第13話 怪談!ビルゼンの怪人
ベルギーのビルゼンに秋の休暇で、
家族旅行に行ったときのことだ。
ベルゼンは、ベルギーリンブルグ州の
人口3万ほどの小さな村落である。
休暇村でもあり、兼業で別荘業を営んでいる果樹農園が多い。
休暇に家族でとまれるような小さい貸し家を見つけた。
破格の物件だった。
貸家の庭には、大きなプラムの木があり、実がたっぷりとついていた。
廃屋同然の12世紀ぐらいからある
古い修道院に立ち寄った。
小さな苔むした灰色の記念塔がひっそりと立っている。
こんな小さな村に、100人以上の若者が、
第一次世界大戦で、亡くなったと書かれている。
苔で判読が難しくなっているが、
亡くなった若者の、名前が刻まれている。
誰かの視線を感じた。
ゆっくりと視線を右下に落とすと、黒い靴とズボンがみえる。
おそる、おそる後ろを振り返った。
男がいた。
地下室の階段下に、ひっそりと立っていた。
黒っぽい上着とズボンをきて、ヒゲをはやしている。
両手はポケットにつっこんだままだ。
ぽきぽきと首をゆっくり鳴らし、右に傾けた。
牛のような真っ黒い瞳は、笑いも悲しみもなかった。
私は、気を失いながら、
心臓が止まりそうになりながらも、
なんとかドアをバタンとしめた。
おそるおそるドアをあけると、
そこの男はすでにいなくなっていた。
すぐに、宿泊費を払って、その夜に引き払った。
帰路、丘から昇った満月は、
大きく輝き、ゾッとするほど、真っ赤だった。
まるで、血が滴っているようだ。
北ヨーロッパの秋の夜は、
冷たい雨と真っ暗な闇が押し寄せる。
(あの男は、一体、何者なのだろうか)
不気味な満月の夜は、
悪魔や悪霊が集まる伝説が、
ヨーロッパ各地に残っている。
地元の人によると、悪魔が集う丘なのだそうだ。
(あの男は悪魔だったのだろうか・・・)
迷信を信じない私も、
確かにそうなのかもしれないと思った。
<おしまい>
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