃にはチームとして、そして学校としての敗北が決まる。


 もし最初の三回で負けが確定しても全部の階級の対戦が終わるまで試合は続く。


 主将である俺こと瑞慶覧豊ずけらん ゆたかは74㎏級。


 たとえ団体戦で負けが決まった試合になったとしても、俺自身は負ける気はない。

 主将である自分自身が、後輩たちの前で戦い抜く。


 三年生である俺の残り少なくなった大会の一つ。気持ちで負けてたまるか。

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