第10話

 私、美優は腐女子である。


腐女子とは、ボーイズラブ(BL)と呼ばれる男性同士の恋愛を扱った小説や漫画などを好む女性のことである。

(インターネット百科事典wikipedia参照)


時々女性のオタクと腐女子を同じものだと混同する者がいるが、別物もしくはどっちも兼ねている場合もあるが、基本的には女性のオタクとは別である。


特に好きなものはスポーツ物で、男同士の友情や、スポーツを通して得た信頼関係から発展する絡み合いが好きだ。

細かい事を言えば、年下のツンデレな男の子とかが好きだったりもする。


ツンデレとは特定の人間関係において敵対的な態度、ツンツンしているのと過度に好意的な態度、デレデレの二つの性質を持つ様子である。

(再びインターネット百科事典wikipedia参照)


ツンツンしている所しか見ることが出来なくても、デレデレの所は妄想で補うので悶えることが出来る。


女の子のキャラが主流なツンデレは、そもそも男の子の性格だったという話もある。


というかテンプレートなツンデレな女の子のキャラとかもし現実にいたら、ただのコミュニケーション障害だと思う。


友人の優香とは腐女子仲間として趣味が合い、中学生の頃から友達である。


腐女子であることは親しい友達と、バレてしまった人達にしか言っていない。


必要なのは住み分けだ。なんでもかんでも腐っていない人達にまで影響を及ぼすようなことはしてはならない。


これはBLを愛する上でのルールだ。

好きではない、もしくは合わない人にまで勧めて反感を買うのはごめんだ。特にBLに限った話ではないが、興味がないものを延々と勧められても迷惑なだけだろう。


興味がありそうな人や、素質がありそうな人は無理矢理にでもこっちの世界に引きずり込みたい気持ちもある。


そのために学校で出会う初対面の人には、とある本で見たある質問をすることにしているが、それはまた別の話だ。


漫画や小説の中だけで我慢出来なくなっていた私と友達の優香は、高校入学と共に部活のマネージャーになることを決めた。


「ねぇ美優はどの部活が良いと思う? 私はサッカー部とかバスケット部とかかな!」


実際に見学して、一番妄想が捗る部活にしようという事になり、私と優香は4月いっぱいをかけて色んな部活を見て回った。


そして5月のある日、たまたま練習試合だったらしいレスリング部の見学をした二人。



体のラインがくっきり見えるユニフォーム。

男同士の絡み合い。

思っていたよりもイケメンが多いレスリング部。


「これは穴場じゃないでしょうか」

「何か私興奮してきちゃった……」


その練習試合を見た美優と優香は、次の週からレスリング部のマネージャーになっていた。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


 今日は大会当日。緊張と不安、少しだけ期待を胸にレスリング部全員が乗っている、学校所有の通天高校の名前が入ったバスから降りる。


着ているレスリング部のジャージの背中には『連』と描かれている。

下に着ているオリジナルTシャツには『撃』と書かれており、続けると『連撃』となる。


通天高校で代々受け継がれてきたものらしく、海生はこのジャージとTシャツが気に入っている。


大会会場は沖縄県中部にある市営体育館だ。

初めて来た場所に周りをキョロキョロと見ながら海生は先輩達に着いていく。


会場の体育館に入ると、レスリングに使用するマットが設置されていた。


「こういう会場の体育館に来るのは一年ぶりくらいか」


中学の頃の部活を思い出しながら海生は呟いた。中学最後の大会以来、海生は学校行以外のこういった大きな体育館に来たことはない。


苦い思い出から、自然と自分からこういった場所に来ることを拒んでいた。


「海生も体育館に来るの久しぶりなのか? 実は俺もなんだよ」

すぐ側にいた幸隆もどうやら同じだったらしく、呟いた海生に話しかけてくる。


そういえば幸隆も中学の頃はバスケットボールをやっていたと聞いた。

お互い事情は良く知らないものの、同じような思いを感じて笑い会う。


そうこうしているうちに、他の学校の生徒も揃いはじめる。

大会に参加する全生徒が集まったのを見て、思ったよりも人数が少ないことに気がついた。ざっと見ただけでも総勢40人くらいではないだろうか。


そして入部する時に上地先生が言っていた事を思い出す。


沖縄のレスリングの競技人工は少ない。

その実情を知った場面だった。

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